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知的障害のある人の就労と現実

知的障害のある人の就労イメージはどのようなものでしょう?
今、一番新しい国の調査は、平成30年度(2018年)。

ここからざっくり知的障害のある人に焦点をあて、気になる箇所をピックアップします。

  • 最低賃金が確保されている

  • 平均賃金 11.7万円

  • 週30時間働いてる率 65.5%

  • 正社員率 19.8%

  • 平均勤続年数 7年5ヶ月

福祉や特別支援学校で就労を支援しているにもかかわらず、現状の就労実態についてはあまり知られていません。
今の課題を取り上げます。


週30時間働く知的障害のある人の正社員率は?

週30時間って、週休1日の1日5時間か、週休2日の1日6時間の雇用契約なんです。働いている知的障害のある人の半分以上(65.5%)が、その雇用契約で頑張っているんですよね。

しかも、雇用契約に期間がある有期雇用が大多数を占めています。

国は、有期雇用者の無期転換を推進していますが条件があります。

  • 有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合

  • 有期契約労働者(契約社員、アルバイトなど)からの申込み

はい、当事者側から申し込まないといけません。それ、確認しているご家族や支援者っています?知的障害のある人、ご本人にできます?

有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合に、有期契約労働者(契約社員、アルバイトなど)からの申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換される

有期契約労働者の無期転換ポータルサイト


訓練に明け暮れる特別支援学校

先日、障害のある子の親コミュニティーで、「特別支援学校高等部が、就労に向けてばかりだった」と話すお母さんがいました。

「入学してから就労訓練ばかりで…でも、卒業しても就労できず、福祉サービスの就労訓練を2年間受けて、やっと就労できたと思っていたらコロナで店が閉まってしまった」というのです。

最近、知的障害のある子の特別支援学校は、就労を目指すスタンスに変わってきましたが、この話を聞いて「特別支援学校が就労訓練だけに明け暮れる理由は一体なんだろう?」と思いました。

福祉から雇用へ

平成25年に障害者総合支援法が施行され、就労支援が充実しました。

これまで就労できなかったケースでも福祉的就労や企業就労が身近なものになり、就労できるかもしれない可能性に喜ぶ知的障害のある子の家族は、就労という目的に向かって走り出しました。

しかし、卒業後の知的障害のある人については、あまり知られていませんし話題にも上がりません。

就労後は、地域福祉か障害者就業・生活支援センターを利用するようになっていますから、就労させるまでが学校側の仕事で、その後の様子については学校も地域も情報共有がされていません。

その課題について考えます。

過去に望んだものをジャッジする

当時の親たちが就労を望んだ結果が今の学校の現状です。
でも、それは本当に私たちが望んだ形になっているのでしょうか?

今の障害福祉について、私は大きく2つの要因があると思っています。一つは、少子高齢化、もう一つは知的障害や発達障害について正しい理解がされていないことです。

今の日本の福祉の課題は、少子高齢化によって引き起こされているといっても過言ではないでしょう。児童福祉も高齢福祉も障害福祉も間違いなく人手不足が背景にあります。

少子高齢化では、知的障害のある人の課題に向き合えないまま

個々の課題の対応に当たれないほどの人員不足なんです。

職員の数が圧倒的に足りていない。求人募集をかけても来ないとか。
でも、起きている課題は大きい。「なんとかしてくれ!」と言われても出来ない。

地域行政が、福祉の課題を把握していても、課題にどう向き合えば良いのか?全く不透明なのだと思います。

福祉は万能じゃないのです。

「脳機能障害」の言葉で思考をストップさせた知的、発達障害の支援の在り方

そして、もう一つの「知的障害や発達障害について正しい理解がされていない」なのですが、昨年、神経発達症に名称変更された、発達障害そのものの認識がそうさせていると考えています。

発達障害=脳機能障害と捉えた親たちの衝撃の強さは大きく、それによる弊害が今も続いているのです。

もし、2013年に精神医学会が、DSM-5の考え方を採用できていたなら、ここまで大きな混乱は起きなかっただろうと思えます。

今の就労支援の現場で起こっていることは、その時代に「脳機能障害」という言葉で思考をストップされた親たちと、その支援にあたった教育の流れにすぎないと思っています。

そこを早急に変えてゆく必要性を感じます。

先ずは、家庭で知識のアップデートを!

過去の情報を精査し、知的障害、発達障害のある人の人生観に深く関われるのは、家庭でしかありません。

就労を目指した知的障害のある人たちが、社会の中で犯罪加害者となったり、精神疾患を患ったり、暴力をふるったり、強度行動障害という障害が出たりと…

様々な課題を最後に引き受けるのは、家庭でしかないのです。
福祉制度が進んだ今の成人の状況はそうなのです。

昨今の就労訓練について、福祉、教育に任せっきりの考え方を私たち親は、一度じっくり考えてみる必要があります。

今後も知的障害のある人の就労について、取り上げていきます。

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