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ショートショート19「人魚伝説」

満月の夜は決して漁に出てはならない。というのが港の決まりであった。

しかし仕来りなど聞いたことかと、若い漁師が数人舟を沖に出したそう。

漁は順調に進んだと思われたが、奇妙なものが網に掛かったという。

「おい、何だこれは」

そこに現れたのは人魚だった。

人魚というのはどれも下半身は魚、上半身は美しい女性といったものではない。

頭は人の顔で二本の角があり、首は無く体が魚のそれである。

人魚は若い漁師に向かって不気味な声でこう言った。

「お前らも私の肉が目当てだな」

人魚の肉を食べると不老長寿を得られるという言い伝えがある。

漁師達は強欲だったため、人魚を殺してしまったという。

肉を持ち帰ると忽ち港は一面異様な空気に包まれた。

海鳴りや大風が続き、最後には津波が押し寄せ港の大地丸ごと海の底に沈んでしまった。

こうして人魚の祟りとして全国に広まったそうな。

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