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ときどき日記(298)「捏造」は公務員の性癖

捏造するのは、手柄を立てたい、あるいは、優位になりたい、良くなりたい、悪くなりたくないなどの心情が働いてやってしまうのだろうが、これが公務員特有の心情であるような気がしてならない。尤も、私が元地方公務員最下級管理職だったせいかもしれない。

定年まであと4年の年に、国民健康保険料の滞納整理に携わったが、この時に「捏造してでも」という意図に呑み込まれそうになった。

保険料を滞納すると税金と同じ手続きで滞納処分をする。いわゆる差し押さえだ。
しかし、動産や不動産など差し押さえた財産によっては公売という手続きによって、その財産を強制的に売り払って換金して滞納に充てる。
当時、私が勤めていた市役所は公売に力を入れていて、動産はヤフーなどのインターネット公売、不動産は税部門と共同での一斉公売に力を入れていた。
多くの場合、差し押さえた不動産にはローンの抵当権や他の公租公課の差し押さえが付いていることが多い。そしてこれらに配当(換金した金を配る)順位が定められている。

私の部下がある滞納者の居住している不動産を差し押さえていたが、もちろんローンの抵当権や他の公租公課の差し押さえも付いていて、公売して換金しても配当が回ってくる見込みが無く塩漬けになっていた。
一斉公売のリストアップが始まると、いくら配当が回ってくるかの試算表を上局に提出することになる。
もちろん正しく上局に提出した。「配当見込み無し」と。
ところが、提出期限の数日前に上局の担当者から「数字を捏造してでも配当が出るよう偽装」する旨、指示が来た。こちらとしては冗談じゃないという話だ。
配当が回ってこないのだから、公売しても滞納は解消しないし、そのうえ、住んでいる家を奪うことになる。
配当が回ってくる役所や債権者が公売や競売に附すのは解るが、配当が回ってくる見込みが無い役所が居住している不動産を公売に附すのは、たとえ合法でも、限りなく黒に近い白だろう。脱法だ。もちろん公売に上げれば事務量も膨大になる。

当時、上局には滞納整理のカリスマが居て、誰も何も言えない存在だった。
当該の不動産は「大口滞納検討会」で、そのカリスマから「公売!」と言われてしまって、公売ありきで事務が進んでしまったのだ。
カリスマが公売を宣言したのに「公売できない」は、その部下らにとってはあり得なかったのだろう。上局の担当者は怯えてしまい、執拗に捏造を強要してきた。
この公売の意味などとうに忘れてしまい、自分がカリスマに対して手柄を立てたいや悪者にされたくないなどの意識が働いたのだろう。

最近では、総務省の文書や袴田事件で捏造が疑われているし、森友事件もいわば捏造の命令だった。

公務員に捏造の性癖があるのだろうか。どんなにがんばってもやって当たり前の仕事が多い中で手柄を挙げるためとはいえ捏造はいただけない。

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