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LUMIXが考える”クリエイターファースト”なカメラのデザインとは?

こんにちは。LUMIXのデザインチームです。

今回は、私達デザインチームが現在のLUMIXのデザインに至った経緯、そしてデザインにおける哲学についてお話しします。

LUMIXが目指す役割

LUMIXは過去に、ユーザー層を「記録のために写真を撮るエントリー層」や「創作活動を楽しむ趣味層」と幅広く定義していました。

しかしリブランディングを経て、LUMIXはユーザー層を「表現したい人=クリエイター」と定義し、クリエイターの表現活動に寄り添うカメラへと進化を遂げています。

そこに行き着くまでにLUMIXデザインチームは、リブランディングに先駆けてカメラのデザインをクリエイター視点から改めて考え直し、デザインへと落とし込んでいくプロセスを踏むこととなりました。

こちらではSシリーズの開発を軸に、デザインチームによるデザインフィロソフィーの構築や、それらを踏まえたデザインチームの活動についてご紹介していきます。

まず初めに、私達が定めたデザインフィロソフィーは、以下の一言に集約されました。

デザインフィロソフィー: 「無心」

LUMIXが目指すデザインは、クリエイターの情熱に応えられる細部まで作り込まれた「道具」としてのデザインです。このデザインフィロソフィーを、私達は「無心」という言葉に表現しました。

デザインフィロソフィー「無心」に至った経緯

プロ向けの最上位機種としてフルサイズのSシリーズを開発開始した頃でした。

これまでにGHなどのハイエンドカメラは開発していたものの、「プロが現場で扱う機種としては、要求されるスペックやデザインが異なってくるのではないか」という想いが芽生えました。

そこで、デザインチームが直接プロの撮影現場に同行させていただき、現場における課題や要望をヒアリングしつつ、実際の撮影の様子を事細かに「観察」させてもらうことにしました。クリエイターの方々はその道のプロですので何か問題があっても工夫して使いこなしてしまいます。「観察」することで使用者本人も気づいていないような課題が見えてくることもあります。

実際に現場を観察していると、プロのクリエイターは自身の作品制作に類いまれなる情熱や努力を重ねており、最良のアウトプットを得るために「誤操作のない最短ルート」を求めていることに気づくことができました。

これは当たり前のようにも感じられるかもしれませんが、「プロは沢山のボタンを色々操作するもの」と思い込んでいた私達にとって、非常に大きな気づきになりました。

例えば、風景写真家であれば厳しい自然環境や刻々と移り変わる景色の中でも容易に設定を変更できるようボタンを触る順番が決まっていたり、スポーツカメラマンであれば一瞬の決定的なシーンを見逃さないために試合中はファインダーから目を離すこと無く無意識かつ瞬発的に操作できるカメラが求められていたのです。

つまり、カメラは表現するための「道具」であり、私達メーカーはクリエイターの情熱に応える黒子のように、クリエイターを影から支える存在になることが重要だという気づきを得られました。

そこから私達はこの想いを、「道具に対して意識を向けず、被写体に集中できる=無心」と捉え、デザインフィロソフィーとして掲げています。

無心に操れる「道具」であるために

カメラは、クリエイターの創造力を実現するための「道具」です。それを具現化するためにユーザビリティを基本にしながら、デザインフィロソフィーとして3つの要素にまとめました。

・USABILITY(=誤操作が少なく直感的な操作性)
・FORM(=機能的かつ魅せる形状)
・CMF※Color Material Finish(=愛着が深まるこだわり)

そしてフィロソフィーと同時に、LUMIXがLUMIXらしいデザインを形作っていくために「デザインアイデンティティ」も形成されていくことになります。

デザインフィロソフィーとデザインアイデンティティ、そしてそれらを形成する3つの要素について、順番にご説明していきます。

USABILITY(=誤操作が少なく直感的な操作性)

前述の通り、私達はLUMIXのデザインを考えるにあたってまずはクリエイターのワークフロー全体を俯瞰した上で、そこから抜き出した撮影のフローを細分化し、それぞれのフローに必要な項目を洗い出しました。

スチール撮影では現場に同行させていただき、動画撮影においてはビデオグラファーにデザインセンターに来ていただいて、実際にMVやCMを撮る想定でモデルやダンサーもセッティングしながら現場を再現し、徹底的にワークフローを観察したのです。

そうして洗い出されたそれぞれの項目に対して、クリエイターのユーザビリティに合ったデザインを検討していきました。順に説明していきましょう。

■1 BUTTON = 1 FUNCTION
1つのボタンに1つの操作を割り当てることにより、誤認知による誤操作を防ぎ、あらゆるシーンで直感的に設定を変更できるようにデザインしました。

■PRIORITY ZONING LAYOUT
クリエイターの撮影フローの分析をもとに、操作に優先順位をつけ、撮影中に使うボタンを親指に近いところに、撮影前に使うボタンはその周辺に配置しました。配置の際には、指の動きに応じて自然に操作が出来るようにしています。内部構造に制約がある中、指が届きやすくかつ誤操作が防げるように、指から遠いボタンは高さを高くするなど、立体的に部品を配置するように工夫しました。

■3連ボタンの高低差
以前のハイエンドモデルから取り組んでいる内容ですが、ボタンの高さを変え、中央のISOボタンには凸を付けることで、指の感覚で直感的に判断できるように配慮しました。

