なんだか姉ちゃん

今日も仕事中にトイレに駆け込んで泣いてしまった
なんだか途方もない虚無感に襲われるのだ
もうなんだろう、存在、いるのが辛いというか身の回りのものすべてが不快
居場所がどこにもないんじゃないかってすら思う

上司「こないだ頼んでいた資料ぜんぜんできてないじゃないか、今まで一体何をやってたんだ!これじゃあクライアントに提案なんてとてもできないぞ、全部作り直せ」

今日も上司から怒られた、自分の身の回りにあるのもぜんぶぶち壊したくなるほど自分がいっぱいで本当に心の拠り所がどこにもない


なんだか姉ちゃん…
そうだ、お姉ちゃんに相談しよう


4つ年上のお姉ちゃん
名前はミレイ
両親は僕が小学生の時に別居して母についたのでお姉ちゃんは地元の小倉に残った


お姉ちゃんは九州の大学卒業後、おじいちゃんのコネで某音楽レーベルに入社、音楽プロモーションを担当しその数年後、某広告代理店に転職してウェブマーケをやってるバリキャリのお姉ちゃんだ

もういてもたってもいられない気持ちだった
オフィスも近いからこんな日はいつもランチに誘うのだった

今日は赤坂の居酒屋で待ち合わせることにした。昼はランチ営業のいつものところ。
正直、食欲すらあまり湧かないけど。


「おつかれーカイト、ごめんねえ待っとったー?」


いつもお姉ちゃんは遅れてくるんだ、ごめんとは言ってるけどあまり気にしてなさそうなのが逆に気を遣わなくてなんだか安心する

僕はさっきまでの虚無感はなんだったのか、お姉ちゃんが目の前に現れたときにはもう現実のことは忘れていた


「今日さ、早出で朝抜いたけんお腹すごいすいちゃった 
顔色悪いけどわたしランチ誘うっち、珍しいねなんかあったと?」


なんかさー仕事が上手くいかなくてさ、今日も資料できてないって上司にバチクソ怒られた、まじで会社戻りたくない!笑


「そっかそっか、仕事なんて仕事なんやし、まあまあでいいと、私なんかね、」

姉は話し始める


「こないだーラーメンを沸かしっぱなしで寝ちゃとって、部屋中、煙だらけになってしまって、火災報知器がマンション中に鳴り響いちゃってね、隣のおじいちゃんにすごく心配されちゃって玄関まで来てね、防災手帳と防災頭巾もらったけん」


「あとね、」
姉は続ける


「テキーラの美味しいバーにいったんちゃんね、普通にトイレにいったらさ、そしたら、カギを閉めるの忘れとって、男の人にドア開けられちゃって、すごい困った顔されてさ、それでね、、」


そうなんだ、僕は話聞いてほしかったのかもだけど、お姉ちゃんと会うといつもこんなどうしようもない話を聞かされ続ける


「それでねこないだはね……」


まだあるんだ、話に共感は一切できないんだけどなんかな、こんな話をし続けるお姉ちゃんがいてよかったなとすごくホッとしてる僕がいる

テテレテテレテテレーン

「あ、もしもし、はい、あ、その資料もう対応済みでーす。え、は、? あ、そのデータ分析も午後に対応する予定でした。よろしくお願いしますー♪」


お姉ちゃん、いつも仕事はすごいできてるっていうけど、本当なのかな。

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