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不倫の慰謝料を請求されたら-21(なんとか終わりました)

【 自己紹介 】

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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。

僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。

ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。

あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。

ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。

【 今日のトピック:不倫の慰謝料を請求されたら 】

今日も引き続き、不倫の慰謝料を請求されたケースについてお話していきます。

さて、昨日は、いよいよ、交渉の最終段階となりました。

これまでずっと書面でやり取りしていましたが、やっぱり、最後の最後って、書面じゃないことが多いです。

最後の最後に、「えいや!」と交渉を成立させる(または決裂させる)のは、電話で直接話して声を聞いてすることが多いです。

書面だけじゃ、相手の腹の中が読みきれなかったり、逆に、こちらの落とし所も正確に伝わっていなかったりします。

そして何よりも、書面で交渉すると、交渉途中の書面が残ってしまいます。基本的には、やり取りの痕跡は残したほうがいいんですが、最後の最後は、これがよくないこともあります。

書面では残せない、微妙なやり取りは、やっぱり、電話でするに限ります。

交渉は、正論だけでは成り立たないことがやっぱりあるんです。

正論だけでは成り立たないという、現実主義的な観点がどうしても必要になってきます。

密約を結ぶなんてことはまずありませんが(仮に密約を結んだとしても、それを後で立証できないので無意味です。約束は全て書面化し、書かれていないことは約束していないことになります。)、とはいえ、書面に残せない微妙なやり取りをすることはあります。

例えば、依頼者からオッケーをもらっていない金額を提示して、それを受け入れられるかどうか探りを入れるのは、書面じゃ不都合です。

依頼者本人からオッケーもらっていない金額を、書面に残る形で提示したくはありません。

「あくまで口頭で提示しただけ」という言い訳を残しておきたいんです。すみません、弁護士ってそういう生き物なんです。とにかく、依頼者との間で揉め事を起こしたくありません。

弁護士としては、依頼者の利益を最大化しようとしているんですが、弁護士と依頼者本人の認識が食い違っていることはよくあります。

「なんでオッケーしていないのにその金額を提示したんですか!」という争いを抱えたくはありません。

ただ、先に金額を提示しておいて、「この金額でオッケーしてくれるなら、こちらも本人を説得します」という進め方はよくやります。

この進め方は、結構神経を使いながら、話す口調にも気を使いますので、書面じゃなかなか難しいです。

今回の設定でも、相手(=夫)の弁護士も、この手法を使ったんだと思います。

夫の弁護士は、僕に対して「50万円でどうですか?」と電話で提案してきました。

これはおそらく、夫本人の了承を得ていないでしょう。

だから、「50万円でどうですか?」と聞かれた際に、「それは本人の了承を得た金額ですか?」と聞き返してもよかったかもしれません。

ただ、僕は、本人の了承を得ていようがいまいが、50万円はイヤだったので、「それは高すぎます」と突っぱねました。

まあ、正直なところ、「50万円でどうですか?」という夫の弁護士からの提案に対し、「夫本人が50万円を了承するなら、それを条件に、こちらも50万円を了承します」という言い方もアリっちゃありです。

僕は35万円を上限としていましたので、今回の僕の気持ちを前提にすると、50万円は完全にナシなんですが、「裁判めんどくさい」とか「もう早く終わらせたい」と思う場合は、こういう言い方をしてもいいかもしれません。

とはいえ、大切なのは、相手から「50万円でどうですか?」と言ってきたわけですから、後日「55万円ならどうですか?」という誘いには乗らないことです。

これは、相手の言っていることがめちゃくちゃです。50万円を言い出したのは相手なのに、それを自ら覆すなんて、そんな人と約束することはできません。

この場合はむしろ、交渉を突っぱねて裁判で決着をつけたほうがいいでしょう。

「言っていることがめちゃくちゃ」ですから、交渉をつっぱねる理由もあります。

交渉の段階で言っていることが二転三転する人と約束しても、後で約束を覆される可能性がある。だから、交渉や話し合いではなく、裁判で決着をつけたい。

こういう理由が成り立ちます。そして、実際問題、こんな人と書面で約束したところで、後でまた難癖をつけられる可能性もあるので、あんまり約束にメリットはありません。

さて、少し話がそれましたが、昨日書いたように、交渉は最終段階となり、「50万円でどうですか?」という夫の弁護士からの提案に対し、「35万円が上限です」と言い切りました。

この電話から数日後、相手の弁護士から電話が来ました。

「35万円でオッケーです。名目も慰謝料ではなく解決金で構いません」

おお、やりました!

「ただ、条件が1つあって、もう二度と妻と会わない・連絡をとらないと約束してください」

こういった「接触禁止」は、不倫の合意書でよく取り交わします。僕も、この妻とは自然消滅を狙っていましたから、この条件はもちろん受け入れました。

「わかりました。じゃあ、解決金35万円を支払い、かつ、妻と僕が今後一切接触しないという内容で、合意書を作ってもらえませんか?」

交渉は、最後にかならず書面化します。今回は、夫に弁護士がついているので、その弁護士に作成してもらえばよいでしょう。

「わかりました。支払期限は今日から1ヶ月後でいいですか?」

「それでいいです。振込先口座も合意書に記載しといてください。」

「わかりました。1週間くらいで郵送できると思います」

「よろしくお願いします」

1週間後、弁護士から合意書が送られてきました。

この合意書は、すぐに署名押印しちゃダメです。必ず、弁護士に見てもらいましょう。合意書をチェックするという依頼も弁護士は受け付けています。

また、今回とは違って、どちらにも弁護士がついていない場合は、必ず、弁護士に依頼して合意書を作成してもらいましょう。

作成を依頼するのは、普通は、お金を払う方です。今回の例で言えば、僕です。

一般的にいえば、お金を払う方がリスクを負うからです。

間違っても、署名押印した後に相談しないでください。本当にお願いします(汗)。

署名押印しちゃうと、後で「ここは不利だった!」なんて言い訳は通用しなくなります。

さて、不倫については今日で終わることにして、明日からは遺言についてお話しようと思います。

今回は、交渉をつっぱねた結果、僕の要求が通った形で幕を下ろしました。

ただ、交渉をつっぱねるのは、当然ながら、訴訟のリスクを引き上げます。

とはいえ、円満な紛争解決のために、何でもかんでも譲歩すればいいわけじゃありません。

法的な結論や、予想される紛争の顛末をしっかり見据えて、それを踏まえ、必要な分だけ譲歩しなきゃいけません。

だから、交渉って、裁判じゃないけれども、弁護士を使うべき場面だと僕は思います。

交渉って、「裁判になったらどうなるか」「法的にはどういう結論になるか」をしっかりと頭においておかないと、適切には進められないからです。

今日まで長期間にわたってご覧くださった方々、ありがとうございました。

明日からテーマを変えますが、引き続きよろしくお願いします。

それではまた明日!・・・↓

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