グレーゾーンの人たち

数年前に今までお世話になっていた新聞の販売店が、廃業した。
我が家に毎日新聞を届けてくれていた人は、いわゆる知的グレーと言われる人だったと思う。
仕事はできるけど、ちょっと普通の人とは振る舞いが違って、天真爛漫だった。
ほとんどの人が知らないけれど、軽度知的の人には車やバイクの運転が得意な人も多い。

そしてその能力のために、搾取されることも多いし、困難さを見逃されてしまうことも多い。
何より本人が、困っていることや搾取されていることに気づかないことも多々ある。

その人をとりあえずAさんとしよう。
Aさんは推定69代、長年新聞配達をしていた。家族との縁が薄い。
市営住宅に入居できるまで、風呂のなしのボロボロのアパートに住んでいた。(今時そんな物件がまだ存在するのかと私は驚いたものだ)。

夏はベランダでペットボトルで貯めた水を太陽光で温めて、それで台所だったか、共同の洗い場だったかで、シャワーをしていた。

新しく入居した市営住宅だって、とても不便な場所にあって、お世辞にも綺麗とも新しいとも言えかった。

それでも今まで住んでいたところに比べると天国だと言う。

Aさんは、新しい場所でまた新聞配達をしているが、その仕事だって何歳までできるかわからない。バイクの運転だってそうだ。
個人事業主として契約を結ばれさていたら、年金や保険などで不利になる。

私も家族もAさんが、ちょっと他の人とは違う事は分かっていたが、本人が望んでいない限り、今の制度ではどうしようもできず歯ぎしりをした。

それ以外にも、我が家宛の宅配物を住所が似ているご近所に誤配をする人もいた。
その人もAさんと似た感じの人だった。
こちらも必要物資なので、自分のところに運んでもらわないと困る。と言うことで嫌々ながらクレームを入れた。

ルートが変わったのか、その人が仕事をクビになったのかわからないが、我が家に配達に来る事はなくなった。

この国のサービス業は、絶望的な位弱者に冷たい。というか便利さの影で弱者を追いつめている。弱者を作っている。
その弱者がまた、弱い人たちを搾取し、虐待すると言う悪循環が使う留まることなく起こっている。
誰かが声を上げたときに、受け止めてくれる場所があれば。
企業が、クレームとしてではなく使う働き手を守るための声として受け止めてくれたら、この社会は変わるのにと思う。

新自由主義や合理性の名の下、力のないものや、使う力があっても発揮する場所を見つけられない人間は、どんどんと食いちぎられて行く。

私は何とかしてこんな腐った世の中を変えたい。

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