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【Vol.3】国境や文化を超えて、LUMIXを世界へ届ける「海外マーケティング」の戦略と苦悩の話

LUMIXの海外マーケティングに携わるメンバーが語る、海外マーケティングの活動や各国での活動、戦略や苦労の話。

本記事は「中国編」となるVol.3です。

▼Vol.2(欧州編)はこちらから!


中国のマーケティング活動

中国メンバーとの集合写真

当社が中国マーケットに重点的に取り組みはじめたのは2017年頃のことです。それまでは、中国のLUMIX事業はそれほど大きくなく、「東アジアエリアの一つ」という位置付けでしたが、2018年に中国を戦略市場に位置づける、開製販一体となった「LUMIX中国増販プロジェクト」を立ち上げ。

当時の海外事業が欧米の二本柱だったことに対し、「中国が第三の販売の柱になる」ことをミッションとしました。

こちらが私です

それまでは「量販店を中心にコンパクトカメラを売る」という量を追いかける販売スタイルでしたが、中国で高性能なカメラ機能を搭載したスマートフォンやEコマースが急速に普及したことで、量販店を中心とした付加価値の低いモデルを売る事業では非常に厳しい状況になっていました。

そこで、巻き返しを図るため、中国で急成長するオンラインにリソースをシフトし、中国ではまだオフラインチャネルを厚く持たないことを逆に強みとし、デジタルマーケティングを駆使した「中国らしいスピード感のある活動」を素早く実施したのです。

後にLUMIXマーケティングの核となる「ファンマーケティング」の強化を意識しだしたのも、この時期です。

2017年には、日本でも大ヒットしたGH5を、中国においても大きく拡販することに成功。反転攻勢の手応えを得たまま、中国増版プロジェクトの旗の元、グローバルとはまるで違う「中国の商売慣習への対応」や、お客様に喜ばれる為の仕組みを立ち上げていきました。

2019年のフルサイズSシリーズ販売を皮切りに、元々フルサイズの需要が旺盛な中国市場において、これまでのプロジェクトの仕組みづくりの成果が現れ、予想を上回るスピードで販売数を伸ばすことに成功。

2020年のコロナ禍において販売数を維持できた国は、大国では中国だけだったように記憶しています。

2024年現在では、事業部の「第三の販売の柱」になることは既に実現。特にフルサイズでは事業部の中で、グローバルで最大クラスの販売数を出せるようにまで成長しました。

中国でのLUMIXの立ち位置

撮影師Ben

実は、中国ではまだ「Panasonic」よりも「松下電器」のブランドイメージが強く、白物家電や他事業では松下のブランドを使用しているものが多く存在します。

一方で、松下電器がカメラを作っていることはほとんど知られていません。「LUMIXってなに?」という認知度から、中国マーケティングはスタートしました。

実際、私が中国を担当しはじめた当時、中国の街を歩いていてもLUMIXを持っている人を見ることはほとんどありませんでした。

中国マーケティング稼働当初は「どうやってLUMIXの認知度を上げるか」からスタートし、中国の写真関連で有力な協会と交流したり、著名な撮影家と契約したり、有力なメディアを起用したりと、いわゆる王道のマーケティングに挑戦しました。

しかし、ここで「中国市場は難しい」と言われる大きな壁にぶつかります。

中国は、とにかく国土が広く、人が多い。一つ一つの省(都市)が一つの国のような感覚で、ここに王道のマーケティングを仕掛けるには、莫大な予算が必要になるのです。

当初の私達の販売規模で捻出できる予算では、とても広大な中国市場をカバーすることができず、まさに「砂漠に水をまく」ような感覚でした。

しかし一方で、早くからスマホの普及率が高く、オンラインの先進国でもあった中国では、現在では一般的になっている「動画制作」や「ショートムービー」のブームの波が他国に先駆け、どこよりも早くやってきていたのです。

そしてそれは、新しいものを取り入れる、若い人を中心に流行し始めており、動画性能を強みとするLUMIXにとって大きなチャンスでした。

そこで私達は、LUMIXの強みである「動画に強いカメラ」のコンセプトを前面に押し出し、若手で映像制作に興味がある方をターゲットとした戦略構築を進めていきました。

Sシリーズを発売してからも動画機としてのコンセプトは変えることなく、若い方々を中心にご支持いただいています。

特に2023年に発売したS5II・S5IIXは、中国の2大オンライン商戦である、「618商戦」や「双11商戦」で他社と遜色のないレベルの販売ができるようになってきており、手応えを感じています。

中国マーケティングの戦略

こちらはGOV(Generation Omnipotent Video)と呼ばれる、映像クリエイターを目指す若者向けの講座の様子

私達がマーケティングで重視していることは(恐らく日本市場も含め、グローバル同様と思いますが)LUMIXの顧客接点を増やすこと、お客様にファンになっていただくこと、そしてお客様からLUMIXの良さを発信してもらうことです。

