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舞踏会の手帖

日常に起こったことから、ふと思い出すものがある。
今日は、何をみて思い出したのかしら。

『舞踏会の手帖』は、銀座の映画館で一人で鑑賞した。
大学は午後からでよくて、アルバイトもない平日だったように思う。

『舞踏会の手帖』と『巴里祭』は同じ時期にみた気がする。
古い白黒映画だから、映画館はがらがらだった。
思い出したのは、『舞踏会の手帖』の方だ。

若くして未亡人になったクリスチーネが、孤独や空虚を抱えている。
20年前に社交界デビューを果たした時の手帖を見つけ、懐かしく思うところから、映画が始まる。
「舞踏会の手帖」に記されていた自身の元恋人達が今どの様に過ごしているか、そこから自分のこれからの方向性のヒントを得る為に、その時のダンス・パートナー(または元恋人たち)に会いに行く。
その数8人。
ノスタルジックな感傷を伴いつつ、彼らを探すことは、クリスチーネにとって自分探しの旅でもある。
最初に舞踏会の追憶にふける様子が、幻想的な雰囲気で素敵だったように思う。

8人に会いに行くという計画自体に驚いて、歳を重ねると、そんなことをしてみようと思うのか!?と仲良しの友達に話したような気がする。

「昔のボーイフレンドのその後なんか、どうでもいい!
でも、やっぱり、ちょっと見てみたい。幸せだったら、憎たらしいわね。」

と、彼女は笑って言ったのだった。
その笑顔が、すごくチャーミングだったのだ。
男の子に「ふん!」というタイミングをよく心得ていて、
彼女に「ふん!」と言われると、男の子はもっと好きになってしまうらしい。

「頭にきたわ。だって彼、食事の時に、お店の壁際に座っちゃうのよ。
そっちは女の子席よ!って、怒って言っちゃった。」

なんて言う。
でも、それがまたコケティッシュな魅力になる。
彼女は、とてもモテる女の子だった。

そう。
年賀状で思い出したのだ。
今では、2人の娘のママになっている。
相変わらず、前だけ向いている素敵な人だ。

『舞踏会の手帖』の話は、覚えているかしら?
会って話せる時期が来たら、聞いてみよう。




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