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【小説】大学生って。 no.1

「私、不安だから行動するの。」大学4年生のみゆ。どうやって生きるのが正解なのか。大人になるとはどういうことなのか。友人関係や、承認欲求や、理性などいろんなことに悩みながら、もやもやする大学生の自意識をリアルにあぶりだす、初めて書いた小説です。

「ごめん。もう付き合えない。他の好きな人いるよね?」

ゆうたは真剣な眼差しで私を見てる。

「ごめん・・・・」私は謝る以外に何も答えられない。

ただゆうたは寂しそうな表情で言う。そして精一杯の優しい声で言う。

「一緒にいない方がいいと思うんだ。これからのために」

「・・・・」

私の前には、一口しか手をつけていないカフェラテとチョコレートケーキ。ゆうたの前には、一口も手をつけていないブラックコーヒー。

隣には綺麗に着飾ったおばさまたちが嬉しそうに会話をしている。一つも空席がなく繁盛してる店内。若い大学生暗いの女のウエイターはオーダーを聞くのにとても必死で忙しそうにしている。そして、暗い茶色い木のトーンでまとめられた店内のインテリアはどこか懐かしさを感じさせ、かすかに流れるジャスはどことなく寂しさを感じさせる。

「ごめんなさい。でも、まだ一緒にいたい。」

私の頬には大粒のなみだが、ぽたぽたと流れていた。そして、小さいこえで私はゆうたに伝えた。

ゆうたは目を潤ませながら笑顔で「ありがとう。大好きだったよ。」と言った。

騒がしい店内とは反対に私たちはとても静かだった。そして、私たちの目の前にあるコーヒーはもうすでに、とても冷たくなっていた。

それでも、隣の席のおばさんたちは笑顔で会話をしている。

ゆうたは、お金を3000円を置き、上着を持ってその場を立った。

彼の後ろ姿はどことなく寂しそうで、それでもやっぱり好きな人の後ろ姿だった。本当はその後ろを追いかけるべきだった。でも、私は席からただ立つこともできず、涙を流すだけだった。

私の大粒の涙は、ただ、机の上に落ちるだけだった。


ねえ、足りない

朝11時。目が覚めた。

窓の外を見るとすごくいい天気。というか、少し眩しいぐらいの綺麗な水色。夜は寂しくてカーテンを開けて寝る毎日。だって私と一緒に寝てくれる人なんていないから。

「また遅起き。」って独り言。

誰も返事してくれない部屋。

朝起きて二言目は「アレクサ、ジャズかけて。」

静かに流れ出す音楽。心地よい音域のピアノの音がなりだす。毎日、一緒の音楽。冬でも、夏でも変わらない音楽。

寂しい。

予定がない毎日。かといって、本当に予定がないわけじゃない。大学の課題はあるし、ボランティアでやってる宇宙研究期間のまとめも、読まないといけない本もいくつかある。寂しいからと言って誰かに会いたいわけじゃない。だって会うと用意がめんどくさいし、結局お金もかかる。その後の友達付き合いもめんどくさいし、やりとりのメッセージもめんどくさい。だけど、人に合わないと寂しいの。

ねえ。足りない。

昨日の夜の予定は何もなかったはずなのにまた携帯触って夜3時に寝た。お昼の予定なんてない。だから、アラームをかけずに寝たし、どうせいつも予定はない。

昨日の夜は、マッチングアプリをスワイプしてだれかから返事が返ってくるのを待ってたの。3年付き合ってる彼氏がいるのに、暇つぶしにマッチングアプリ。遊びたいわけじゃない。ただこの少しの時間の寂しさをリアルな人で埋めたいの。

彼氏ができても、できなくても。私の人生はいつも寂しいし、足りない。だって、私は自分の力だけじゃあ、自分を幸せだと思えないから。

いつもどことなく寂しいなと思いながら毎日を過ごしてる。

ほんとはちゃんと誰かを愛されたい。そして、ちゃんと愛したい。

そんな寂しい気持ちを誤魔化すように、マッチングアプリを開き返信がないか確認する毎日。「私の人生なんだかつまらないな。」と心の中でふと思いながら、コーヒーマシンにコップをセットし、コーヒーを入れる。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。大きな豆を引く音が部屋に響き渡る。そして静かにジャズが流れていた。


