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独りよがりを叶えてくれるカメラ、G9PROII|Keng Chi Yang

こんにちは。スーパーカブで旅をしながら写真を撮っている写真家のKeng Chi Yangです。

今回の記事では、2023年10月に発売されるLUMIX G9PROIIのインプレッションについてお話しさせていただきます。

カメラに求めることは様々あるとは思いますが、相棒として写真生活を共に歩むためには、スペックに表れないことの方が重要な気がしています。

とは言え、初代G9PROからの進歩は大きく、性能的にも随分と楽に撮れるカメラになりましたね。

撮影した写真は全てフォトスタイルやリアルタイムLUTを使用した撮って出しJPEGのみなので、ポテンシャルの高さが伝われば嬉しいです。


独りよがりを叶えてくれるカメラ

LEICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 II ASPH.
F11 SS1/20 ISO100

目の前の景色を見たままに撮る必要はない。人は皆、視力が違う。目は左右で色温度も違うし、明るさだって違う。人間の感覚はある程度、脳が見たい様に見ているらしい。

LUMIX G9PROIIは、そうした、見たい様に世界を見るためにあるカメラだと感じた。

世界の全てはただ存在しているだけなのだけれど、人が作って、人が使うカメラなのだ。LUMIX G9PROIIは、それぞれが持つ視界を鑑賞者へ伝える手助けをしてくれる装置、として考えると、もう少し柔軟に扱える気がする。

LEICA DG NOCTICRON 42.5mm / F1.2 ASPH. / POWER O.I.S.
F1.2 SS1/1,300 ISO100

手元やファインダーから受けるインスピレーションはカメラによって違う。

特にマイクロフォーサーズは標準で4:3のアスペクト比を持つため、3:2で慣れている人は戸惑うかもしれない。

一度慣れてしまえば、この落ち着いた、居心地が良いとでも言いたくなるアスペクト比の虜になってしまうだろう。横で主題を目一杯取り込めること、それでいて余白の使い方も自由度が高い。縦で撮った際の安定感も特徴の一つ。

勿論、レンズだってそう。大口径でも比較的全長が短く、手首でくるくると回せるハンドリングの良さは、構図のバリエーションを増やしてくれる。あくまで一例ではあるけれど、カメラから受けるインスピレーションは思っているよりも幅広い。

なんでもいいは全部良い

お転婆の魔法 - その1

LEICA DG NOCTICRON 42.5mm / F1.2 ASPH. / POWER O.I.S.
F1.2 SS1/2,000 ISO100

マイクロフォーサーズで撮影するときは、フルサイズで撮影する時よりも無邪気になってしまう。

理由は単純で、軽い・小さい・ボケにくい。

物理的にも絵的にも、カメラを振り回しながらずんずん歩いて、無遠慮にパパっと撮影した方が、何故か仕上がりが良いような気がしてならない。

LEICA DG SUMMILUX 12mm / F1.4 ASPH.
F1.4 SS1/6,400 ISO500

これはどのレンズにも言えることだけれど、絞り開放付近の描写が最も色っぽいと感じている。フルサイズでは被写界深度が浅いだとか解像度がどうだとか、余計なことがつい頭をよぎってしまう。

が、マイクロフォーサーズなら大抵の場合は被写界深度内に収まってしまうし、センサーサイズによる物理的な差は生まれてしまうもの。むしろ味と捉えた方が武器になる、なんて言い訳をしながら、つい絞りを思いっきり開いて撮影してしまうことが多い。

とは言え、初代G9から500万画素程度の画素数アップのはずが、随分と写る様になった気がする。これまで以上に多少の細かいことなどは気にせず、胸を預けてしまって良いだろう。

お転婆の魔法 - その2

LEICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 II ASPH.
F5 SS1/800 ISO100

Pモードで終始パンフォーカスになっていても、それはそれで良い。

絞るといってもマイクロフォーサーズなので、F4にも絞っていればフルサイズ換算で約F8相当となり、そこそこ被写界深度は深くなる。神経質に両手で構えることすら忘れ、小気味良いシャッター音も相まって、ついつい片手で撮ってしまう。

