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とうもろこしを茹でる

昔からとうもろこしをよく食べた記憶がある。

幼少期から学生まで、夏休みの思い出はいつもとうもろこしがいる。実家では母が、おばあちゃんの家にいれば、おばあちゃんが、必ず茹でてくれた。

黄色い、ぷちぷちが並んでるだけでうわーっと嬉しくなる。夏が来た、と季節を感じて、また嬉しくなる。夏の盛り、いつもとうもろこしが食卓にあった。何本も茹でられたとうもろこしは、茹でたても、冷やしても美味しい。

茹でたてのほくほくとしたとうもろこしは、食べるために持つのにちょっとコツがいる。

芯のところまで熱いので、爪でグッと持ち上げる。前歯を実に入れると、おいしい汁がぷちぷちはじけて、じわっと溢れる。甘くて、少ししょっぱさがある。冷めたり、キンキンに冷蔵庫で冷やしたものも、もちろん、ひんやりとしておいしい。

母親のとうもろこしを茹でている後ろ姿を、なぜか鮮明に覚えている。母親は熱くなるとハーフパンツとTシャツ、まあまあよれよれのものを着ていて、首にたしかタオルを巻いていた。汗をふきふき、煮え立つ鍋のとうもろこしを菜箸を持ちながら見守っていた。実家の、広い、白い床の台所。暑い夏だった。

大人になって、一人暮らしをするようになり、自分で台所に立つようになった。夏の風景にあった、とうもろこしを茹でてみようと思った。

近所のスーパーで皮のついたとうもろこしを買い、ネットで調べたレシピを手がかりに、茹でた。

が、しかし。

実家で食べるような、あの絶妙な塩加減ができない。塩を入れすぎなのか、とうもろこしの旬がまだ早いのか、実はなんだか硬くて、しょっぱい。がっかりして、期待が大きかっただけに、萎えてしまった。たかが茹でる、されど茹でる。茹でるってもしかしてむちゃくちゃ難しい…?

そういえば、枝豆もうまい具合に味付けできなかった覚えがある。しょっぱさが足りない、かつなんだか固くて、居酒屋みたいにはならないなあ…としみじみ思った。

夏の盛りは過ぎてしまい、結局、うまくとうもろこしも枝豆も茹でられないままでいる。実家に帰ったら、お母さんにやり方を聞こう。というか、お母さんに茹でてもらおう。来年の夏は、帰れるといい。

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