私には、3年付き合ってる彼氏がいる。彼はゆうた。27歳。ただゆうたは本当に仕事に追われている人で会えるのは2、3週間に1度。付き合った当初はどんなに忙しくても夜ご飯だけ食べるとか、お泊まりするとか週に3日は会ってたし、ラインも毎日たくさんしてた。だけど、ゆうたは今年から彼が管理職になったせいで、月の半分は出張で、仕事は今まで以上に激務になった。そして、仕事の邪魔をしたくないし、彼の人生を尊重したい。と理想論を語ってた私はプライドを拗らせて寂しさをゆうたで解消することはできなくなっていた。ゆうたと私は自然と少しずつ距離を取るようになっていた。

ゆうたと付き合った最初の頃は毎日ドキドキしてたのに。

ラインの通知が来たらにやけてすぐ返信しちゃう相手。仕事中だから返事はもう夜の11時まで帰ってこないってわかっているのに、ずっと携帯をみてまってた。

どんなに遠くても、遠くても、会えそうだったら会いに行ってた。

困ってる人がいたら助けずにはいられないゆうたのお節介なところと、つまらなくても優しくいつも話を聞いてくれる彼の優しさを持ち合わせていたゆうた。いつも手を握ってくれる彼のあったかく大きな手が大好きだった。

だけど、いつしか気づかないうちに、心地が良すぎる気を使わなくてもいい相手になっていた。

意識して会話をしなくてもいい相手。セックスしたいときはするし、時々旅行にも一緒に行く。行きたい場所があればもし2人の予定がちょうど空いていれば2人でいく。

ただ次第に2人の予定が会わなくなって、会える時間もすくなくなっていた。ただゆうたは仕事が忙しいだけだったのに、私は自分の気持ちでゆうたに迷惑をかけたくないって思ってただけだったはずなのに。

いつしか「寂しい」っていう気持ちをどこかに忘れたかのように。私たちの関係が少しずつ冷めていた。

そして季節が過ぎるごとに、私の「罪悪感」ってやつも一緒にどこかに置いてきたみたいだった。

そして、私の生活は自然に彼なしで自分の人生に刺激を求めるようになった。

彼は私のことだけを見て、仕事を頑張ってただけなのに。


充実してるはずなのに、、、

午後の4時。ベットの上でいつものようにyoutubeを見ながらぼっとしてる。西日が部屋にさしてめちゃくちゃ眩しい。

でもどうしてもベットから動きたくないから、カーテンを閉める。茶色い遮光カーテンを閉めると私の部屋は真っ暗。オレンジ色の電気をつけると、一気に秘密基地みたいになる。

必要なものだけが詰まった私の一人暮らしの部屋。インテリアなんてこだわる余裕なんてないから無機質な色でまとまってる。

私は、葉山みゆ。22歳。大学四年生。私立文系のあまちゃんって言われるところに行って今年やっと卒業。偏差値は65あるし、大学の名前だけで選んだ大学だけど、周りも華やかな生活をしてる大学生ばかりで楽しかったかな。この4年間。だけど、正直、私立の文系って微妙。そこそこ勉強しなくても出席さえしてれば卒業できそうだし。私の大学生かつの半分は、コロナの影響でほぼ学校に行ってないからほぼニートみたいな生活をしてた。

私のいつメンははるちゃん。のんちゃん。なみちゃん。私。この4人。みんな高身長でスタイルがいいし、顔も可愛い。おうちはみんな裕福である程度お嬢様って感じのメンバーだから一緒にいて楽しい。と思ってる。

でも、いつも物足りない。

というか、背伸びしすぎてついていけない。


ブー(ラインの通知のバイブ)

私の携帯がなる。携帯のロックを解除して、ラインを開く。ラインのパスコードロックも解除する。本音はラインにもロックかけてるのすごいめんどくさいなと思いながらいつも四桁のパスコードを入力する。その四桁は元カレの誕生日。それを無表情のまま解除する。

はる「一緒にアフタヌーンティーしにいこう😉💓」

いつメンのグループが活発に動いてる。いつも声をかけてくれるのははるちゃん。何事にも活発で、すごい意欲的な彼女は時間を無駄にしない。やりたいと思ったことはやり通すし、絶対やり遂げる。そんな彼女がまたいつメンのグループで声をかけてる。

