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生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律

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このブログでは、2019年7月にうつ病を発症し、それをきっかけに同年12月からブログを始めて、それ以降、700日以上毎日ブログ更新してきた、しがないサラリーマン弁護士である僕が、日々考えていることを綴っています。

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【 今日のトピック:法律 】

タイトルに書いた法律を今日発見したので、少し書いてみます。

法律名がめちゃくちゃ長いですが、中身はそんなに長くありません。

この法律が、結局何を書いているのかというと、↓の2つです。

①出産した女性と卵子提供者が違う場合→出産した女性が法的な実母となる。

②妻が夫の同意を得て、夫以外の精子を使った生殖補助医療によって妊娠・出産した場合、夫は自分の子どもであることを否定できない。

①は、分娩した女性が法的に母親となる、という最高裁のルールを法律に書いただけです。

最高裁は、代理母、つまり、卵子提供者と分娩した女性が異なる場合に、卵子提供者ではなく、出産した女性が法的な母親であると明確に示しました。

その結果、この日本において、「実母」とは、卵子提供者ではなく、自分のお腹を痛めて出産した女性を意味することが確定しました。

代理母だろうが何だろうが、一切の例外を認めていません。

まあ、わかりやすいという意味では、良いルールなんですが、代理母の場合に、問題が顕在化します。

代理母というのは、いわば、「子宮を貸してあげる」「あなたの代わりに私の子宮を使ってあなたの卵子から大きくなった子どもを妊娠出産してあげる」という話で、出産した女性は、生まれた子どもの母親になることは予定していません。

「子宮を貸してあげる」なんて、文字にしたら非常にグロテスクなんですが、まあ、物理的に不可能な話ではありません。

この代理母の場合であっても、生まれた子どもの母は、卵子提供者ではなく、分娩した女性です。

確かに、卵子提供者が法的な実母になることを認めると、「子宮を貸してあげる」という代理母制度を最高裁が認めることになるわけで、それを最高裁が躊躇したのも理解できます。

代理母制度を認めるかどうかは、最高裁ではなく、国会が決めることなのでしょう。

この最高裁の判断を前提とすると、日本で代理母を引き受ける女性はまずいないでしょう。

むしろ、自分の卵子じゃなくても、自分が分娩すれば、法的に実母として認められるわけですから、子どもがほしいけれど自分の卵子では妊娠・出産できない人が、他人の卵子でもいいから妊娠・出産したい、というのを後押しすると思います。

で、↑の①は、この最高裁の判断を踏まえた、当然の帰結を書いたことになります。

そして、②ですが、これを説明するためには、嫡出推定から説明しなきゃいけません。

結婚している女性が出産した子どもは、出生届を出すと自動的に父の欄に夫の名前が書かれるのですが(独身女性が産んだ子どもの父の欄は空欄となり、認知の届け出があれば認知した男性の名前で父の欄が埋まりますが、認知がなければずっと空欄のままです)、結婚しているとはいえ、妻が夫の子どもしか出産できなくなるわけではなく、生物学的には、夫以外の男性の子どもを出産することができます。

で、生物学的には夫以外の男性の子どもなのに、自動的に父の欄が夫で埋まってしまうせいで、生物学的には間違った戸籍が出来上がってしまうことがあって、その間違いを正すのが「嫡出否認」という制度です。

夫としては、生物学的に自分の子どもではないのなら、法的な父子関係も否定したいと思うのが普通なので、その手段が「嫡出否認」という名前で用意されているわけです。

生物学的な父子関係とは違う父子関係が戸籍上登録されてしまっている場合に、夫が、自分との父子関係を否定する手続きが嫡出否認で、嫡出否認が認められると、子どもの戸籍の父欄は空欄になります。

その欄を埋めるためには、生物学上の父親に認知届を出してもらうか、子どもが認知の訴えを提起して判決をもらうしかありません。それまではずっと、父欄は空欄のままです。

で、妻が不倫して、不倫相手の子を妊娠した場合に、夫が嫡出否認によって父子関係を否定するのはごもっともなんですが、生殖補助医療によって妻が妊娠・出産した場合も、妻が不倫した場合と同様に、夫が嫡出否認していいの?という問題意識があったようです。

生殖補助医療も、妻が、夫以外の男性の精子で子を妊娠・出産したという意味では、妻が不倫した場合と同じです(非常に言い方は悪いですが)。

この場合も、夫は嫡出否認できるのが原則なんですが、しかし、夫が生殖補助医療に同意している場合にも、嫡出否認ができるのはよくないよね、というのが↑の②です。

夫も同意の上で、生殖補助医療によって妻が夫以外の男性から精子提供を受けて子どもを妊娠したのですから、生物学的には、夫が実父ではなくなってしまうのは、夫も了解済みだったはずです。

にもかかわらず、夫が父子関係を否定するのは、話が違いますよね。

まあ、夫が同意していたとしても、生物学的な父子関係と法的な父子関係を一致させるべきと考えて、夫の嫡出否認を認めるという選択肢もあり得たとは思いますが、そうはせずに、夫が妻の生殖補助医療に同意している場合は、生物学的な父子関係と法的な父子関係の食い違いを夫が是正することは永久に不可能としました。

なるほど。勉強になりました。

じゃあ、子どもが父子関係を否定したくなったらどうするか、という話があるんですが、これは、今まで通り、「推定の及ばない子」に該当するかどうかがキーになると思います。

「推定の及ばない子」については、このブログでも何度か書いているので、このブログを「推定の及ばない子」で検索してみてください。

それではまた明日!・・・↓

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