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「父さんの雲」―詩―シロクマ文芸部「夏雲」 


父さんの雲

夏の雲は 僕にとっては
父さんの言葉の 雲だ…

百日紅の花が
赤い毛氈を 敷き詰めた夏の庭で
病気の父は
椅子に腰かけ 花々の間から
夏の空を みあげていた

「また病気が ぶり返すよ
暑いから 家に入ろうよ」

父さんは 額に汗を
浮かべながら 
少し笑みを 浮かべ
首を 黙って 横に振る

「もう少し ここに居たいんだ
来年の夏には 見れないからな」

夏雲は ユルユルと
空を 泳ぐように流れる
小さな 水しぶき色の雲たちが
お供してる

「坊 大きな 心の人に
ならにゃあ いかんよ
偉くならんでも いい
あの雲みたいに 
ゆるり ゆるりと
生きて行けばいい」

父さんの 手のひらに
百日紅の 花のような
何かが 落ちてきた
そっと見ると 雲のかけらが
夏の陽ざしに 涙色に光ってた

小牧幸助さんのシロクマ文芸部「夏雲」の
企画に参加させていただきました。
小牧様 いつもおせわになります。

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