そしてすかさず、何にでもイェスマンののんちゃんとなみちゃんが秒で返信する。

のん「いいよ〜💞」

なみ「めっちゃあり〜」

いつもはるちゃんにいつもついていくのんと、なみ。

「はぁ。」

どうしよう。このグループラインが動くといつもため息をついてしまう。正直このメンバーtアフタヌーンティーとかいきたくない。というかあんまり美味しくもないパフェに5000円とか高すぎないか。って思ってる。

どうせ話す内容は、恋愛話。そしてネタがないとつまらない。というか私恋愛に悩むほど本気の恋していないのにな。

私「素敵🤗いつにする~~??」(カチカチカチ)

カチカチ。携帯にネイルが当たるのはもう気にならなくなった。無表情でラインの返信を打ち込む私。普通の大学生はこういうの軽々しくいくの?っていつも不安に思いながらも私は返事する。

いつも不満を心の中に秘めるけど、絶対口にすることはない。私は誰かのグループに属していたい。ただ、誰でもいい。可愛くて、ある程度頭がいい人で、一緒にいてメリットがありそうであれば。

携帯をさわった流れで、インスタを確認する。ストーリーを見て、みんなの行動を確認する。みんなが今旅行してるとか、美味しいご飯行ってるのかなとか。無表情で、ただ確認する。

時々、仲良くしたいと思う友達にリアクションする。「💕」って。別に投稿してる中身には興味ない。

ただつまんないことを投稿して自己満?なんだこれ。って本当は思ってる。お金にならないのに、フォロワーを増やす意思もないのに、適当に良さそうな写真を簡単にあげている男とか女とかにイラつく。

「そんな人生何が楽しいの。」

そうやってぶつくさつぶやく私も、同類。そんなクソ人生も私の人生。

全力で冷めてるのかなって思う。というか無駄な人生を過ごしてるのは本当はこうやって不満を抱きながらも携帯を触っている私。

「はぁ。」

誰もいない部屋で、1人またため息。

だけど、頑張ってつるむことをやめられない。だって、そうやって誰かとずっと繋がっていないと不安だから。

冷めてるんじゃないの。不安にならないために生きてるの。それが私。

そうやってぶつくさ思いながら携帯を閉じる。

ああ、なんだか同性ってつまらない。

彼氏とうまく行ったらもっとこの女子会も楽しめるようになるんだろうか。と思いながら、いつもの流れで女子会に参加する。

そんな毎日を送ってるそこらへんにいる普通の大学生だった。


久しぶりのドキドキ。

「僕はみゆに何も期待していないよ。不安にならなくて大丈夫。隣にさえいてくれるだけで幸せだよ。」

彼はいつも私といる時に言ってくれる。優しさなのか。なんだかドライなのか。諦められてるのか。

丸山ひろ。30歳。彼は院卒の外コンで働くサラリーマン。その外コンも日本でトップだと言われがちなあの有名なところ。確実にエリート。そしてイケメン。おうちはみんなお医者さんばかりでおぼっちゃま。

そんな出会ったのは一年前。tinderで出会った。その時の私にも、彼氏はいた。だけど、真面目な彼氏に飽きてきちゃって、新しい出会いが欲しいし遊びたいなって思ってたくさんのマッチングアプリをしてた。そんな感じで自分を自分で満たせない私。

彼はそのうちの連絡を取っているうちの1人だった。イケメンだと思ったからすぐラインを交換した。でも、飽き性の私。ラインを交換しただけで、頻繁に返すことがなかった。

友達とご飯を食べたあとの夜9時。飲み足りなくなって、ラインにいる男5人ぐらいにドラえもんのスタンプを送るのは私の日常。飲み足りないというより、友達とのご飯つまらなかったなあって思ってる自分の気持ちを発散したくてこれから飲める男がいないか探すために送る。

私「ピコン(ドラえもんが顔を出してるスタンプ)9:10」

ドラえもんのスタンプはみんなが知っててある程度可愛いって思ってくれるから。私のラインに返信しない男はいない。

ひろ「どうしたの?9:15」

すぐに返事をしてくれるひろ。

私「今日、何されてますか?9:20」

って唐突に質問で返す私。でも自分ではストレートに誘うのは嫌だから、今から飲みにいきませんか?ってなんて聞かない。そんな女は負けだと思ってるから。

ひろ「仕事してたよ。飲みにいく?でも俺、お酒飲めないけどいいかな?9:21」

すぐ返信してくれる彼。外で待ちたくない私は一番最初に返信してくれた彼とすかさず約束する。

私「もちろん!でも私、飲みたくて、、大丈夫ですか?😳9:22」

普段は使わない絵文字をこの時だけはちゃんと使う。そして少し気を支える女を演じる。ぶりっ子症な私。可愛い女は絵文字を程よく使える女。使いすぎてもキモいし、使わなすぎたら無愛想な女。私はある程度可愛い女。