また、これはSシリーズ開発以降の話ではありますが、同様の観点からUSABILITYを追求したデザインが施されています。

こちらはGH6。「動画撮影は腰位置で撮影することが多い」という観察からの気づきをもとに、腰位置でも押しやすいようにRECボタンを配置しました。

また、右手にパン棒やジンバルなどを持っていても押せるように本体左位置にもRECボタンを配置しています。

同様の発想からボックスカメラのBGH1/BS1Hでもカメラの左位置にRECボタンを配置しています。加えて、スタジオの天井などに設置されることも想定し、前面/上面/側面の様々な方向から撮影中であることが分かるよう、立方体のコーナーにタリーランプを配置しました。

これらのように、直感的に操作できるようボタンや各機構を配置することで、プロの現場で利便性が感じられるカメラへとデザインが改善されていきました。

デザインアイデンティティを考える

Gシリーズより一眼システムカメラを開発してきましたが、当時は時代に合わせて機種毎にカラーバリエーションや形状が異なっており、カメラとレンズを組み合わせた時に見た目がバラバラで、システムカメラとしての体裁が整っていなかったという反省がありました。

そこで新しいシステムであるSシリーズを開発するにあたって、デザインアイデンティティを新たに定義することになったのです。

「LUMIX」という存在をチーム内で改めて議論し、「FORM」と「CMF」にその想いを具現化しました。

FORM(=機能的かつ魅せる形状)

「LUMIX」という名前には「光」という意味が含まれています。

そこで私達は、そのブランドのエッセンスである「光」の要素をプロダクトデザインに取り込むことを考えました。具体的には、カメラ正面のLUMIXと刻印されている部分に光軸から結んだラインで構成された六角形の「ヘキサゴンフェイス」を、Sレンズの上面には光軸をあらわす白いラインを象徴的に刻印しました。

また、Sレンズのもう一つのデザインアイデンティティとして、フォーカスリングとズームリングの間の「くびれ」があります。これはSレンズの共通要素として統一感を持たせる形状であると同時に、2つのリングを手探りで判別しやすい機能的な意味合いも持たせています。

CMF(=愛着が深まるこだわり)

LUMIXのボディは共通のレザートーン塗装にすることで、全ての機種に統一感を持たせました。

これはエントリーモデルのG100でも同様で、共通の黒の塗装仕上げはもちろん、フルサイズのS5と同様の赤いメタリック塗装のRECボタンなど、LUMIXとしてのアイデンティティを踏襲しています。

実はこれには裏話があって、従来G100のようなエントリーモデルはカジュアルなデザインにすることがセオリーで、開発当初はそのようなデザイン案も検討していました。しかしVloggerやSNSフォトグラファーに調査をしてみると、「撮影している自分がカッコよく見えるカメラらしいデザインが欲しい」というニーズが大きいことが分かったんです。

そういうユーザーの気持ちも踏まえて、上位機種同様のフォルムやCMFを踏襲することにしました。小さく軽いボディですが、グリップ、ダイヤル、ボタンレイアウトなど、本格的なカメラデザインにこだわりました。

さらに、一見してLUMIXとわかるデザインにしたいという想いから、ボディの一部にアイキャッチ的な要素を取り入れています。

具体的には、上位機種の左肩のダイヤルに赤いラインをあしらうことにしました。これはダブルアルマイト加工という処理で、一度黒く染めた後にさらに赤く染めるという非常に手がかかる工程でつくられています。

ちなみにこの赤いリングはS5では一本なのですが、S1シリーズでは二本に見えるように加工しています。より上位機種なので二本のラインで階級をあらわしたい、というちょっとした遊び心を込めています。気づいた人いらっしゃるでしょうか(笑)

左:S1R
右:S5

他にも、手に馴染むグリップ部のテクスチャなど「細部まで素材や製法からこだわったものづくり」をカメラに体現することで、長く愛着を持って使用していただけるようデザインしています。

デザインチームによる「ユーザー体験のデザイン」

LUMIXが誕生して20周年の節目を迎えた2021年。

時代に合わせてブランドの目指す方向性を改めて再定義するために、LUMIXはリブランディングをしました。実はこのリブランディングも、デザインチームから活動が始まったのです。

リブランディングについては先日リリースしたマーケティング部門からの記事に書かれていますので、併せてご覧ください。

リブランディングの他にも、直近ではこれらのような活動にも力を注いでいます。

・ブランド全体のクリエイティブディレクション
・プロダクトのキービジュアルディレクション
・マーケティング活動のキービジュアルやキーコピー制作
・ノベルティグッズ(ステッカーやアパレル製品など)のデザイン
・SNSのクリエイティブの制作や映像コンテンツのディレクション

●LUMIX CINEMA(LUMIX JAPANインスタグラムの映像コンテンツ)

●BGH1/BS1H事例映像

また、現在様々なイベントが開催されているLUMIX BASE TOKYO、実はLUMIXのデザイナーがコンセプトやインテリアデザインのディレクションを担当したものです。

このようにLUMIXのデザインチームは、ただカメラのデザインをするだけではなく、ブランド全体をデザインする役割を担い、クリエイターの代弁者としてLUMIXのブランド価値を高めていけるようこれからも幅広く活動していきます。

私達がデザインしたいのは「最高のブランド体験」

最後まで読んでいただきありがとうございます。

「見る人に感動を与える作品」を作るのは、カメラではなくクリエイターです。そしてLUMIXというカメラは、クリエイターの皆様にとって創造力を最短ルートで具現化する「道具」となり、最高の撮影体験を提供していきたいと考えています。

色表現や画質だけではなく、ワークフローから細分化された操作性やデザイン性からも、クリエイターの創作活動を支えていき、そこに至る「撮影体験」においてもクリエイターを感動させるブランドとなれるよう、これからもカメラの域を超えた「LUMIXブランド」をデザインしていきます。

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