子育てに疲れたら-20(子どものチカラ)
【 自己紹介 】
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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。
僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。
ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。
あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。
ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。
【 今日のトピック:子育て支援 】
さて、今日まで20日にわたって子育て支援についてお送りしてきましたが、今日は、児相での弁護士の役割はなるべく限定した方がいいというか、まだまだ自分がど素人であることを痛感したので、それを書いてみようかと思います。
さて、児童相談所に弁護士を配置することは、児童福祉法に明記されるほど、国(厚労省)が推し進めているようです。
僕も、着任当初から、児相の業務は弁護士がいたほうがいいなという思いを抱くようになりました。
児相の権限は、強力だからこそ、きちんと法律で縛り付けておく必要があって、だからこそ、縛り付けるための法律をきちんと理解するために弁護士の能力が必要とされるのと同時に、問題となっている子どもについて、だれが親権者なのか、だれが扶養義務者なのかということの特定も、弁護士でなければなかなか厳しく、この点でも弁護士を配置する必要性は高いと思います。
親権者の特定や扶養義務者の特定は、今となっては、インターネットで調べたりすればすぐに出てくるのでしょうけど、ただ、そのサイトにのっていないケースになると、話は変わってきます。
親権者が誰か、扶養義務者が誰かは、民法をきちんと読めていないと決められません。
例えば、兄弟姉妹には扶養義務があるけれどもいとこには扶養義務がないとか、覚えるのは簡単ですが、その根拠は「民法にそう書いてあるから」という一点のみで、こういった、「法律にどう書いてあるか」の判断は、弁護士以外には結構難しいと思います。
まあ、そもそも、六法を広げて民法の中から該当条文を探し出すのも、弁護士以外では難しいと思います。これは別に、自慢しているわけではなく、「餅は餅屋」という単純な話で、僕ら弁護士は、分厚い六法を広げて条文を読むことに慣れているどころか、それでお金を貰っているわけですから、本当に、何の労も厭わず(というか、六法を広げることを弁護士が厭うことはありません)、六法をスラスラスラ~と広げて、スラスラスラ~と該当条文にたどり着きます。
まあ、こういった該当条文を探し出すのは、インターネットで検索すればいいのかもしれませんが、条文にたどり着いたとして、その条文をきちんと読めるかというのは別問題です。
「きちんと読めるか」というのは、「関連した条文や判例もすぐに頭に浮かぶか」ということです。
例えば、未成年は親の親権に服するわけですが、この「親」って誰かとか、結婚している最中に生まれたこの親権者はどうなるかとか、認知した親は親権者になるのかとか、そういうのって、全部民法だったり最高裁の判決だったりに書かれているわけですが、それを全部調べていると、途方もない時間がかかります。
なおかつ、「これで全部網羅しているか?」という疑問がぬぐえず、結論を言えなくなってしまいます。
例えば、養子は養親の親権に服するという風に民法には書かれていますが、そうすると、女性が再婚して、連れ子と再婚相手が養子縁組した場合、その子どもは再婚相手だけが親権者になりそうですが(例えば、孫が祖父の養子になった場合、親権者は父母から祖父に変更されます)、これは、最高裁で妻と再婚相手の共同親権になると結論付けられています。
これって、怖いですよね?だって、養子は養親だけの親権に服するはずなのに、養子縁組したのが親の再婚相手なら、養親と実親の共同親権に服することになってしまうなんて、条文と違うからです。条文なんて全然信じられなくなってしまいそうです。
でも、法律の仕事って、「法的な結論」を求められます。条文を知っているだけでは「法的な結論」は導けず、あらゆる知識を踏まえて「結論」を導く必要があります。
