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ウランだって安定供給が約束されたものではない

ソフトエネルギー社会(50)
  
第3章 化石燃料代替としての原子力政策
 
   1 資源確保における障害
 
   (1)地政学的問題と相場
 
 コロナ禍による経済活動の崩壊を受けて、産業用金属類や鉱物の価格が低下しているが、反対に原発燃料であるウランの価格が上昇した。一部のウラン鉱山の操業に問題が発生しているのが背景にあり、ウラン価格は1ポンド当たり27ドルと、過去2年間で14%上昇した(20/3/31現在)。過去1年近く維持した24-26ドルのレンジから抜けたことになる。

 ロンドンに上場の投資会社、Yellow CakeのCEOは、「世界には、原子炉が442基もあり、需要は非常に分散している反面、サプライサイドは非常に集中している」と語る。同社は、価格上昇を見越して、ウラン在庫を大量に積み上げているという。

 カナダの鉱山会社、Camecoは、世界のウラン供給の13%を占めるCigar Lake鉱山を1か月間閉鎖すると発表した。人の移動の制限により、北サスカチェワンにある人里離れたこの鉱山への労働者の確保が難しくなっているのが理由だ。

 また、ウラン業界のサウジアラビアと呼ばれるカザフスタンは、緊急事態宣言を出し、主要6都市をロックダウンした。(中前国際経済研究所HP NewsSummary Mar31.2020 FT by Neil Hume,a natural resources eclitor)

 このように、ウランは国際相場で価格が決定されるものであるし、資金力のある投資会社も介入してくれば、更に相場に影響を及ぼすことが、このコロナ禍で判明した。また、多くを算出する国のひとつがカザフスタンであることもわかり、旧ソ連関連国であることからも決して容易い国ではないと思われ、経済や政治次第では入手困難ともなりかねない。(つづく)

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