施設入所措置と成人年齢引き下げ
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このブログでは、2019年7月にうつ病を発症し、それをきっかけに同年12月からブログを始めて、それ以降、700日以上毎日ブログ更新してきた、しがないサラリーマン弁護士である僕が、日々考えていることを綴っています。
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【 今日のトピック:18歳で成人 】
僕は今、児童相談所の常勤弁護士として働いていますが、児童相談所は、子どもたちを「施設」に「措置」しています。
子どもを「施設」に「措置」するのは、児相では日常なんですが、それ以外の人たちにとっては、子どもを「施設」に入所させる「措置」なんて、少しビビってしまいますよね。
今日は、この「施設入所措置」についてのお話なんですが、そもそも、子どもを施設に入所させる場合、基本的には、親権者から同意してもらっています。
親が、子どもを施設に入れるのを「同意」するなんて、もしかしたら、想像すらできない人もいるかもしれませんが、残念ながら、それは想像力が乏しいです。
世の中には、いろんな人が、いろんな子どもを育てているんです。
いろんな事情があって、やむを得ず、施設に子どもを入所させなきゃいけないことがあるんです。
もちろん、施設に預けたら、それが今生の別れではありません。というか、逆説的ですが、施設に預けるのは、再び親子が一緒に住めるようにするためです。
児童相談所も、親子が一緒に住んだほうがいいと思っています。というか、親子が一緒に住めるようにするのを目指さなきゃいけません。
それが、児童相談所の第一目標です。
ただ、親子が一緒に住んでいると、子どもの安心・安全が確保できない場合に、やむを得ず、親子を分離しています。
親子を分離する方法の1つとして、施設があるのです。
ただ、いつまでも親子を分離させておきたいわけではなくって、親子分離せざるを得なかった事情が取り除かれれば、親子を再び一緒に住めるようにします。
親子分離を引き起こした事情を取り除く作業も、ただただ親任せにするのではなく、児童相談所が支援します。
いろいろと書いてきましたが、子どもが親の同意に基づいて、施設に入所するという事態は、この日本で間違いなく起きています。
で、親が反対していたら、子どもを施設に入れられないかというと、そうではなくて、家庭裁判所が施設入所を承認すれば、親がどれだけ反対していても、子どもを施設に入所させることができます。
結局、家庭裁判所が承認すれば、親が反対していようが、子どもを施設に入所させることができるわけです。
ただ、「施設」も、刑務所ではないので、出入り口に鍵がつけられているわけではありません。窓に鉄格子がされているわけでもないので、本気で脱走しようと思えば、いくらでも脱走できます。
ただ、子どもは、自宅に住めないから施設に入所させられているわけで、仮に脱走したとしても、行き場はありません。
だから、結局、施設に戻ることになってしまうことにはなります。
とはいえ、施設への入所は、子どもにとっても親にとっても、賛成しづらいものです。
親だって、子どもだって、施設入所を嫌がることも多いです。
しかし、家庭裁判所が承認すれば、施設へ入所させることができます。
でも、このルールが、成人年齢引き下げによって、大きく変わりました。
2022年4月1日から、成人年齢が18歳に引き下げられますが、これによって、18歳になった途端に、子どもは親権に服さなくなります。
これが、施設入所との兼ね合いでどういう意味を持つかというと、なんと、親の同意で施設に入所させることができなくなることになります。
未成年の時は、親権者の同意で施設に入所させていたのですが、成人となって親権に服さなくなると、親の同意で施設に入所させるのではなく、成人となった子ども本人の同意で施設に入所することになります。
そうすると、子ども本人が施設入所に反対する場合は、子どもを施設に入所させることはできなくなります。
17歳までであれば、親権者の同意があれば、子どもが反対していても、子どもを施設に入所させることができます。
親権者の同意がなくても、家庭裁判所が承認すれば、子どもを施設に入所させることができます。
しかし、18歳になると、親権者の同意の有無や、家庭裁判所の承認の有無ではなく、子ども本人の同意の有無によって、施設入所の可否が左右されてしまいます。
つまり、子どもが施設入所に反対すると、法的に、その子どもを施設に入所させ続けることはできなくなってしまうのです。
で、子どもが反対する場合に家庭裁判所の承認によって施設に入所させる手続きはありません。
したがって、子どもが施設入所に反対したら、施設入所措置を解除するしかないのです。
もちろん、「施設から出たい!」という子どもの意見を鵜呑みにする必要はできません。どこにも行くところがないのに、「施設から出たい!」というのは、単なるワガママです。
親元に戻ることができるのなら、施設になんか入所していません。施設に入所しているのは、入所しなきゃいけないだけの理由があるからで、その施設入所原因が取り除かれているのなら、既に施設を退所しています。
僕としては、18歳として成人になった子どもたちが、イヤといえばそれだで施設から出さなきゃいけないとは思っていません。
きちんと、話をして、施設から出られるだけの準備を整えてあげる必要があると思っています。
正直に言えば、最初僕は、子どもが18歳で成人になった後も、子どもを施設に入所させ続けることができると考えていました。
そもそも、施設への入所措置は、子どもの意向によって左右されないからです。
親権者の同意があれば、それで施設入所させることができ、親権者の同意がなくても、家庭裁判所の承認があれば、施設入所させることができます。
子どもの意向が全く無視されることはありませんが、子どもがどれだけ反対していても、子どもを施設に入所させることができる、というのが児童福祉法の建て付けでした。
子どもが18歳で成人になったとしても、同じような扱いになると僕は考えていました。
しかし、厚労省が、18歳で成人になった後は、子どもの意に反して施設入所を継続することはできない、と明確に打ち出したので、傘下の児相は、これに追随せざるを得なくなってしまいました。
18歳の子どもが、しかも、いろんな事情で施設に入所せざるを得なくなっている子どもが、自分にとって本当に必要なことを決めるのは難しいと思います。
もちろん、18歳になったら、成人なんだから、良いことも悪いことも、すべてリスクを自分で引き受けなきゃいけない、という考えも成り立つでしょう。というか、成人年齢を18歳に引き下げたのは、こういった考慮があったんだと思います。
18歳になったら、自分でリスクをすべて引き受けろよ、ということです。
もちろん、それでいいんでしょう。厚労省も、それでいい、と考えているのは明らかです。
ただ、「施設がイヤ」という目先の感情に任せて施設を飛び出した子どもたちは、間違いなく、大きな傷つきを味わうでしょう。
その傷つきも、18歳になったんだから自分で引き受けろよ、というのも確かにそのとおりなのかもしれません。
成人したら、傷つきを自分でやりくりしなきゃいけないし、自分でやりくりできない場合は、自分で支援を求めなきゃいけないのでしょう。
だって、成人なんだから。
かなり残酷な話にも思えますが、施設に入所している子どもたちは、ぜひ、児相の職員を信頼してほしいです。
18歳の自分よりも長い期間を生きてきていて、しかも、いろんな傷ついた子どもたちを見てきた児相の職員たちは、冷静に考えれば、自分よりも、自分の今後について正しく判断できるはずです。
そう思えば、目先の感情で動くべきではないと僕は思います。
お願いだから、早まらないでほしいです。本当に苦しくてつらいだろうけど、そこで施設から逃げ出したら、もっと大きく傷つくと思います。
ゆっくりゆっくり、児相と話し合っていきましょう。
それではまた明日!・・・↓
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