支え、サポートする
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このブログでは、2019年7月にうつ病を発症し、それをきっかけに同年12月からブログを始めて、それ以降、600日以上毎日ブログ更新してきた、しがないサラリーマン弁護士である僕が、日々考えていることを綴っています。
毎日ご覧くださってありがとうございます。本当に励みになっています。
法律に関する記事は既にたくさん書いていますので、興味のある方は、こちらにテーマ別で整理していますので、興味のあるテーマを選んでご覧ください。
【 今日のトピック:きちんと支える 】
今日の内容は、昨日の話と少し関連します。
(昨日のブログのリンクはスクロールした一番下にあります↓)
僕は今児童相談所で働いていますが、児童相談所で虐待を扱っていることは皆さんご存知だと思います。
児童相談所は、虐待の通告を受けるだけが仕事ではなく、むしろ、今後虐待が再発しないように家庭全体を支援することがメインの業務です。
このことは、僕も児童相談所で働き始めて知りました。
虐待「対応」が児童相談所の仕事だということは知っていましたが、今思うと、この「対応」という言葉に対する理解の精度が非常に悪かったです。
「虐待対応」って、電話などで通告を受けたら家庭訪問して、虐待の事実確認を行います。
事実確認を行い、虐待の確認がとれたら、「一時保護」といって、子どもを家庭から引き離して「一時保護所」という施設まで連れて行くこともありますし、一時保護までする必要がないのであれば、その場で虐待する親に対して指導したりします。
指導して終わることもありますし、継続して指導が必要だと判断した家庭であれば、虐待リスクが下がるまで指導を続けます。
一時保護した場合は、まず、子どもの家庭復帰を検討します。児相の職員が指導したり、他の行政サービスにつないだりして家庭環境の改善を図り、虐待の再発リスクが家庭復帰できる程度に低下したら、一時保護を解除して子どもを家庭に返します。
虐待リスクが下がらないままであれば、家庭復帰させずに、子どもを里親に委託したり、施設に入所させたりします。
里親委託や施設入所も、原則として親の同意が必要ですが、親の同意がなくても、里親委託や施設入所を進める法的な手段は用意されています。
さて、今日は、こういった児童相談所の業務について説明したいわけではありません。
傷つきへのケアです。
虐待の場合、虐待を受けた子どもが傷ついていることは言うまでもなく、したがって、傷ついた子どもに対するケアを重点的に行います。
児童相談所には心理司が多数常勤していて、その心理司の皆さんが、子どもに対する心理的なケアを、面接を通じて日々行っています。
ただ、ケアするべきなのは子どもだけではありません。親のケアも不可欠です。
虐待によって子どもを傷つけておきながら、親の「ケア」なんて、ピンとこない人も多いでしょうが、「虐待」というのは、親にとっても大きな傷つきを与えてしまいます。
自分の子を傷つけてしまうのは、多くの場合、子育てがうまくいっていないことが原因です。
子どもの幸せを願い、自分の人生を犠牲にしながら子育てに奮闘していたのに、結果的に子どもを傷つけてしまったという現実は、親にとってとてつもなく不都合な「真実」です。
子どもを身体的・心理的に傷つけてしまう子育ては、残念ながら、どうあがいても間違った子育てです。
虐待する親が、「しつけのため」とか「言うことを聞かせるために仕方なく」といって、自分の虐待を正当化しようとすることも多いです。
それは、そうやって正当化しないと、親としても、「かわいい自分」が守れないからです(昨日のブログ参照)。
・自分が子どもを傷つけてしまった
・自分の子育ては間違っていた
という現実は、親にとってあまりにも「不都合」です。それに直面するのは、苦しくて苦しくて仕方ありません。
でも、それに直面してほしいのです。だって、子どもにとって、親はあなただけなんです。代えはききません。
虐待しようが、子どもにとっては、かけがえのない親です。虐待によって子どもが亡くなってしまえば、親子関係の再構築なんてあり得ないので、親にはきちんと刑罰を受けてほしいですが、そうでない限り、やっぱり、子どもにとっては、かけがえのない「親」なんです。
これもまた、残酷な現実です。
代えがきかない「親」との関係を、子どもが再構築していかなくてはならず、それには、当たり前ですが、親の方も変わらなければいけません。
で、親が変わる際(親を変えるために支援する際)に大切な視点が、「強みを指摘する」です。
虐待親でも、子育ての何もかもが失敗していたわけではありません。できていることもたくさんあります。
例えば、
・きちんと3食の食事を与えていた
・しかも栄養バランスは整っていた
・子どもへの愛情は深い
・家の中は整理整頓されている
などなどなど・・・。
「こんなの当たり前じゃん」と思われるかもしれませんが、児童相談所は、本当にひどいネグレクト家庭をたくさん見ているので、全くもって「当たり前」ではありません。
子どもを育てながら、きちんと3食バランスの良い食事を用意することが、どれだけ大変なことでしょうか。
ひとりで暮らしていても、バランスの良い食事を用意するのは難しいです。
3食きちんと与えて、子どもが身体的に成長している。それが「強み」でないはずがありません。
こういう形で、「できていること」をきちんと指摘するのが、とっても大切です。
先ほど説明したように、虐待した親は、自分が虐待によって子どもを傷つけたことを自覚すると、大きく傷つきます。
傷ついた親は、自分の悪いところばかりが目についてしまいます。そうすると、子育ての何もかもがダメだったと「勘違い」してしまいます。
そんなことないのに。
こういった「自分は何もかもダメダメ」という思考は、家庭環境の改善を妨げてしまいます。
何もかもがダメだと考えると、どこから家庭環境を改善すればいいかわからなくなります。
何もかもがダメだったから虐待が起きたのではありません。
できていることとできていないことがあったのです。
それは、全部親の問題だったかというと、そうでもないことも多く、子どもに課題があることもあります。
親のできていないことと、子どもの課題が、ビミョウに少しずつ歯車が狂って、それが少しずつ蓄積した結果、「虐待」として表出してしまった。
それが「虐待」という現象の解像度を上げた姿です。
「虐待」という形で、子育てのほころびが表面化してしまったのは、決して肯定できることではありません。
しかし、虐待が再発しないように家庭環境を改善することはできます。
改善するときは、きちんと、できていることに目を向け、尊重します。そのうえで、できていないことを、どのように改善すればいいのか考え、そして、その目標にはどうやって到達できるのか考えます。
これって、結局、「親を支える」ことです。児相って、親子関係の再構築をお手伝いする役割を果たしていて、その過程で、親も子も、自分の中の傷つきを自覚してしまうことが多いです。
その「傷つき自覚」を支え、なるべく良い方向に向かうようサポートする。
だから、児相って、結構優しいんです。親と子を分離するような恐ろしい側面もありますが、親子関係が改善してほしいと職員全員が思っていて、で、親子関係の改善には、「できていることを認め、尊重する」が不可欠なんです。
だから、児相って必然的に優しくなってしまうんです。構造的に、優しくならざるをえない。優しくないと業務が進んでいかないのです。
良い機関で働けていて幸せです。
それではまた明日!・・・↓
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