不倫の慰謝料を請求されたら-19(まとまるか決裂するかの瀬戸際)
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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。
僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。
ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。
あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。
ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。
【 今日のトピック:不倫の慰謝料を請求されたら 】
今日も引き続き、不倫の慰謝料を請求されたケースについてお話していきます。
さて、昨日はかなり交渉が進みました。
・離婚するかどうか
・求償アリかナシか
この2つが固まったので、金額に折り合いがつきやすくなったからです。
・当面離婚しない
・求償ナシ
という前提が固まると、かなり交渉がしやすくなり、僕は、「腹をくくり」ました。
つまり、金額を線引きしたのです。
「この金額までは譲歩する」
「この金額を超えたら裁判になってもかまわない」
という決断をすることこそ、「線引き」です。
交渉が進んでくると、必ず「腹をくくる」場面に突き当たります。
僕ら弁護士でいえば、「交渉決裂して裁判するかどうか」を決めることが「腹をくくる」です。
1万円の差が埋まらなくて裁判になることだってあります。それも、「腹をくくった」結果です。
たった1万円の話だとは思いますが、その1万円を譲歩したくないと思ったって構いません。
確かに、1万円で訴訟が回避できるのであれば、それが合理的だと思います。
例えば、今回の僕は、「35万円」と腹をくくりました。
厳密に言えば、「35万円」と腹をくくったのであれば、40万円でも、36万円でも、ノーを突きつけなきゃいけません。
昨日のブログでも、こう書きました。
ただ、じゃあ、その「ノーを突きつける」という判断が正しいかどうか、合理的かどうかは考えなきゃいけません。
相手が40万円を提示してきた際に、額面通り「ノー」を突きつけたほうがいいのか。
35万円で腹をくくったとしても、「40万円で終わるならそれでいいや」と、40万円に応じるのも1つです。
ただ、それは相手(夫)にとっても同じです。
僕は既に、30万円は提示しています。
夫が「最低100万円」とこだわっているのであれば、訴訟するしかありませんが、しかし、今回のケースだと、慰謝料はせいぜい70万円です。
裁判で最終的に判決となれば、求償アリを前提とする(つまり、僕が妻の負担割合もまとめて払う)判決が出ますが、ただ、そうなったら、僕はもちろん、妻に対して求償します。
離婚しない夫としては、妻に求償されると、求償ナシと結局同じことになってしまうので、求償アリにこだわるメリットはありません。
そうなると、やっぱり、基準となる金額は70万円です。
だとすると、夫としては、70万円にこだわる意味はあります。
僕の負担割合だけでも70万円は見込めるから、70万円にこだわる、ということです。
ただ、これだと敗訴リスクを見過ごしています。僕が不倫を認めていない以上、敗訴リスクが最後までついて回ります。
「敗訴リスク」とは、「裁判で負けたら0円になる」という意味です。
夫から見ると、「70万円にこだわるあまり、30万円の提示を蹴っていいものか」と映ります。
30万円という提示は、もちろん、裁判前の交渉に限定されています。
「話し合いによる早期解決を前提に」、30万円を提示していますから、「訴訟になったらこの話はナシで」ということになります。
いやはや、交渉というのは、なんともまあ、ビミョーな押し合いへし合いをしていきます。
僕は、「35万円」と腹をくくりましたが、正直なところ、相手の出方次第では、ほんの少しくらいは譲歩してもいいのかなとは思っています。
うーん、なかなか難しいところですが、夫の弁護士に対して返答しなきゃいけません。
「100万円」という提示を受けているわけですから、それに対してどう返答するか。
結論として、100万円には応じられないのですが、その理由付けもきちんと書きます。
「今回の場合、婚姻期間が4年で、まだ離婚も成立しておりませんので、仮に不貞が認められたとしても、求償ナシの前提で慰謝料100万円を当方が負担するのは高額すぎると考えております」
「仮に不貞が認められたとしても」という書き方、大切です。
不貞は、あくまで仮の話です。最後の最後まで、不貞を認めていないという痕跡を残さなきゃいけません。
「しかしながら、当方としましても、貴殿(=夫)が当初の300万円の請求から大幅に譲歩されていることを踏まえ、話し合いによる早期の円満な解決を望んでおりますので、最大限の譲歩として解決金35万円を支払うことを提案いたします」
「最大限の譲歩」という言い方も、よく使います。これは、暗に、「これでダメなら訴訟だよ」ということを示しています。
暗に示すのではなく、明確に示す場合は、「この条件にご納得いただけない場合、訴訟によって解決を図るほかないと考えております」と書きます。
そうすれば、この提案を、相手が蹴るかどうかで交渉がまとまるか決裂するか決まります。
この言い方は、まさに「最後通牒」です。最後通牒になってもいいやと思うからこそ、こういう言い回しをします。
最後通牒になってほしくない場合は、「最大限の譲歩」くらいの言い方にしたほうがいいかもしれません。
とはいえ、「最大限の譲歩」も、最後通牒と受け取られる可能性もあります。
「最大限」と言っていますからね。額面通り受け取れば、「これ以上譲歩できない」ということですからね。
しかし、それは覚悟の上です。
交渉は、最後の最後、こういう、「えいや!」という感じで、まとまるか決裂するかの瀬戸際をうろつく場面が必ず出てきます。
もちろん、僕が、夫の言っている100万円に応じれば、それで交渉はまとまります。これが、交渉を終わらせるためにはいちばん早いです。
でも、それは納得できません。だからこそ、「まとまるか決裂するか」という話になってしまっています。
交渉を早く終わらせたいのは山々ですが、夫が提示してきた金額は払いたくない。
「夫が提示してきた金額=100万円は払いたくない」し、相場的にその金額は高すぎるし、訴訟となったら不貞を立証できない可能性もある。
こう考えて、僕は、「最大限の譲歩」という言葉を使って、交渉をまとめるか打ち切るかを、夫の弁護士に迫りました。
今日はこのへんにします。
それではまた明日!・・・↓
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