つまり、「法的な結論」を導くためには、知識の見落としが1つでもあったらダメなんです。
じゃあ、弁護士は、あらゆる知識を網羅的に知り尽くしているかというと、そうではなくって、知識の見落としが(一応)1つもない状態に持っていけることが、ほかにはない卓越した能力だと思います。
弁護士も仕事をしてその対価としてお金を得て生活しているわけですから、時間は限られています。永久に1つのことを調べるわけにはいきません。限られた時間で法的な結論を導かなきゃいけなくて、そのためには、知識の見落としが(一応)1つもない状態に持っていかなきゃいけません。
それを日々繰り返して、どんどん精度が上がっていくのが弁護士という仕事で(まあ、繰り返すうちになーなーになって勉強をおそろかにする弁護士も多いと思います。これは弁護士業界に限りませんが・・・)、やっぱり、他の追随を許さないのかなとは思います。
こんな感じで、法的なノウハウについて精度があがっていくんですが、ほかの分野はど素人のままです。
今日それを痛感したのが、「子どものチカラ」という考え方です。
児相は、当たり前ですが、「子どもにとって何がベストか」を考えていて、それを僕も頭に入れていたつもりですが、やっぱり、考える精度が非常に甘い。
「子どもにとって何がベストなのか」を考えるとき、僕は無意識に、子どもを「保護する対象」と考えてしまっていました。
「子どもにとって何がベストなのか」を考えなきゃいけないのに、「子どもをどうやって守るか」ということばかり考えていました。
「子どもにとってのベスト」と「子どもを守る」は、必ずしもイコールではなくって、それを今日、「子どものチカラ」という考え方を聞いて学びました。僕は本当に心から反省しなければなりません。
昨日のブログでも書きましたが、児相が手続きを進めるうえで、親権者の同意が必要となる場面がたくさん登場します。法的に同意がないと進められないということもありますが、子どもが家庭復帰を目指すとなると、親が児相の進め方に納得感を持っているかどうかがとても大切なんです。
「子どもは親元で育つべき」という、児相の根底にある思想を踏まえれば、親が児相のやり方に納得感を持って進めないと、家庭復帰という目標が遠のいてしまうのです。
僕もここまでは理解していたんですが、「親の納得感」を獲得する手段として、僕は、「説得する」しか頭になかったんです。わかりやすい言葉で、懇切丁寧に説明する。そればかり頭にありました。
もちろん、その説明の仕方も、日々、児相の職員の皆さんから学ばせてもらっているところではあるんですが、僕には、完全に「子どもと親が話す」という視点が抜け落ちていました。
虐待を受けた子どもであっても、家庭復帰を目指すことは多いです。虐待を受けているにもかかわらず、親を求める気持ちが大きい子どもは本当にたくさんいます。
それを「間違っている」と切り捨てるのは簡単ですが、それが本当に子どもにとってベストなのでしょうか。
子どもの成長にとって、虐待親と話をして、虐待を乗り越え、親子関係を再構築し、家庭に復帰することは、非常に大きな成功体験となります。
もちろん、親と子が直接対面する場面を設定するためには、いろいろと段階を踏む必要はあると思いますが、昨日までの僕の考え(「子どもは守る対象でしかない」)だと、虐待児の10年後・20年後を見据えた場合に、とても大切で貴重な成功体験を最初から奪ってしまいます。
子どもだって、大きなチカラを内に秘めているのです。僕は子どもだから侮っていました。なめていたんです、子どもを。
なんとまあ、愚かで稚拙で手前勝手なんでしょう。
子どもの言葉は、親にとって、どれだけ僕らが言葉を尽くすよりも重たく響きます。それがまさしく、「子どものチカラ」で、そのチカラを発揮した結果、虐待を乗り越えたら、それは、人生においてかけがえのない成功体験として子どもの心に刻まれるでしょう。
今日の僕は、大反省でした。昨日までの僕が非常に甘かった。
自分の甘さを素直に受け止めようと思います。だからといって委縮することなく、明日からも、職員の皆さんの胸を借りまくろうとは思います。
大変ご迷惑をおかけしますが、僕の話がたたき台として、皆さんが自分の見解を整理する良い機会となればいいなと勝手に思っています。
さて、このテーマは今日で終わりにして、明日からは、ブログ自体を変えようかなと思っています。
それではまた明日!・・・↓
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