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弁護士の僕ならこうやって遺産相続を進めます-9(不動産をお金に変えるためには)
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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。
僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。
ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。
あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。
ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。
【 今日のトピック:遺産相続 】
さて、今日で9日目ですが、引き続き、遺産相続についてお話していきます。
昨日までの3日間にわたって、僕だったら、遺産に不動産が含まれる場合、その不動産は売却してお金に変えてそのお金を分けます、ということを説明してきました。
その理由はいろいろと説明してきましたが、あとひとつ付け加えるなら、「お金のほうが分けやすい」ですかね。
不動産を不動産のまま分けるのは、結構難しいですが、お金になっちゃえば、1円単位で細かく分けることも可能です。
このこともあって、不動産の「所有権」に興味がない僕は、お金に変えちゃおうと思ってしまいます。
東京都心ど真ん中の土地であれば、その土地は未来永劫お金を生み続けるので、それ売って、「いくらでも手に入る〝お金″」に変えちゃうのはもったいないと思いますが、そうでなければ、お金に変えちゃいます。
僕なら、ですが。
「お金に変える」と、僕は何度も繰り返していますが、不動産をお金に変えるには、基本的に、相続人全員の同意が必要です。
今回の設定では、僕の父が亡くなり、相続人は妻(僕の母)と息子(僕)と娘2人(僕の妹2人)でした。
昨日もお話ししましたが、死んだ人名義のままでは売れないので、生きている人の名義に変える必要があるのですが、そのためには、相続人全員の実印が必要です。
不動産を売却するのに反対の相続人が1人でもいれば、不動産の名義が死んだ人のままとなり、売れません。
ただ、実は、相続人全員の実印がなくても、不動産を法定相続分で共有名義にすることはできます。
今回の設定で言えば、僕の母が2分の1,子ども3人それぞれが6分の1ずつの共有名義であれば、僕が1人で申請して、死んだ父の名義から、生きている人の名義(↑に書いた、4人の共有名義)に変更することができます。
しかし、生きている人の名義に変わったからといって、売れるわけではありません。
昨日も書きましたが、「売る」とは、「お金と引き換えに不動産の名義を買主に変える」ということです。そして、名義を変えるには、名義人の実印と印鑑証明書が不可欠です。
そうすると、例えば、母が売却に反対して、実印を押してくれなかったり、印鑑証明書を渡してくれなかったりしたら、母の共有部分だけ名義を買主に変えられません。
そういった「一部の名義を変更できない」不動産なんて誰も買わないので、結局、母が反対したら、不動産を売ることはできなくなってしまいます。
こんな感じで、不動産を売却してお金に変えようにも、相続人の誰かが反対すると、売ることはできなくなってしまいます。
じゃあ、そういう場合、どうするか。
ここを、今日は書いていきます。
相続人の間で、「売りたい」派と「売りたくない」派に分かれている場合に、どうやって「売る」のか。
正直にいえば、法的に無理やり不動産を売却する方法はありません。
こうやって、遺産分割の方法に対立がある場合、どうするかというと、「遺産分割調停」を家庭裁判所に申し立てます。
申し立てるのは、相続人なら誰でもいいです。僕1人が申立人となって申し立ててもいいですし、妹2人と合わせて3人が申立人となってもいいです。
申立人とならなかった残りの相続人は、調停では「相手方」として扱われます。
この「遺産分割調停」を提起すれば、不動産の売却を実現できるかというと、そうではありません。
「遺産分割調停」は、あくまで、話し合いの場を裁判所に移しただけで、調停を提起するまでの話し合いと、やっていることは一緒です。
ただ、調停を提起すると、調停委員が中立的な立場として関与し、話し合いを取り持ってくれるので、話し合いが進みやすくなる効果は期待できます。
とはいえ、「売却したい派」と「売却したくない派」の対立が解消される保証はありません。僕は売却したほうがいいと考えていても、例えば、母が「どうしても売却したくない」と最後まで言い続ければ、話し合いは決裂します。
話し合いが決裂すると、調停は「不成立」となり、「遺産分割審判」に移行します。
「遺産分割審判」では、「遺産分割調停」とは異なり、話し合いで遺産の分配について決めるのではなく、裁判所が「えいや!」と遺産の分け方を決めます。
ただ、「審判」では、「売ってお金に変えて分ける」という方法は、あまり採用されません。
「審判」では、↓の順番で、分け方が決まります。
①現物分割(現物を物理的に分ける)
②代償分割(誰か1人が単独で取得して、残りの相続人は代償金をもらう)
③換価分割(売ってお金に変えて分ける)
つまり、「売ってお金に変えて分ける」を実現できるのは、「現物を物理的に分ける」のもムリで、「誰か1人が単独で不動産を取得して、その代わり、他の相続人には代償金を払う」という方法もムリだ、という場面に限られます(「代償金」については後で説明します)。
例えば、母が、「売るのは絶対に反対です!」と言って、「私が単独で取得して、ほかの相続人には代償金を払います!お金もちゃんとあります!」と主張したら、ほぼほぼ、「売って分ける」という僕の希望は叶わなくなります。
残念ながら。
しかし、「審判」まで移行してしまうと、「売る」は、「競売」になってしまうことが多いです。「競売」とは、裁判所が情報を公開して、買い手を見つけることですが、この「競売」だと、値段はガクンと下がります。
まともな値段では誰も買ってくれないんです。
「なんか問題がある物件だから、競売にかけられたんだろうな」と思われてしまうからです。
だから、僕なら、「審判」までこじれたら、「売って分ける」は諦めます。誰かが単独で貰って、貰った人が他の相続人に代償金を払うという「代償分割」のほうが、「売って分ける」よりもマシだからです。
「そんなに不動産が欲しいなら、どうぞ。その代わり、きちんと代償金もらいますからね」というスタンスです。
そうなると、話し合いの段階から、「どうしても売りたくない」という相続人がいるのであれば、「売って分ける」という方法は、どこかで諦めるかもしれません。
最終的な「審判」では、認められる可能性が低いからです。
そうすると、「誰が不動産を貰うのか」「代償金はいくら払うのか」という話し合いを進めることになるでしょう。
しかし、この場合、必ず、「代償金はいくなの?」が問題になります。つまり、不動産の金額に争いが出てくるわけです。
例えば、今回の設定で、6000万円の不動産を母が単独で取得し、子ども3人に代償金を払うということになると、母は、子ども1人あたり1000万円ずつ支払うことになります。
しかし、母は、「6000万円なんて高すぎるわ。3000万円くらいよ」と主張するかもしれません。母としては、不動産の価格が3000万円であれば、支払う代償金は、子ども3人にそれぞれ500万円になります。
でも、子ども3人としては、「いやいや、6000万円のはずだ!」と主張しますよね。そのほうが、子どもたちにとって有利だからです。
こういって、不動産の金額に争いが出るのはよくあります。
こういう争いが出るなら、「誰か取得して代償金を払う」のではなく、「売って分けましょうよ」と説得します、僕なら。
売ってしまえば、不動産の金額が1つに決まるので、金額に争いは出てこないからです。
こういう感じで、「売って分けようよ」と説得する方法はありますが、とはいえ、強制的に売却を実現することはできません。
このことを、今日は強調しておきます。
それではまた明日!・・・↓
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