ひろ「俺のことは気にしないで大丈夫だよ。俺ノンアルでも楽しめるから9:22」

そして、ちゃんと、メッセージで確認する。奢ってくれそうな男かどうか。私と飲むなら奢らないなんてありえない。

イケメンで仕事ができる男に多いのが、人生勝ち組な男。奢らなくても女が寄ってくる男。そんな男と遊んでもつまらないし、もしも関係が発展したとしても私に尽くさない男になるなんて面白くない。私は奢らなくても来てくれる安い女にはなりたくない。付き合う前はもちろん、付き合ってからも奢ってくれる男としか関わりたくない。正直、半分も出したくないし、1000円も出したくない。なんなら財布だしたくない。

私は、嫌な女。というかめんどくさい女。

でも、そんな部分まで認めてくれる人と飲みたい。だって私スタイル良くて美人で大学生だもん。

そうやっていつも自分のわがままを正当化してる。


ピコン

ひろ「今どこいる?タクシー代出すから麻布これたりするかな?
   来れるようだったらお店に声かけてみるね。9:23」

ニヤニヤってしながらラインを見る。最高じゃんこの人。って思いながらラインの返信をすかさずする。

私「六本木にいます~!タクシーで向かいますね!
   近くなのですぐ着くと思います😊💕」

こういう時だけ使う絵文字。手をあげてタクシーに乗り込む。


今日はあたり。


そうやってウキウキしながら今日も違う男に出会いにいく。それが私。

タクシーの中で名前チェックと、リップを直す。そして彼に会いにいく。


「はじめまして」

ひろ「ついたかな?9:31」

私「もうすぐです!9:31」

さっきの酔いが回ってて、新しいかっこいい人に会うドキドキ感が加速しちゃって、自然とにやける私。

タクシーの運転手「お客さんここら辺ですかね。」

私「はい。ありがとうございます。」

タクシーに乗ってる5分は本当にすぐ。酔っ払ってる私にとってこの夜の時間感覚はおかしくなってる。というか、覚えてないぐらいすぐ。

私はタクシーの決済するために、決済画面を触る。いろんな決済方法があるんだなあと思いながら操作する。

そして、何も会話なく決済する680円。少ししか乗ってないのに、深夜料金だからいつもより少したかいな~なんて思いながら、携帯を決済画面に当てる。

ピピっ

タクシーを降りると、スーツをきた雰囲気がいいお兄さんが待ってた。

ひろ「みゆちゃんかな?」

かっこいい優しそうなお兄さんはニコッとしながら私に話しかけてくれる。そして、一気に緊張する。今まではラインの中の都合のいい男の中の1人だったのに、、、

私「そうです。ひろさんですか?」

思わず私は笑顔になる。だって目の前の人がイケメンなんだもん。なんだか急にドキドキしながら彼を見る。私の好きなタイプの男がスーツ姿で前にいる。酔っ払ってるのか、一気に彼の世界に引き込まれる。そんな私の前に、彼は優しくエスコートしてくれる。

ひろ「そうだよ。ごめんね。遠くまで。
   お店すぐそこだからいこっか。」

私「お店探しありがとうございます。」

ひろ「全然。わざわざこっちまでごめんね。これタクシー代。足りるかな?」

彼は優しい表情でずっと話しかけてくれる。ぞして六本木から麻布なんて絶対1000円もかからない距離なのに、2000円をそっとわたしてくれる。

私「え。全然大丈夫です!!」

って、最初はいい子ぶってもらわないふりをする。だけど本心は、ラッキーって思ってる。それにこれは一度断る建前がない女はがめつい女だと、そう思われたくなくて言ってるだけ。いい子を演じ切るのよ私。って無意識に思ってる。

ひろ「来させて悪いから貰っといて。」

彼は、少し申し訳なさそうな雰囲気を出しつつ、こっちを見ながら言ってる。178cmある身長に、いかにも仕事ができそうなスーツ姿。そしてワックスで綺麗に整えられてる髪型に、ほんのりかおる爽やかな香水のにおい。そして、何よりもイケメンの顔。そんな完璧な彼が少し困った感じの顔で話しかけてくれる。そんな彼の顔にキュンとしながらも、表に出しすぎないようにしないと。って思いながら私はタクシー代2000円を受け取る。

