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交通事故の被害にあった場合に弁護士の僕ならどうするか-22(損害の内訳を訴状に書く)

【 自己紹介 】

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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。

僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。

ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。

あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。

ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。

【 今日のトピック:交通事故 】

昨日に引き続き交通事故について書いていきます。

さて、昨日から、損害額の内訳について説明しています。

僕は、損害賠償を請求するために訴訟を提起しました(設定の中の話です)。

訴訟を提起する=訴状を裁判所に提出する、ということです。

(まあ、収入印紙や郵便切手も一緒に提出しないと訴状を受け付けてもらえないので、完全にイコールではないかもしれませんが、僕は、弁護士費用特約を使っていて、その辺の手続きは弁護士に任せています。印紙代や郵便切手代も含めて、弁護士費用特約の範囲内なので、僕が加入する自動車保険の保険会社(損保ジャパン)が支払ってくれます。いやぁ、本当に弁護士費用特約は便利です。)

提出する訴状には、損害の内訳を書かなければいけません。

そもそも、訴状には、「請求の趣旨」と「請求の原因」を記載する必要があり、この2つのどちらかが欠けていると、訴状の訂正が裁判所から命じられます。訂正に応じないと、「訴状却下」といって、そもそも裁判が始まらないまま訴訟が終わってしまいます。

かなり難しい話ですが、「請求の原因」も2つに分けられていて、「請求を特定する事実」と「請求を理由付ける事実」の2つがあります。

弁護士たちは、こんなことも知っているんですね。すごいです、我ながら。(なんか、あえて複雑にしている感じもしますが・・・。)

この2つは、結構厳密に区別しなきゃいけないと僕は思っています。というのも、「請求を特定する事実」が欠けている場合は、先ほど書いたような訴状却下となってしまいますが、「請求を理由付ける事実」が欠けていても、訴状却下とはならないからです。

「請求を特定する事実」が欠けていると、請求が特定できていないので、裁判所は何を判断の対象にすればいいのか理解できず、訴訟を始めようがありません。だから、そもそも訴訟を始めないのです。

これに対し、「請求を理由付ける事実」が欠けていても、訴状却下とはなりません。

ただ、請求権を発生させるための事実が不足しているので、そのままでは、裁判所は請求権の発生を認めることができません。その結果、請求棄却となってしまいます。

裁判は始まるけれども、請求棄却判決(敗訴判決)が出るわけです。

まあ、普通はこんなこといちいち考えている弁護士も裁判官もいませんが、一応、概念的には区別されていて、「請求の原因」を書く場合は、この2つをどちらもきちんと書かないといけません。

どちらかが欠けると、いずれにせよ、敗訴してしまうからです。

具体例をあげると、例えば、僕が訴状に交通事故の日時や場所を書いていない場合、それは、「請求を特定する事実」が欠けていることになってしまうと思います。

僕は、相手の過失によって発生した交通事故が原因で損害を被ったという理由で損害賠償を請求しているわけですが、これだけだと、交通事故の当事者が誰なのかしかわかりません。

まあ、この当事者同士で起きた交通事故は、この1件だけでしょうから、当事者だけ特定できていれば、「請求を特定する事実」として十分かもしれませんが、「この当事者同士で起きた交通事故がこの1件だけ」かどうかは、訴状だけからはわかりません。

だから、日時や場所を限定しないと、交通事故の特定として不十分です。そう考えると、交通事故の日時や場所をきちんと書かないと、「請求を特定する事実」が欠けているという理由で、裁判所から訂正を命じられ、どうしても、訂正できなければ訴状却下となってしまいます。

で、「請求を理由付ける事実」の話になりますが、今回の訴状だと、相手にどんな過失があっただとか(前方不注視や操作ミスなど)、そういったことを書かなきゃいけないんですが、損害額も書かなきゃいけないんです。

僕が被った損害を、お金に換算したものが「損害額」です。これを書かなきゃいけません。「請求を理由付ける事実」なので。

「請求の趣旨」について話が遅れましたが、これは、例えば、「被告は、原告に対し、1000万円払え」というふうに、この裁判で求めている結論をシンプルに書いたものです。

この「請求の趣旨」を導くための理由こそ、「請求を理由付ける事実」なんですが、こう考えると、損害額は、当然「請求を理由付ける事実」なんです。

「原告」は僕で、「被告」は加害車両を運転していた運転手なんですが、その人に対して、請求の趣旨で書いた金額を請求しているわけですが、その金額の根拠(理由)は、当然必要です。

ただ、総額だけでは足りません。昨日書きましたが、交通事故では、治療費や慰謝料など、いろんな損害項目を請求できますが、この内訳も何も書かないと、何の支払いを求めているのかわかりません。

治療費も慰謝料も合算した後の総額だけ書かれても、金額の根拠(理由)として不十分です。

だから、内訳を書く必要があって、各項目ごとに、金額とその金額を請求する理由を記載して、結局、各項目の金額を合算すると、総額いくらになるので、その金額を請求の趣旨に書きましたよ、ということを説明しなきゃいけません。

「損害の内訳を書かなきゃダメだよ」というめちゃくちゃ当たり前のことを今日は書いてしまいまいしたが、内訳を書かないと、請求の理由として不十分で、請求棄却になってしまうかもしれないので、必ず書きましょう、ということでした。

(まあ、正直にいうと、損害の内訳を書かないだけで、請求棄却判決を出す裁判官はいないでしょうが、内訳を一切書かずに訴状を提出すれば、必ず「内訳も書いてください」と裁判所から言われると思います。「損害額」だけでなく、「損害」も、「請求を理由付ける事実」として不可欠なんですが、その損害(ケガしたとか、通院を余儀なくされた、とか)に対応する形で「損害額」を書く必要があり、そうすると、損害の内訳を書かない訴状は、「請求を理由付ける事実」が不足していると判断する裁判官がいてもおかしくありません。)

まあ、弁護士に依頼すれば、こんなことを考える必要はないのですが、弁護士の僕はこんなことも考えていますよ、ということを紹介してみました。

明日は、損害の内訳の続きを書きます。

それではまた明日!・・・↓

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