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「豪雨の予感」第9話(線状降水帯の豪雨と一抹の不安)

悠さんの朝の天気予報では、大阪市内でも線状降水帯が発生するようなことを言っていた。

「これが線状降水帯の雨?」

みおは急に怖くなって確かめたくなった。ポケットからスマホを取り出し、天気予報アプリを開いた。アプリをタップして雨雲レーダーが10分おきに見れる画面にする。関西地方の地図が画面いっぱいに表示される。全てブルーになっている、つまり雨が降っているという意味である。さらに大阪市内は一層濃いブルーになっていて、より降雨量が多いという意味だ、みおがいる城東区では北は吹田から南は八尾までを赤色やえんじ色の太い帯ができている、線状降水帯だ。10分おきのこの後の予報を見る、その帯は東に流れていくがまた同じ部分に赤とえんじ色の帯が発生する予報が三時間先まで続いている。

「線状降水帯…ずっとこの真上で発生してるってこと?」「みんな大丈夫なんかな?」

みおは咄嗟にJR西日本の電車運行アプリを開いた。登録していた大阪環状線と学研都市線、東西線は全て運休になっている。これでは出勤ができない。みおは急いで上司の西岡に連絡した。西岡もリモートワークにするので安全確保のために長濱さんもリモートワークにしてほしいとLINEで返事が返ってきた。

みおは2階の南側にある部屋でリモートワークを始めた。この部屋には予めリモートワークのためのパソコンを設置して、天気の急変や鉄道の運休でも対応できるようにしている。パソコンが設置された机は壁に向かって置かれていて、右側に窓がくるようになっている。窓からは第二寝屋川と中浜浄水場が見え、その向こうには城東区の街並みとその先に阪神高速が見える。西に目を向けると大阪城公園の緑と大阪城がある。大阪城公園には3年後に大阪公立大学が移転開業予定になっている。その建設現場では始まったばかりの建物の基礎工事が行われている。

春になると長濱家では夕ご飯の後、浄水場に咲く桜並木を見に出かける。日常の風景の中に夜桜を見れる場所があるのが非日常的だと愛子と健斗は毎年喜んでくれる。ところが今日はその浄水場さえ大雨で全く見えない。眼下を流れる第二寝屋川の水位は昨日から降り続いた雨に加えさっきからの豪雨の影響で明らかに上昇しているように見える。

「まさか川から溢れたりしないよな、、、」

一抹の不安がよぎった。

第10話に続く
(このストーリーはフィクションです。一部実在する名称を使用しています)

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