私「お気遣いありがとうございます。」

すこし小声で、私は言う。

ひろ「気にしないで。仕事終わりでこの格好でごめんね」

私の頭の中はお花畑。だってひろがイケメンなのだもん。それにスーツ姿って本当にかっこいい。ラインのアイコンよりかっこいいじゃん〜〜!って思いながら彼についていく。

今日はちゃんと彼の前ではいい子にしよう。

そう心の中で思いながら。ドキドキしながら彼と一緒にお店に向かう。

お店に着くと、そこは雰囲気のいいオーセンティックバーだった。蝶ネクタイをつけたマスターがシャカシャカカクテルを作ってる少し暗くて雰囲気がいいお店。アウターを店員さんに私、広いカウンターに私たちは案内される。

ひろ「何にする?」座ると彼はすかさず聞いてくれる。

私「ん〜。ジントニックにしようかな。」と私は程よく可愛くて、美味しそうなカクテルを頼む。

ひろはニコッと微笑み「わかったよ。頼むね。」とオーナーに何か甘いノンアルとジントニック、ドライフルーツをオーダーする。「かしこまりました。」と無駄のないコミニケーション。そんな彼を見て会話の流れの綺麗さにドキドキする私。でも心の中では、少し後悔してる。だって、彼なら2次会要員で余分じゃなくて普通にご飯に行けばよかったな。って思って。そうこうしてるうちにドリンク私たちの前にくる。

ひろは、こっちを向いてニコッとしながら言う

ひろ「改めまして、はじめまして。ひろです。」

私「はじめまして」

私たちは、グラスを片手に静かに、乾杯をした。


まだ帰りたくない

「みゆちゃんすごい魅力的で面白い子だね。」

彼とバーの時間は思ったよりすごく楽しかった。ひろはずっと私のことを褒めてくれてたくさん質問してくれる。そして美味しいお酒をおしゃれな空間で、楽しんでることへの高揚感とドキドキと。

そうこうしてるうちに時間は11時半。

ひろ「ごめん楽しくなっちゃって、もう11時半だね。帰ろうか。」

私「そうですね。時間経つの早いですね。」と少し寂しそうな口ぶりで、言う。この甘えん坊は普段ではできないけど、酔っ払いだからできるってこと。本当は酔っ払いじゃないけど、かっこいい彼ともっといたくて、甘えん坊にに振る舞う。

そんな私を見て、彼はニコッとしながら、カードをマスターに差し出し、チェックする。

私「寒い。。」お店から出ると外の気温は2度。冬の夜は冷える。寒すぎる。思わず手を擦りあっためる。

ひろ「ね。寒いね。大丈夫?タクシー拾うまで大通りまで歩けるかな」って優しく声をかけてくれる彼。すこし低い男性らしい声で、こっちを上から眺めながら声をかけてくれる彼にまた少しキュンとする。

私は彼の腕につかまると、彼はまたニコッとする。そしてゆっくり歩き出す。そして大通り。

私「まだ帰りたくない」

と下から目線で小さい声で、彼に言う。本当は甘えん坊じゃない。だけど、今日だけはもうちょっと一緒にいたい。だって彼といると楽しいから。

ひろは「かわいいね。」と私を見ながら微笑む。いつもクールで優しい彼。

キスしたい。

私は酔ってるせいか彼にもうぞっこん。私は視線を目から、唇にする。そして、自分の唇を軽く噛む。

彼はそっと私にキスをしてくれた。

あったかい唇。そして優しいキス。彼はそっと私の手を握ってくれる。

ひろ「一緒に帰ろっか。」

そして、私は笑顔でうなずく。

私たちは一緒にひろの家に帰って一晩を過ごした。

すごい濃厚な夜の時間。すごい幸せだった。

でも私は思ってた。「今日だけなんだろうな。」って。「そもそも出会いはTinder。ここのアプリで出会う人に、都合いい関係以上のことを期待したらだめ。期待すると傷つくのは私。だから、私も都合いい相手だと割り切るの。」すごく激しくて濃厚なセックスの後に、ひろのベットの上で、少し寂しく思いつつ。ひろの腕枕の中で眠りについた。少し厚い胸板の上で、彼の心臓のドキドキを聞きながら。

(つづく)

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眠れない夜に

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