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#485 給料の差押え:滞納すると勤務先に裁判所から通知が届きます

【 自己紹介 】

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【 今日のトピック:給料の差押え 】

今日は「給料の差押え」についてお話します。

「給料の差押え」なんて,めちゃくちゃこわい響きですが,少しずつ説明します。

さてさて,僕ら弁護士の世界では,お金を支払うと約束したのに,その約束を破って支払ってくれない,ということが,本当によくあります。

約束したのであれば,約束を守らないほうが悪いのは間違いないのですが,とはいえ,「約束を破るなんてけしからん!」と,どれだけ大声で叫んでも,1円も入ってきません。

約束を強制的に実現する手段を確保していないと,誰も約束してくれませんよね。だって,約束しても,それを実現する手段がなければ,約束が無意味だからです。

この「約束を強制的に実現する手段」こそ,「強制執行」と呼ばれるものです。

約束を自発的に守らない不届き者に対し,強制的に約束を実現させることを目的として,「強制執行」という手段が,法律上用意されています。

お金を払うと約束したのに払わない不届き者に対し,強制的にお金を払わせるのが,「強制執行」の大切な役割です。

そもそも,「約束」にもいろいろあります。もちろん,お金を払うという約束以外の約束もあります。

例えば,「長男と長女の親権者を妻と指定して離婚する」という約束があります。この約束は,お金を払うという約束ではありません。

ただ,「お金を払う」という約束を強制的に実現する場合の強制執行で出てくるワードが「差押え」です。

お金を払ってもらうために強制執行する場合,お金を払うと約束した人の財産を無理やりお金に変えて,そのお金から返済を受ける,という方法をとります。

この「無理やりお金に変える」という手続きで,最初に「差押え」をするんです。

「差押え」すると,何が起きるかというと,自分のモノであるにもかかわらず,自分でどうこうできなくなります。

「どうこうできない」というのも,なんかめちゃくちゃ抽象的ですが,例えば,不動産が差し押さえられた場合,不動産の登記に「差押え」と書かれてしまいます。

ま,それだけなんですが,そうなると,誰も買ってくれなくなります(笑)。

「差押え」というワードが気持ちわるいからとか,そういう意味ではなくて,「差押え」と登記に書かれた不動産を買ったとしても,後でその不動産は,せっかく買ったのに,自分以外の人に売却されちゃって,買ったのがムダになってしまうからです。

「差押え」というのは,無理やりお金に変えるために行う,と先ほど説明しました。

つまり,「差押え」の後には,「その不動産を無理やりお金に変える」という手続きが待っているんです。

「お金に変える」というのは,「売る」ということです。この場合の「売る」は,「競売」です。誰か買い手を見つけて,その人に売るのではなく,裁判所で差し押さえた物件を公表して,買い手を募集し,買取希望価格を申し出てもらうんです。手紙で。

そして,最高値の買取希望価格をつけてくれた買い手に売却し,その結果,不動産が「お金」に変わります。

買い手を募集している間に,不動産が誰かに売られてしまうと,せっかくの強制執行ができなくなってしまうので,まず最初に,「差し押さえ」ておくんです。そうすれば,売られた後でも,「お金に変える」ことができるんです。

この「差し押さえ」は,給料の場合も行われます。

例えば,相手が,お金を払うという約束を破ってお金を払ってくれない場合,不動産と同じように,給料に対して強制執行することもできます。

「給料」も,れっきとした「財産」なのです。

給料は,預金口座に振り込まれたら預金となりますが,「給料に対して強制執行する」とは,給料が預金口座に振り込まれる前に,直接自分に払ってくれ,と相手の勤務先に請求することを意味します。

「強制執行」とは,「相手の財産を無理やりお金に変える」ということだと説明しましたが,「給料」という財産を「無理やりお金に変える」とは,「給料を直接自分に払ってくれ」ということになるんです。

さて,この「給料を直接自分に払ってくれ」という強制執行をする場合,不動産と同じように,給料を「差し押さえ」ます。

「差し押さえる」といっても,給料には,不動産のように登記があるわけではありません。

じゃあ,どうやって給料を「差し押える」のかというと,勤務先の会社に裁判所から通知を送るんです。

強制執行は裁判所に申し立てるんですが,裁判所に給料に対して強制執行を申し立てると,裁判所から,給料を支払う会社に対して,「差押命令」が届きます。

「そちらで勤務している〇〇さんの給料に対して差押えを命じます」という書面が,裁判所から届くんです。

〇〇さんとしては,めちゃくちゃ大変な事態ですよね(汗)。

だって,自分の勤務先に,自分の給料を差し押さえましたよ,という通知が裁判所から届くんですから。当然ながら,会社の上司から説明を求められるでしょうし,出世や昇進に響くでしょう。

約束を守らずにお金を払っていないような人は,出世は難しいでしょう。


最後に少しだけ補足説明します。

「約束」「約束」と,何度も書きましたが,どんな約束でも強制執行が可能なわけではありません。

調停調書(裁判所での話し合いの結果をまとめた書面),和解調書(訴訟を提起した後に和解できた場合に作成される書面)など,裁判所が関与して出来上がった約束などが,強制執行できる「約束」です。

【 まとめ 】

「給料の差押え」は,離婚後の養育費を滞納している場合によく使います。

養育費は,子どもが20歳になるまで支払い続けなきゃいけないので,支払いが長期間になる傾向があります。

その期間のうちに,いろいろと状況が変わり,養育費を支払わなくなる,ということが結構あります。

養育費の支払いを調停調書や和解調書で約束していた場合,給料という「財産」に対して強制執行が可能です。給料に対して強制執行を申し立てると,勤務先の会社に裁判所から通知が届いてしまいます。

裁判所から通知が届いたことを理由に解雇できるかというと微妙ですが,裁判所からの通知がマイナスの評定になってしまう可能性は否定できないでしょう。

きちんと約束どおり返済していれば,給料を差し押さえられることもありませんから,約束はきちんと守りましょうね,という話でした。

それではまた明日!・・・↓

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