日本における博士後期課程の進路難について
初めましての方は初めまして。そうでない方はいつもお世話になっております。朝霧くもりと申します。
今回は、Yahoo記事で取り上げられていた「博士後期課程(いわゆる博士)後の進路難」について、思う所があったので色々と現状をお伝えできればと思います。
この記事がどなたかのお役に立てれば幸いです。
それでは行ってみましょー!
日本社会ではそもそも博士卒のポストが少ない
博士後期課程卒業後の現状は厳しい
こちらは文部科学省が2023年1月に調査した博士課程修了者の進路調査結果です(引用:文部科学省 科学技術・学術政策局 人材政策課「博士後期課程修了者の進路について」)。
修了者15968名のうち、民間企業・ポスドク(非正規雇用の大学内研究者)・医療関係者・教員全てに当てはまらなかった人が5084人もいます。31.8%の人がなんと就職すらできていない可能性が高いということで、いかに現状が厳しいかを理解できたかと思います。
しかも、ポスドクは年収も低い上に多忙で、かつその上の教員/准教授に上がれる人はごく少数しかいません。
一方、少しデータが古いですが、「未来を牽引する大学院教育改革~社会と協働した「知のプロフェッショナル」の育成~」(審議まとめ)(平成27年9月15日 大学分科会)では、博士前期課程(修士)修了者のうち進学・就職以外の進路を選んだ人は16%しかいません。
つまり、客観的にも【博士後期課程修了者は進路難に陥っている】という事実があるわけです。
大企業が欲しがる研究者は使いやすい修士卒が有利になりやすい
以下は理系に限った話ですが、そもそも博士卒と修士卒では年収に大きな違いがありますが、これは博士卒の人に求められるスキルが高いからです。
同じ研究内容でも博士卒では与えられる仕事内容や裁量等が大きく違います。しかしながら、企業においてそのようなポストは多くありません。
修士卒でも出来るような仕事は修士卒にやらせた方がコスト的な面で有利の為、博士卒が求められるような希少な専門職の椅子が少ないという現状があります。
企業は利益追求が最優先事項のため、身の丈に合わない超高スキルの博士卒がそもそもそんなに必要にならないってことですね。
残念ですが、これが日本の企業の現状です。
大学教員の道は厳しすぎる
ではアカデミアはどうなんだという話ですが、ここは個人的な主観で言えば既得権益まみれの腐った世界と言わざるを得ません。
そもそも公募といいつつ裏では既にそのポストに就く人が決まっていたりと、いかに権力の強い研究者を味方に付けるかの競争と化しています。
しかも、研究といいつつも実情は科研費をどう搾り取るかといった戦略的な側面が強く、実用的な研究が評価されにくい印象があります。
もちろん基本的に優秀な方しかいらっしゃいませんが、単に優秀なだけでは上がっていけない世界です。
そもそもポスト自体が少ない上に、そのポストも満期までは絶対に開かないため、優秀な人でも運悪く昇進できないまま研究人生が終わるということもザラにあります。
偉い人とコネを作り、研究実績を積み上げ、運よくポストが空き、他の優秀なライバルと勝ち抜いた人しか生き抜くことが出来ない地獄の進路と言えます。
博士卒の進路難をどう解決するか?
ポストは少ないが、博士卒は重宝されるというジレンマを抱える
では博士卒は社会で評価されていないのかというと、それはそれで話が違います。大学教員が尊敬される職業なのは間違いないですし、大企業においても「重要な研究は博士卒に任せたいよね」という風潮が流れています。
自分自身も研究現場を見てきた中で、やはり博士卒の人は研究における数々の修羅場を潜り抜けてきた歴戦の猛者というイメージがあります。
日本の国際社会における科学研究の競争力を上げるという意味でも、やはり博士卒の人材は貴重だと言えるでしょう。
博士後期課程を目指す人も近年増えてきている
また、国が博士卒を推進するプログラムを始めた影響が結構効いてきており、博士自体の金銭的負担は少なくなってきています。
そう言った意味で、最近は必ずしも優秀とは言えない人でも博士の進路に行きやすくなっている現状があります。
博士は飛び込んでみないと向き不向きが分かりにくい世界なので、挑戦する人が増えるのは私としても素晴らしい事だと思っているのですが、それでイマイチな成果しか出せなかった人が進路難に陥るのだと思っています。
つまり、博士卒が推進されてきている今日では、むしろ進路難が悪化する可能性があるのではないかと筆者は睨んでいます。
国は直接若手研究者に金を落とせば良い
ではどうすれば良いのか。
恐らく少しずつ制度が改革されているのだと思いますが、まだあまり実感が無いので改めて意見を述べさせていただきます。
国が本当に研究力を上げたいならば、国立若手研究所(仮称)のような若手専門の研究所を立ち上げ、そこにお金を落とすなど就職先自体を物理的に増やす施策が必要になるのではなないでしょうか。
いわゆる出口の所の整備をしっかりやった方が良いということです。
さらに、成果を上げた人を理化学研究所や産業技術総合研究所、物質・材料研究機構に入れるという風な仕組みを作れば、優秀な人はどんどん上に上がっていきやすくなり、そうでない人も成果を出すまでは若手研究所で正式な雇用関係が維持されるという博士に行きやすい好循環が生まれるのではないかと思っています。
しかし、これには国力が必要となるので、その前に年金制度改革や真の意味での社会保障制度改革が必要だと感じています。
目先の票目当てで先延ばしにしないでやることやれって事ですね。正直に言って日本社会がボロボロになるまでは無理だと思っていますが、是非よろしくお願い致します。
〆の挨拶
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それでは次の記事でまたお会いしましょう!
サラダバー!!!