[短編小説]け、のはなし
人間の身体に生えてるスネの毛。それが私だ。そう、私は毛として生まれたのだ。
何度も生え変わり、長くなる。何の為に生えているのか、何で我々が存在するのか、それは分からない。しかし、毛であることは確かである。
私たちはただ生えるしか、方法がない。自分の存在を認めてもらうには、生えるしかないのだ。
毛というのは、主人の身体に無数に生えている。毛の数だけ、個性も思いも異なるのだ。
私は生まれてからずっと、主人に存在を認めて欲しいと思っていた。そのために頭頂部の毛のような濃くて長い毛