現代の大型化したスマートフォンでは、咄嗟に片手で撮ることも難しくなってきていると感じる。コンデジではグリップ感が心許なく、シャッターを切る際にぎゅっと握り締めてしまって、また少し斜めになってしまったと恨めしく思いながら自宅でトリミングをすることになる。最後に関しては、単に私が鈍臭いだけなのだけれども。

LEICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 II ASPH.
F5.6 SS1/2,000 ISO500

そのように考えると、片手で軽快に写真が撮れることの有り難さを理解していただけるであろうか。コレって実はすごいことなのだ。

小さければ良いってものでもなくて、「写真を撮ることに丁度良い」は確かに存在する。このボディサイズに落ち着いたのも、スチールカメラである事を真摯に考えて作った結果なのだろう。私は素直に気持ちよく使っている。

少し興奮気味に早口で語ってしまったが、この懐の深い余裕と軽快さがマイクロフォーサーズを使う理由。なんでも良いし、全部良いのだ。

LUMIX G9PROⅡは固くなった脳みそから解放され、少しだけお転婆になれる魔法が施されていると思わずにはいられない。

魔性のLEICAモノクローム

LEICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 II ASPH.
F1.4 SS1/1,300 ISO100

今回新たに搭載されたフォトスタイル「LEICAモノクローム」とLEICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 II ASPH.を是非とも組み合わせて欲しい。

しっかりとしたコントラストを保ちつつも、絶妙なフェードが掛かったハイライトに周辺減光が組み合わさり、撮影した全てが作品になるのではないかと勘違いしてしまう。

LEICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 II ASPH.
F1.4 SS1/500 ISO100

これは極めて危険な組み合わせを発見してしまった。ただの倉庫と玉ねぎが、こんなにも格好良くなってしまうのだから。

手にしたばかりでパラメーターすら無調整でも、その気にさせてくれたフォトスタイルだ。

他を寄せ付けない圧倒的なトーン

LEICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 II ASPH.
F2.8 SS1/500 ISO100

GH6以降、LUMIXのトーンは、他のマイクロフォーサーズ機と一線を画している。

例に漏れずG9PROIIも同様、パッと見た瞬間から、明らかに、初代G9よりも「質のよい写真だ」と感じる。

これまでは露出を切り詰めることに神経を使っていたが、多少雑に扱っても良くなった。広くなったダイナミックレンジから来るものなのか、それを利用した画像処理エンジンによる調整が絶妙なのか、正確には判らないのだけれど、しなやかさを感じるトーンと生っぽさの共存は、さながら北欧映画の世界を見ているようだ。

無くても生活に支障はないが、あれば心がニンマリするもの

LEICA DG NOCTICRON 42.5mm / F1.2 ASPH. / POWER O.I.S.
F1.2 SS1/640 ISO100

センサーサイズの違うカメラを共存させる人は、私を含めて仲間内にも数人いるけれど、ぶっちゃけそう多くないと思っている。

現実問題、それなりのお金が必要だし、フルサイズでも小型軽量のカメラが増えてきた。

では何故、フラッグシップのマイクロフォーサーズ機を必要とするのか。

それは、使っていて楽しいから、これに尽きる。

LEICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 II ASPH.
F2.5 SS1/400 ISO100

今日の気分で、季節で、気候で、場所で、被写体で、撮れるかどうかもわからない妄想を繰り広げながら、機材を準備して撮影に行く事が楽しいのだ。

思い通りにハマったときは、口の端が緩んで仕方がない。少々大袈裟に聞こえるかもしれないけれど、たったこれだけのことが、私の人生を豊かにしてくれる。

クリエイターがブランドフィロソフィー(哲学)と共に歩むこと

LEICA DG SUMMILUX 12mm / F1.4 ASPH.
F1.4 SS1/5,000 ISO500 12mm

カメラを選ぶ基準はなんだろうか。

解像度、高感度性能、AF、サイズ、重量、デザインなど。人それぞれ重要なポイントはあるだろうけれど、「写真を撮るだけ」であれば現代のカメラにそこまで大きな差はない。

