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ストーリー「豪雨の予感」

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水害被害ストーリー「豪雨の予感」の連載を始めました。実際の水害被害インタビューを通して分かってきた教訓やエピソードを織り交ぜた物語です。できるだけ実在する名称を使用して、水害被害…
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#くるまの水害を防ぐ

「豪雨の予感」第20話(自然への畏怖)

「豪雨の予感」第20話(自然への畏怖)

靴下を履き替え、上履きで3階の同じ教室に着いた愛子と佳奈は窓から見える外の景色にたじろいた。

いつもは大阪城天守閣と堀の石垣にクスノキの緑が映えるきれいな景色であるが、今日は“嵐に包まれた暗黒の世界”に天守閣がうっすらと浮かび上がっている。愛子が学校に着いた後さらに雨足は激しくなり時折雷鳴も響いている。

ドドン、バリバリバリバリバリ

「また落ちた!あーもう怖すぎ!さぶいぼが今までいち立ちまく

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「豪雨の予感」第19話(落雷と地響き)

「豪雨の予感」第19話(落雷と地響き)

地上への階段の途中まで人だかりができている。ざっと30-40人が雨が止むのを待っている。雨といっても傘がないと外を歩けないほどの雨である。

京阪電車で通学する途中、京橋から天満橋に向かう車窓からは小雨程度だったのが電車を降りて改札から地下を通る10分くらいの間に空模様は一変していた。愛子は幸いにも父からのアドバイスで傘を持ってきていた。母のみおも大雨を心配して早く帰ってくるようにとも言っていた。

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「豪雨の予感」第18話(災害に強いエリア)

「豪雨の予感」第18話(災害に強いエリア)

その2時間ほど前、高校の最寄駅である京阪電鉄天満橋駅で愛子は豪雨に遭遇する。愛子が通う大手前高校は大阪城天守閣を東に望む上町台地にあることから校舎自体浸水の心配はない。上町台地は大阪市内を南北に走る台地で、大和川より北に向かって幅2~3km、長さ12kmに亘って岬状に突出しており北端には大阪城があり、四天王寺や難波宮、大阪府庁や大阪府警など国の主要機関が多く集まっていることが、このエリアが災害に強

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「豪雨の予感」第9話(線状降水帯の豪雨と一抹の不安)

「豪雨の予感」第9話(線状降水帯の豪雨と一抹の不安)

悠さんの朝の天気予報では、大阪市内でも線状降水帯が発生するようなことを言っていた。

「これが線状降水帯の雨?」

みおは急に怖くなって確かめたくなった。ポケットからスマホを取り出し、天気予報アプリを開いた。アプリをタップして雨雲レーダーが10分おきに見れる画面にする。関西地方の地図が画面いっぱいに表示される。全てブルーになっている、つまり雨が降っているという意味である。さらに大阪市内は一層濃いブ

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