思い込まない。想像して確認する。
【 自己紹介 】
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このブログでは、2019年7月にうつ病を発症し、それをきっかけに同年12月からブログを始めて、それ以降、700日以上毎日ブログ更新してきた、しがないサラリーマン弁護士である僕が、日々考えていることを綴っています。
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【 今日のトピック:事実 】
弁護士という職業は、法的知識が求められます。
僕がわざわざ言うまでもありません。
しかし、弁護士って、法的知識を知っていることだけに価値があるかというと、そうではありません。
そもそも、法的知識だけで役立つことはありません。
例えば、今年の4月1日から、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられますが、この法的知識だけ知っていても、何の役にも立ちません。
ちょっと意味がわからないかもしれませんが、法的知識というのは、事実に当てはめて初めて意味を持つのです。
目の前にいる人が、何歳なのかという事実を確定し、その事実に「成人年齢は18歳」という法的知識を当てはめることで、法的知識は役立つわけです。
未成年だと、親の同意なく結んだ契約を取り消すことができますが、何月何日に契約したのか、その契約がどんな契約なのか、そんな事実を1つ1つ確定していかないと、せっかくの法的知識も無意味です。
契約を結んだ当時に未成年であれば、成人になった後でも、契約を取り消せますが、そのためには、生年月日を特定し、契約を結んだ日を特定して、その後に、法的知識を当てはめるわけです。
生年月日を特定するのも、契約を結んだ日を特定するのも簡単に思えるかもしれませんが、実はそうじゃないんです。
契約書が必ず作られるわけではありません。そして、約束すれば、何でもかんでも、法的に「契約」として評価されるわけではなく、法的に「契約」として評価できるだけの確定的な合意があるかどうかで、「契約」かどうかが左右されます。
契約=確定的な合意、というのも法的知識ですが、こんな知識は、あってないようなもんです。
確定的な合意があったかどうかは、誰かが決めてくれるわけではありません。
どんな事実があったかどうか、1つ1つ確認しなきゃいけません。
例えば、徳洲会が猪瀬直樹に対して現金5000万円を渡しているとしましょう。徳洲会は「貸した(後日返済してもらう約束)」と主張していて、猪瀬直樹は「もらった(返す必要はない)」と主張しているとしましょう。
(あくまでたとえ話です)
これって、法的知識としては、貸したのであれば返さなきゃいけないし、もらったのであれば返さなくていいという、なんともまあ単純な話です。
こんな単純な法的知識は、借りたかもらったかが争われている紛争では、何の役にも立ちません。
借りたかもらったかという「事実」を確定することが、紛争の解決につながります。
で、世の中の紛争のほとんどは、こういった事実に争いがあるだけのものがほとんどです。
そして「事実」って、「実際に起きたこと」という意味ではあるんですが、往々にして、見る人によって目の前の「事実」は異なります。
「真実はいつもひとつ!」のはずなんですが、どうも、人によって「真実」が違ってきてしまいます。
それはおいといて、とにかく、ほとんどの紛争では事実関係のみが争いになっています(借りたのかもらったのかなど)。
で、「事実」というのは、当事者本人がもっともよく知っているのですが、とはいえ、当事者にただ語らせていれば真相がつかめるかというと、そうじゃありません。
こちらから質問を投げかけないと、真相に迫ることはできません。
ただただ、当事者の言うことを聞くだけでは、「思い込み」になります。
たとえば、「間違いなく、あの5000万円は、返してもらう約束でした。」という徳洲会の言葉を信じるだけでは、それは、ただの思い込みです。
その言い分に対して質問して、信用性を確かめる必要があります。
で、質問は、質問を生み出す定式が何かしらあるわけではありません。質問の源は、豊かな想像力です。
5000万円を貸した、という出来事を想像してみてください。しかも、現金で5000万円です。
5000万円もの現金、引き出すだけでも大変です。金庫に保管していたとしても、それだけの現金を金庫に置いとくなんて普通じゃありません。
5000万円もの現金をどうやって用意したのか、そこをまず質問しなきゃいけません。現金5000万円が現に存在するという事実を起点に想像すれば、自然とこういった質問は出てきます。
あと、メインの「貸した」という話ですが、貸したのであれば、当然、返してもらうことが前提ですから、返済期限や返し方についても約束しているはずです。
5000万円を一括で1年以内に返済するとか、毎月100万円ずつ50回にわたって返済するとか、返済の方法も、現金で渡すのか振り込みなのか、現金で渡すのであれば、徳洲会が猪瀬直樹宅へ集金に行くのか、逆に猪瀬直樹が徳洲会の事務所へ現金を持っていくのか、振り込みなら、どの口座に振り込むのか。
少し想像すれば、こういった疑問がすぐ湧いてきます。
こういった想像を膨らませて、質問を重ねていく。これが、弁護士の力量です。
事実関係のみが争いになっている紛争がほとんどであることを考えると、事実関係を把握するスキルは、弁護士の力量のうちかなりの部分を占めていると言っていいでしょう。
法的知識よりも、事実を把握し、事案を見通す能力こそ、弁護士の良し悪しを決めると言っても過言ではありません。
思い込まずに、想像する。想像して質問し、確認する。
弁護士は、こういった作業を日々繰り返す仕事で、そのせいで、事実を見る目(悪い言い方をすれば、言い分に裏付けがあるかどうかを逐一確認し、裏が取れなければ、アヤシイと思ってしまう)が否が応でも育ってしまうのです。
僕は、この世界をとてもおもしろいと思っているので、事実を探究できる弁護士の仕事は好きです。
それではまた明日!・・・↓
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