すべて真夜中の恋人たちー仕事に対する姿勢と信頼についてー
本日の読書は、川上未映子さんの『すべて真夜中の恋人たち』。かつて読んだことがたしかにあったのにまったく覚えていなくて、他の作品も同様で、当時のわたしのこころには引っかからなかったと思われる、本と作家さん。最近ダ・ヴィンチで特集されていて、なんとなく読み直してみようと思った、さっき。読点の間隔が長くてうまく息つぎができなくて、初っ端からくじけそうになったのだけれど。小さな出版社で校閲者として働く主人公にフリーランスを勧める、聖(大手出版社で校閲の仕事をする、独特な雰囲気をもち、想像もつかないような能力をいくつも持った女性で、主人公にアルバイトをおろしていた)のセリフが、びっくりするくらいこころにがつんときたのでした。
夫とのあいだにすきや愛はもちろんあるのだけれど、であったときからあって、いまでもなお、変質も消滅もしていないのは、この信頼だ。
幼い頃に思い描いていた、医者にも弁護士にもなれなくて、今は臨床心理士として、女性と子どもの福祉の現場で働いている。種類や結果という意味では、立派な同級生たちと比べてなにひとつ手に入れられていない気がしていたが、果たして本当にそうだろうか。という思いに至った。
そうだ。わたしはこの仕事にたいする敬意と誇りを忘れていた。いつか夫が言っていたように、わたしたちが今やっているのは、幸せをオーダーメイドする仕事だ。目の前の人や、そこから湧き上がる自分の感情に、徹底的に向き合って、そして打ちのめされて。それでも、いつか目の前の人が幸せになることを願って、自分に今できるだけの努力をして、ほんの少しだけ背中を後押しする。これ以上に尊い経験は、この仕事でしか得られない。そんなことに気づくと、夫や自分への信頼は、とてもたしかなものになったのでした。
書きたい欲がむくむくと湧いてくる今日この頃。自己満足だけれど、誰かのこころに少しでも届いたらうれしいな。
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