9月に祈る

秋の空は、澄んだブルーがくっきりと反射していて、白いビルとの境界線が息を呑む美しさだった

次に待ち構えている季節をわずかに含んだ空気が好き。それは予感であり再生だから

浮き足立った春の陽射しや、騒々しい夏の日々を乗り越えて、私たちはまた出会い直すことができるだろうか。
変わらない名前と変わらない身体を付き合わせて、寂しさが静かに美しく呼応するこの季節で、また二人だけの新しい物語を紡げるだろうか。

抑えることのできない何かが心に侵入してくるのを知りながら、あなたは目を瞑って、無理に埋めようとする。手足が絡まったまま前に進めない悪夢が、今でも続いてるかのような顔をする。

すべてを受け容れて、終わることのない柔らかさに包まれて、考えることすら手放したい。

秋なら叶うことのない願いや約束を口にしても許される気がするから、だからいっそう、寂しさは深さを増して一人ひとりを溺れさせる





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