見出し画像

再生 ~Rebirth~

個展は終わってしまったのだけど…
長年温めていた構想を、この日のために必死で編み上げた作品なので書き残しておこうと思う。

それは「着なくなった手編みのウエア」を
「ある程度ほどいて糸に戻し」
「その糸であみぐるみを編み」
「ほどき掛けのウエアと共に一つの作品にする」というもの。


ほどく時に感じる心の痛み。
くねくねとクセのついてしまった糸。
そこから、新たに生まれるもの。

画像1
再生 ~Rebirth~


一目一目編むのも、頭数を増やすのも、長い時間が掛かる。
けれど糸をほどくのは、絶滅に向かうのは、一瞬だ。
ほどいた糸は、また編めば再びカタチとなるけれど、動物たちはそうもいかない。

「絶滅危惧種」を編んでいる私は、いつの頃か「編み物」というものが動物たちの繁栄や衰退と似ていることに気付いた。

その時から、この作品の構想は生まれていた。
しかし、かなりの時間と労力と脳をつかうため、手が付けられずにいた。


個展会場への納品期限も差し迫ったある日、母がある一枚を実家で見つけてくれた。
28年前、若かりし頃の私が編んだ乳白色の古いセーター。
虫に喰われることなく、母が大切に保管してくれていたセーター。

よし、これや!
編むものは頭の中で完成していた。


たまご。
そう、でもただのたまごじゃない。
中にヤツがいるのだ。
絶滅したはずのそれは、殻を破っていま生れ出ようとしている。

中から外界を見ている。
鋭い目をして。
どんな世界なのか?

画像3


2019年に編んだワニの「絶滅」「誕生」
なぜこんな名前を付けたのか、という説明は今回省くことにする。
その二匹を編んだ残りの糸で「再生」の、あの中にいるヤツを編んだ。


ここ数年、私の作品を見て「可愛いけど…」「動物なのに…」を前置きに、「どこか狂気を感じる」と言われることがある。

私はそれを誉め言葉だと有難く頂戴している。
もし作品に「狂気」が宿っているなら、食事や排せつすら忘れ、ただ一点を見据え、狂ったように編んでいる私からの残り香のようなものだろう。

この「再生」はその塊かもしれない。

画像2
画像4


ぜひサポートをお願いします。私の制作活動や、オランと共に活動している「オランプロジェクト」の活動資金に活用させて頂きます。「Protect Our forest」さあ!あなたもオランと一緒に森を守り育てませんか?