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4. 募っていく想い。

言葉とリズム

毎週配送時、担当者は、おすすめ商品だけではなく、各々が作ったニュースをのせたプリントをカタログと一緒に配っている。
内容は、たいてい、自身のお子さんのことが多い。どこ行ったとか、行事ごととか。
小さい子供がいるママさん達に、親近感持ってもらうためだろう。

ところが、『れん君日記』と書かれた彼の通信は、今まで見てきたものと少し違うものだった。

内容から、奥さんと娘さんがひとりいることは分かった。
でも、書かれてる内容のほとんどは、彼自身の趣味の話だった。

好きな音楽、好きなアーティスト、好きな服のブランド、集めてるアンティークのこと、休日何したか。
特に音楽については、かなりマニアックな内容。
こんなの、ママさん達や年配のお母さん達が読んでも分からないでしょ?って内容。

ところが、私にとっては、ドンピシャな内容だった。
本当に驚いた。

好きなアーティストがほぼ同じ。
特に好きな曲、好きなアルバム、好きな歌詞のこの部分、全く一緒で怖くなった位。

というより、自分の周りでここまで音楽を聞く人がいないし、ここまで歌詞を大切にする人に出逢ったことがなかった。

決して流行りの曲だけじゃない。
好きな歌、ひとつひとつが同じということ。

歌は「リズムと言葉」でできてる。
同じリズムと言葉に惹かれるってことは、きっと感性が同じはず。

実際、
彼が好んでた服のブランド→一緒
昭和やレトロが大好き→一緒
休日にやっていること→一緒

本当にほとんどが一緒だった。

もう、これは、感動しかなかった。

おまけに、その通信から、彼と私の息子が同じ誕生日であることを知った。
つまり、彼の誕生日も一生、忘れることはないということ。

毎週毎週、蓮自身の情報が更新される度、
毎週毎週、想いは募っていった。


近づく距離


個人の携帯番号を交換してから、わりとすぐに蓮から電話がかかってきた。

もちろん、用事で。

私の携帯電話にかかってきたことだけで嬉しかった。


数日後、またかかってきた。

もちろん、用事で。

用事のやりとりなんてすぐに終わってしまう。だから、話の終わりかけに、思い切って切り出してみた。その週に配られた『れん君日記』の内容について。
その日は、フェスに行ったことが書かれていたので、その感想を聞いた。私もその出演者の大ファンということも伝えた。

『そうなんですか?!』

一気に話は盛り上がった。
おそらく10分以上は話してたと思う。


またまた数日後、かかってきた。

もちろん、用事で。

でも、今度は彼から音楽の話が始まった。
すらすら答える私の知識に驚いていた。
こんなマニアックな話についてこれる人に初めてあったと喜んでくれた。

「音楽だけじゃないんですよ!」

服の話題に変えると、蓮もそれには気づいてたと言われた。私が着ている服、いつも好みだなぁと思ってたと。

ふたりして、「好きなもの」があまりに似てることに感動して、きづけば、30分以上、話してた。


またまた数日後、かかってきた。

今度は、用事ではなく。


配送の合間、時間が空く度にかかってくるようになった。

『あこさんと話してると癒される。』

その言葉を聞いて私も癒された。


そして次第に、音楽の話から、より深い話。
例えば、お互いのパートナーの愚痴もこぼすようになっていった。


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