では、何を基準に選ぶか。

ひとつ私が個人的に推したいのは、ブランドの哲学がどれだけカメラに反映されているのか、を考えてみること。

LUMIXはブランドとしての哲学がハッキリとしている。絵作り、テクノロジー、そしてデザインについてが公式ホームページでも発信されている。

G9PROIIは特にデザインフィロソフィーの思想を強く感じたので、こちらに触れようと思う。こちらのnoteを読んでいただけると、この先の話が理解しやすいはずだ。

色に関しての哲学は初代G9の発売からずっと、センサーサイズに関わらず近い色や質感を出し続けてくれていたけれど、ボディ形状やシャッターフィーリング、メニューなどの操作性が若干違う事で、マイクロフォーサーズとフルサイズを現場で共存させる際に(進化を続けているからこその弊害ではあるけど)若干のモヤモヤがあった。

LEICA DG VARIO-ELMARIT 50-200mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S.
F4 SS1/400 ISO200 92mm

ところが今回、S5IIとG9PROIIのボディ形状が統一されたことで、デザインフィロソフィー「無心」がひとつの形になったと感じている。

我々カメラマンは、カメラの操作で基本的にあまり手元を見ない、はず。単純にカメラを使い込んでいることもあるけれど、現場では手元を見る余裕があるなら被写体を追いかけるべき、という単純な理由だ。これが、操作性が同じマウントで統一する理由の一つでもあるだろう。

そして今回、マイクロフォーサーズとフルサイズがほぼ同じ操作性になったことで、かなり高いシンクロ率となった。これは革新的で、クリエイターに寄り添った結果に違いないと、勝手にひとりで興奮している。

今後はより安心して、軽快なG9PROII、オールラウンダーのS5II、ここぞのS1R、といった具合にそれぞれの役割でスタメンを張り続けてもらう予定だ。

LEICA DG NOCTICRON 42.5mm / F1.2 ASPH. / POWER O.I.S.
F1.2 SS1/1,600 ISO100 43mm

「このシステムはよく出来ているなあ」と、毎度アップデートされるたびに感心する。これだけの安定感を保ちつつ幅が広がると、次の撮影現場を想像しながら、あれやこれやと妄想しつつ、機材の準備をすることすらも楽しい。

機材による色や仕上がりの差にストレスが少ない状態で、自由に選択して楽しめる余裕があるのはLUMIXの美点であり、特権であろう。

今後も長く付き合っていけるカメラとして、活躍し続けて欲しい。

LEICA DG SUMMILUX 12mm / F1.4 ASPH.
F1.4 SS1/8,000 ISO500
LEICA DG SUMMILUX 12mm / F1.4 ASPH.
F1.4 SS1/4,000 ISO500
LEICA DG NOCTICRON 42.5mm / F1.2 ASPH. / POWER O.I.S.
F1.2 SS1/2,500 ISO50
LEICA DG NOCTICRON 42.5mm / F1.2 ASPH. / POWER O.I.S.
F1.2 SS1/800 ISO100
LEICA DG NOCTICRON 42.5mm / F1.2 ASPH. / POWER O.I.S.
F1.2 SS1/2,500 ISO50
LEICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 II ASPH.
F2 SS1/8,000 ISO500
LEICA DG NOCTICRON 42.5mm / F1.2 ASPH. / POWER O.I.S.
F2.5 SS1/800 ISO100
LEICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 II ASPH.
F2.8 SS1/400 ISO100
LEICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 II ASPH.
F3.2 SS1/500 ISO100
LEICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 II ASPH.
F5 SS1/1,600 ISO500
LEICA DG NOCTICRON 42.5mm / F1.2 ASPH. / POWER O.I.S.
F2.5 SS1/3,200 ISO500
LEICA DG SUMMILUX 12mm / F1.4 ASPH.
F1.4 SS1/2,000 ISO500
LEICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 II ASPH.
F1.4 SS1/2,000 ISO100
LEICA DG NOCTICRON 42.5mm / F1.2 ASPH. / POWER O.I.S.
F1.2 SS1/640 ISO100


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