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子育てに疲れたら-13(児相の強力な権限)

【 自己紹介 】

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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。

僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。

ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。

あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。

ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。

【 今日のトピック:子育て支援 】

今日も引き続き、子育て支援について書いていこうと思います。

さて、昨日は、児相(「児童相談所」の略)が持っている法的な権限について書きました。

普通、子どもが住む場所は親が決めます。

より正確に言うと、親権の内容として、「居所指定権」というのがあって、その名の通り、居所(子どもの住む場所)を、親権者は指定することができます。

この居所指定権があるにもかかわらず、児相は、子どもを一時保護したり、施設に入所させたりすることができるわけです。

まあ、素朴に考えても、親が嫌がっているのに子どもを連れて行くのは、「人さらい」そのものにも見えます。

ここからが今日の本題ですが、これだけ強力な権限が、何の要件もなしに行使できるはずなくって、もちろん要件を満たしている場合に限って、「人さらい」的な児相の権限が行使できるわけです。

と、書きましたが、実はこれはフェイクです。この説明だけでは、実体を正確に捉えることができていないと思います。

さて、親の意向に反してでもその場で子どもを連れて行くことができる児相の権限は、実は1つしかありません。

というか、こんな強力な権限は2つもいりません笑。1つで十分です。

これこそ、(ある人たちにとっては悪名高い)「一時保護」です。

「一時保護」は、児相の職員が家庭訪問するなりして現場に駆けつけ、そのまま子どもを児相の公用車に乗せて一時保護所まで連れて行くことができます。

おお、コワイですね~。

この一時保護の要件って、かなり厳しいように思えませんか?

だって、これだけ強力な権限を、そんなバンバン行使されていては、安心して子育てなんてできません。

でも、実は、この「一時保護」は、バンバン行使することができるようになっています。

というのも、一時保護の要件は、「必要なとき」という、たった1つだけです。

一時保護が必要と児相の職員が判断したら、たったそれだけの理由で、一時保護ができます(=子どもを家から連れ出すことができます)。

僕ら日本人は、そういう世界に住んでいるということです。

「必要」だと児相の職員が認めたら、いつでも児相の職員が子どもを連れて行くことができるというのが、今の日本なのです。

昨今、児童虐待に対して厳しい目が向けられているので、おそらく、多くの日本人が、この強力な権限について賛成していると思います。

ただ、賛成する多くの日本人にとって、児童虐待が他人事になっていることが、この強力な権限のウラに潜んでいると僕は思います。

子どもを児相に連れて行かれた親にとってみれば、一時保護の条文は憎たらしくて仕方ないはずです。当事者意識があるのなら、こんな強力な権限はイヤでイヤで仕方ないと思います。

ただ、条文上の要件は「必要なとき」というただ1点ですが、厚労省が、一時保護のやり方について、かなり詳細なガイドラインを出していて、児相の職員は、このガイドライン(「一時保護ガイドライン」)に従うことが、所轄官庁たる厚労省から要求されています。

だから、所轄官庁からの通達が「金科玉条」となる行政機関の性(さが)が、事実上一時保護の歯止めになっています。

そして、一時保護は行政処分なので、訴訟や審査請求によって不服を申し立てる手段が一応確保されていますが、とはいえ、一時保護自体が終了してしまえば、不服の対象たる一時保護がなくなってしまっているので、不服申立てもできなくなってしまいます。

そうすると、不服を申し立てる手段として、既に終了した一時保護が違法で、その結果損害を被ったことを理由に国家賠償請求訴訟を提起することが考えられますが、しかしながら、一時保護が違法であったと認められるのは、一時保護の判断が著しく不合理であった場合のみです。

いわゆる「行政裁量」というやつですが、一時保護を実施するかどうかの判断は児相に裁量が認められていて、この裁量の範囲外として違法だと判断されるのは、かなり例外的な場面です。

例えば、事実確認がずさんで、そのせいで間違った事実に基づいて判断してしまったとか、事実確認にずさんな点はなかったけれども、一時保護という判断に至ったプロセスがめちゃくちゃだったとか、そういう場面のみです。

事実確認が「ずさん」といっても、一時保護の判断は急がなきゃいけないので、ある程度事情聴取ができていればそれでいいですし、何の根拠も理由もなしに一時保護するわけないので、一時保護の判断に至った理由がめちゃくちゃなんて事態はまずあり得ません。

その結果、一時保護が後日違法と判断されるなんてことは、ほぼありません。

一時保護それ自体を争おうとしても、既に一時保護が終わっていることがほとんどなので無意味ですし、後日国家賠償請求訴訟を提起しても、それに勝訴することはほぼ不可能です。

そうすると、あくまで法的な制度としては、児相にめちゃくちゃ強力な一時保護権限が与えられており、僕ら日本人は、そういう社会で子育てしていることを自覚しなきゃいけません。

ただ、実際上は、それほどバンバン一時保護が行われているわけではなく、先ほど書いた、厚労省からの通達が歯止めになっていて、それと、一時保護所にも定員があって、それも現実的には歯止めになっています。

もちろん、必要な場合は、一時保護状態の子どもを別の施設に移して定員を確保することもありますが、子どもはモノではないので、すぐに別の施設に移せるわけではありません。

あと、大切なので書いておきますが、児相職員の誇りや自負も、一時保護の歯止めになっています。

先ほど書いたように、一時保護が違法となることはまずないので、法的に一時保護に歯止めをかけるのはかなり難しいんですが(というか、こういう風に、めちゃくちゃ強力な一時保護権限を認めたことが、児童虐待防止に役立っているのです)、児相の職員たちも、このことを肝に銘じて、権限を濫用しないよう細心の注意を払っています。

本当に強力な権限だからこそ、必要な場面でのみ行使しなきゃいけないと、児相の職員は全員心に刻んでいます。

これだけ強力な権限を、親の意向も無視して行使するのは、本当に例外な場面じゃなきゃいけない。それを十分理解して、日々職務を遂行しています。

それと同時に、必要な場面で一時保護を躊躇してもいけません。

本当に、難しい判断に日々さらされていると思います。

最近は、児相の不介入を非難する世間の声があり、そこも悩みのタネだと思います。

本来、この一時保護権限は、強力でありすぎるが故に、かなり抑制的に行使されなきゃいけません。にもかかわらず、一時保護しなかったことを非難する声が多いのは、なんともまあ、苦しい矛盾に直面していると僕は思います。

僕としては、一時保護が強力だからこそ、抑制的でなきゃいけないという本来の考えをきちんと重視するべきだと考えています。

厚労省のガイドラインでも、基本的には親の同意を得て一時保護するように求められており、親が反対するにもかかわらず一時保護を断行する場合は、断行するだけの理由がなきゃいけない(重度の虐待など)と書かれており、本当にこのとおりだと僕は思います。

さて、昨日は、児相の権限を抑制する仕組みがあるような書きぶりで終わっていましたが、ここまでの記載を見ると、「やっぱり強力じゃん!」という風に思われちゃいますが、一時保護の後に待っている手続きが、児相の権限に歯止めをかけています。

この先は明日書こうと思います。

それではまた明日!・・・↓

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