中国にはオンライン上に様々なSNSプラットフォームが存在し、それぞれのメディアの特徴に合わせた発信をし、ファンを獲得していく必要があります。

そこで私達はチャットアプリのWeChatや時事の話題を発信するWeibo、日本でも流行しているTiktok(中国名では抖音)、bilibili(Youtubeにような動画サイト)等でLUMIXの公式アカウント(松影倶楽部 ※"松"は松下、"影"は映像の意味)を開設。現在では、これらのプラットフォームにおいて合計で数十万人の方にフォローいただいています。

また、カメラのような趣味性の高い商品においては、OMO(オンライン マージ オフライン)の考え方が重要です。なぜなら、お客様の「LUMIX熱」を年中通じて「熱々」にしておくことが必要だからです。そのため、中国では特にオンラインとオフラインの活動を融合させながら、お客様とLUMIXとの接点を常に保ち続けています。

例えば、中国では「松影倶楽部オフライン体験店(LUMIX体験店)」というタッチポイントの拠点を主要都市に設置しています。

LUMIX体験店では実際の販売はせず、ワークショップの実施や、その地域のお客様の交流の場として活用。また各店の店長には、上述した公式SNSの管理者となってもらい、それぞれの地域のLUMIXファン同士のコミュニケーションを活性化してもらっています。

LUMIX体験店は、その名の通りファンの方々の「体験価値」を最高に高めることが目的であり、販売は後で着いてきたら良いというくらいのコンセプトで考えています。

一方で、ファンをいくら増やしても、それを支える商品やサービスが伴っていなければファンは離れていってしまいます。

南山Nathan

増加するLUMIXのファンに加え、応援していただいているKOL様(インフルエンサー)、プロの撮影家の方々など、様々な使用者様の要望に対応する為、製造/技術部門と販売部門が一体となって、お客様のご要望にお応えしていく仕組みが必要です。(逆にそれができていなければ中国では生き残れません)

例えば、これはコロナ禍で物流が止まってしまった時の話です。

中国現地の生産工場では、お客様にお約束した商品を届けるために、工場に私達メンバーが直接出張し、マニュアルで物流の手配を行い、納期に間に合わせたことがありました。

また、LUMIXのファンに対して、工場の生産ラインを訪問していただき、LUMIXの厳しい品質基準を見てもらったり、お客様からの商品への技術的な問い合わせに対しても工場メンバーと連携してコミュニケーションを取っています。

このようなフットワークの軽さは非常に中国らしい仕事の進め方だと感じています。

ちなみに中国では、厦門工場の30周年記念モデルとして、S5IIのゴールド色を500台限定で販売しました

中国マーケティングで苦労したこと

言語の壁は中国で仕事をする海外駐在員にとって大きな課題です。

社内のコミュニケーションはもちろんですが、お客様の生の声を聞くにも通訳はできるだけ通さない方がいい。ディーラー様との食事などでも中国語が話せると、親密感がグッと増します。

当初、私は中国語が全くできないところからスタートしたので、平日の早朝や週末のほとんどの時間を語学勉強にあてており「とんでもないところに来てしまったな」という感覚で過ごしていました。笑

言語の壁は日本の事業部から見ても同じで、日本からは中国と直接コミュニケーションが取りづらいので、現地で何が起こっているのかがどうしても見えづらい。

LUMIXは欧米での歴史が長いこともあり、英語でのコミュニケーションは取ることができ、事業部内でも理解者が多く、ノウハウも確立されています。

中国事業は、ものすごく端的な言い方をすると、事業部内に中国のファンが少なく、理解もされづらく、積極的に参加しやすいとはまだまだ言いづらいんです。

そういう環境の中で「どのように中国のお客様の声を、事業部の仕事の流れの各段階において反映させていくか」に当初は苦労しました。

例えば商品デザイン一つをとっても、欧米とは好みが違いますし、マーケティングツールにおいてもYoutubeやInstagramなど、グローバルでは当たり前のものが使えない。

「中国ではこういうものが必要」という文化を事業部内で浸透させていくことは簡単ではなかったですね。

さらに大変なことは、そのようなお客様からの課題提起に対しての解決策を、日本の常識では考えられないスピードでお応えしなければならないことです。よく言われていますが、中国は物事のスピードが本当に速い。「まずやってみる」というスタンスで、きっちりと動く日本とは逆とも言えます。これらの環境に対応するために、日本側を少し強引にでも引っ張っていくのは、中国でビジネスをする日本人駐在者の重要な役割だと思います。

今後の展望

当初目的として設定した、「中国を欧米に並ぶ事業の三本目の柱にする」というのは数字面では達成できたと考えています。

ただし、これはあくまで社内の数字的な目標。ブランドを背負う者としては、「LUMIXは最もお客様に近いカメラブランド」と言われる存在になりたいと考えています。

お客様に寄り添いながら、お客様のお困りごとやご要望に対し、どこよりも早くお応えできるブランドでありたい。

その為には、社内にもっと中国市場の理解者やファンを増やすことが必要です。ここ数年で日本からの中国の見え方も随分変わってきました。その準備は、できたと考えています。

LUMIXの魅力を、世界へ。

「写真と動画のハイブリッド機であること」「お客様に寄り添ったブランドであること」という魅力は、LUMIXの世界共通認識です。

これからも、日本で創られた私達の自慢のカメラを、世界中へ展開していきます。

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