見出し画像

技術は格段に進歩し、リチウムイオン電池などを電気の調整池として活用でき、非常に信頼性の高い、安定した電力等のエネルギー供給システムを作ることができるようになった

ソフトエネルギー社会(3)

第1章 ソフトエネルギー社会
 
   1 ソフトエネルギー社会の概念
 
   (1)ソフトエネルギーとハードエネルギー
 
 エネルギーは大きく2つに分類できる。ハードエネルギーとソフトエネルギーである。これまで世界はハードエネルギーによる経済政策を採択してきた。

 ハードエネルギーは、経済規模の拡大、すなわち、エネルギーの大量消費、エネルギー需要の大幅な増加を大前提としている。構成するエネルギー群は、石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料と原子力などの有限な非更新性資源などである。

 このハードエネルギーには多くの考えなければならない点がある。

第1に、技術の進捗があるとすれば、エネルギー需要は減るものとされるはずであるが、経済成長を前提とするため、減った需要を成長が打ち消してしまう恐れがある。

 第2に、ハードエネルギーは、現に環境に対して悪影響を及ぼし、世界的に環境汚染や環境破壊を引き起こし、今では世界的な気候変動を引き起こすまでになっている。

 第3に、ハードエネルギーは、中央集権的な管理システムを伴い、少数の技術者に権限と情報が独占され、人々は絶えず支配・管理され、生存に必須なものであるにもかかわらず、それを商品として購入させられる

 第4に、ハードエネルギーは、輸送施設、貯蔵庫などに大がかりな投資を必要とする。さらには、これらの施設は、あまりにも大規模であるため、技術者は全体を担うことが叶わなくなり疎外され、技術力低下や失業という問題に常に晒されることになる。また、担わされた技術は当然に狭いものとなり、次の就業は、得た技術と親和性の高い職業に就ける可能性は低くなりがちである。

 これに対してソフトエネルギーは、効率の良い技術や、資本主義経済に包摂されていた暮らしを改善することで、大幅に削減されたエネルギー需要や生活の質に合わせて、太陽光・熱、風力、バイオマスなどのソフトエネルギー群で、まかなおうというものである

 この需要削減は、資本主義経済に包摂された暮らしや、MMTや新自由主義に影響された経済を排除、修正することで可能となる。SDGsのような考え方にも適合する。

 ソフトエネルギーの供給は、常に自然界に存在する再生可能なエネルギーを、多くの人が理解できて扱える方法によって利用するものであり、それは環境に及ぼす影響も小さく、人間に与える損害もほぼ無いものである。上級技術者による中央集権的、閉鎖的な管理とは異なる開かれたシステムでもある。
 今後ますます厳しさを増すことが予想される、環境破壊、地球温暖化、気候変動の下において、日本もソフトエネルギーへの転換を急がねばならない。
 日本のエネルギー需給構造をかいつまんでみると、まず、エネルギーの海外依存度が高い。このことは、国産エネルギー資源の無い日本にとっては、国際情勢や国際関係に大きく命運を託すことになる

 いま求められているソフトエネルギーは、量的限界、機能的限界を迎えた地球に適うもので、限界を迎えた資本主義経済下のライフスタイルを改善し、適正になったエネルギー需要をソフトエネルギー群でまかなうことを目指す。

 実現のための技術は既存の技術で十分可能である。

 ところが、日本ではエネルギー供給面での開発、施策は盛んであるが、ライフスタイルの改善などは、経済を優先するあまりにほとんど行われていない

 電力需要の増大により、二酸化炭素(CO2)等温暖化効果ガスを排出しないからと言って原発を建設、再稼働させるよりも、ライフスタイル、資本主義経済の改善により量的限界、機能的限界を迎えた地球に適う需要にしなければならない

 電力エネルギーは、元々、電力として自然界に存在していたものではなく、何らかのエネルギーから力を得て、化学的あるいは動力などから物理的な力を得て作られたもので、産業や暮らしなどでは、電力でなければままならない場面もあり、いわば質の高いエネルギーともいえる。

 しかし、ハードエネルギー路線を進んできた日本は、私企業たる大手電力会社に儲けを許し、各電力会社も、その儲けのために、莫大な電力を生産し、単なる熱源のためにも国民に電力を買わせる戦略を採り続けている。

 熱源などは、他のガスや石油類でも十分得られるものであり、バイオマスなどは、主役にもなり得る存在である。

 また、空調なども大電力を必要とするものであるが、都市政策面から環境を整え、ヒートアイランドなどを抑えることで、不要なものへと転換できる。

 こういった施策を組み合わせることで、需要を抑制することができる。

 従って、ソフトエネルギー社会にしていくためには、ハードエネルギーのための大規模集中プラント建設の前に、無駄に使われているエネルギーの節約、用途にふさわしいエネルギーの選択・創造、ヒートアイランド等を解消するような都市政策が行われなければならない。

 日本の場合、自然的、気候的条件から見て、ソフトエネルギーに恵まれた国のひとつと言える。だから、エネルギー供給をソフトエネルギーによってまかなうことは極めて現実的である。

 (82年当時にはなるが)デンマークのベント・ソレンセンや米加州のエド・コン社の研究によれば、風力、小規模水力、太陽光発電を組み合わせてゆくと、相互に補完しあうため、非常に信頼性の高い、安定した電力等のエネルギー供給システムを作りうるとしていた。

 現在は、当時よりも、技術は格段に進歩し、リチウムイオン電池なども登場し、いわば、この電池を電気の調整池としても活用でき、82年当時よりも、更に、非常に信頼性の高い、安定した電力等のエネルギー供給システムを作ることができるようになった。(つづく)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?