見出し画像

人の物を勝手に捨ててはいけない

これは片付けのセオリーの一つと習ったことがある。

それが例え、家族のものであっても…。

_____

昔から片付けの苦手な私は、母に“片付けろ”と小さい時からずっと怒られてきた。

母には「スッキリと暮らしたい!」という思いがあり、見た目重視なので生活感を出したくないらしい。

確かに、言ってることは今ならとても分かるし、見た目もスッキリして来客の評判は良い。

だが、うちでは

母のやり方が“絶対”

なので、余計なことを言うことで、すぐ口撃をしてくる母と喧嘩をしたくない私と父は黙ってそれに従うしかなかった。

何せ、うちの家訓は

「雷、火事、おふくろ」

なので、母には基本逆らえない。

何度言われても片付けられない私が悪いのだが、何度か勝手にモノを捨てられたことがある。

「何度も注意したのに、言うことを聞かない方が悪い。」

というのが、母の言い分である。

確かに私が悪いのだが、

全然納得できなかった。

未だにその傷は深く残っており、私の母へのわだかまりの一つとなっている。

_____

ある時、私が不要品を売りに行くことにしたので、母にもないか、声をかけた。

「あるある!お父さんのカバンやねんけど、戴き物かな?もう定年退職したし、次の仕事場では使わないから、新品だし、これ売ってきてくれる?」

と言われ、私は

「あ、そう。じゃあ売ってくるわ。そのお金は渡すわね。」

と売りに行った。確か6~8000円程になったと思う。

母にお金を渡すと、

「えぇ?!こんなになったの?ちょうど収納も一杯で困ってたから、助かったわ。ありがとう!」と喜んでいた。

父にも2人で話をしたら、今から思えば、何とも言えない表情をしながら、

「あ、そう。良かったね。」と父は返事をした。

この時、私は母と父の間でとうに話ができているものと思い込み、行く前に父への意向確認をしなかった。

この時の父の“何とも言えない表情”に、当時一瞬違和感を抱いたが、そんなに深く考えていなかった。

_____

あれから数年後、父と2人で話す機会があった時に、この時の話が出た。

すると父曰く、

「あれはな、お父さんが定年退職した時にその時の職場のみんながお金を出し合って、お父さんにくれたんや。確かに使ってなかったけど、その気持ちが嬉しくて、置いてたんよ。別にええねんけどさ、一言声をかけて欲しかったなと思ってさ…。」

と、ぼそっと言った。

「えぇえぇえぇぇ!!知らんかった…。てっきり2人の間で話ができているとばっかりに思っていたから…。何も知らんかったとはいえ、ごめんな、お父さん…。」

と私は若干泣きそうになりながら、返事をした。

「もう、売ってしもたもん、しゃあない。アンタも知らんかったんやし。でも思わへん?なんぼ要らん、使ってないとはいえ、僕がもらったもんやねんから、一言声かけてくれてもええんちゃう?ってさ。」

と、父は私を責めなかったが、父なりに思うところがあり、“あの表情”をしていたのである。

元々、言葉が少ない父だが、あの少ない言葉数で、私は完全一発KO状態であった。

_____

自分の幼少期からの思いや、父の一件で私も深く心を痛めたので、それだけは絶対夫にやってはいけないと、片付けの相談の際のアドバイスを胸に刻み、現在かなりのらりくらりとした“マイペース”だが、片付けに取り組んでいる。

夫も最初は私に負けず劣らず、「もったいない」「捨てられない」という思いが強く、さすがにこれはアカンやろというものも捨てられずにいた。(今も全部捨てられてるわけではないが)

しかし先生に言われた通り、私は待った。

明日にでも引っ越しとかいうなら話は別だが、どんなに時間がかかっても

“夫と私が納得できる片付け”

をやりたかったからだ。

たまには「何とかならへん?」と言うが、できるだけ

「こういう理由で困ってるから、何とかしてくれない?」

「私だけの家じゃないから、アンタにとっても過ごしやすい、使いやすい部屋づくりをしないといけないから、一緒に考えて欲しい。」

「私一人で、このことで困ってるから、協力してくれない?」

とできるだけタイミングを見ながら言うようにして、

夫の靴等すべて夫自身の手で手放してもらうようにした。

また普段からゴチャッと置いて、掃除に影響が出てる所に関して、何度か声がけしたが、なかなか改善してくれないので、中身は一切触らず、大きな古いエコバックにただ広げているものを入れただけで、少しまとめた。夫が帰宅してから、

「とにかく掃除がしやすいとか、動かしやすいように中身は触らずただそのまま古いエコバッグに入れさせてもらったからね。捨てる等、時間と気持ちに余裕がある時に要不要の分別はしてくれたらいいからさ。そのバッグの中で何とかコンパクトにしてもらえないかな?」

と話して、協力をしてもらうようにした。

夫も「これならいいわ。今までとほとんど変わらないし、僕も動かしやすいし。」とのことだった。

_____

またある時はキッチンのマグカップも、どれもこれも捨てられないと言っていたが、ネズミのキャラクターは一番使いたい、絶対譲れないと言うので、

「じゃあ、ネズミのコップがこれから思い存分使えるようにするために、コレとかコレは手放さない?うちでずっと眠ってるより、本当に好きな人に使ってもらった方が、コップも喜ぶと思うんよね。」

と言って、主人も実際一緒にリサイクルショップに持っていくと、箱入りで状態が良かったのもあり、思っていたより売れた経験をしたこと、また“かえる”が好きな人にそのコップのセットを送ってあげたら、とても喜んでくれて早速使ってるとの話を聞いた経験も大きかったのかもしれない。

現在、毎日ゴキゲンにネズミのマグカップを使っている。

すると、2~3年程かかったが、夫が少しずつ変わってきた。

数年前から、何とかして欲しいと私が言っていた、今の家ではどうやっても使えない調理器具を、遂に「捨てる!」と言った。

あまりにもそれは突然で、私の方が「え?!」と驚いたくらいである。

それまでにちょこちょこ軽くそれを置くメリット、デメリットを伝えていたのもあるのだろうが…。

その数日前に、不要品のチラシが入っていたらしく、今回の品の場合は無料とのことで、それも背中を押したようだ。

その“捨てる”には、私が自分の片付けを、のらりくらりマイペースとはいえ、取り組んでいる姿を見ていたのも、どうやら影響を与えたらしい。

お片付けの先生の仰るとおりになった。

それからしばらくして、私もその存在を知らなかったのだが、夫自ら自分のスヌーピーのガラスコップ(箱から出ていたが、多分未使用品)を出してきて、

「スヌーピー、〇〇さん、好きなんでしょ?これあげたら?」

と言って、戸棚の奥から持ってきてくれた。

「ホントにあげてもいいの?」

「いいよ。置いてても使わないし、喜んで使ってくれる人のところに行ったほうが、コップにとっても良いだろうしね。」

そして友人に写真を送って意向を聞くと、

「え?いいの?すごい嬉しい!」

と、喜んでもらってもらえた。

_____

夫よ、時間がかかったけど、少しずつでも私の話を聞いて、考えを変えていってくれてありがとう。

夫も夫なりに頑張ってくれているので、私も自分のモノについて向き合って考えていかなければならない。

片付けは奥深い…。そしてやっぱり納得して本人に処分させないと、しこりが残って、本当の意味での解決にならないと改めてそう感じている、らびっとなのであった。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?