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【散文詩】半自動筆記に依る夜想曲(10)-3<終>『創世記』-3<終>

 朝の光の中に、宝石の様に薔薇が紅く輝いて居る。私は、肋骨が長い独白の最後に、『…此の私だって…』と口中で付け加えるのを聴いた気がした。
 其れにしても、此の多分に不愉快な涙がましい・・・・・、湿っぽい、そして極め付けにくどい・・・、女の声らしき声のする肋骨は、一体何者だろう?何よりも、何故私の朝食の邪魔をして迄、こんな如何でも良い話をする?
 私はいい加減に、この社会不適合めいた、さも無ければ狂信者ファナティックめいた(何方が後で、何方が先なのかは知らない)誰も知らない何処かの・・・・馬の骨にご退場願いたいと思った。
『…えぇ、本当に、全く以て貴女の仰る通りですね。あぁ…ええと…其れでは私からも申し上げたい事が…少なくとも、此の世界が何処か間違って居るという事については、私も同感です。はっきり言って、此の世界は歪んで居るとしか思えません。
 ですが、若し正しさと云う事物に重きを置くので有れば、朝起きて空腹を感じたら朝食を摂るのが定めで有り、或る種決まりでも有ると思うのですよ。其れを邪魔するって云うのは…
 どうせあんたみたいな骨には減らす様なはらなんか無いからな、他人の気持ちなんか解る訳無いだろうから言ってやる。
只でさえ《・・・・》朝早く起きて苛付いて不機嫌なのに、人の家に押し掛けて来て、やれ世界が如何の、挙句に寂しいだの構われたいだのと抜かす魂胆だとか、笑わせるぜ!!!
 前世がどんな傾国だったか知らないが、ともかく誰であれ人の食事の邪魔をするのは神様だって許さないね!!!せめて、人と相伴に預かりたいなら、服位着てから来い!!!此の老いぼれの下女め!!!』言うなり、私は肋骨をひっ掴み、入って来た時と同じ様に、窓から投げ放った。犬の朝食に丁度良い様に、紅く丸かった事など見る影も無い、林檎の芯も添えて。

<了>


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