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日本三大奇書を読んでみたその二

『 日本三大奇書を読んでみるその一』の続き。※ネタバレを含みます。
 

 もし日本に、表紙が有名な本ランキングなるものがあったら『ドグラ・マグラ』は絶対ランクインしている。
 そのぐらい、宇野亜喜良氏が手掛けた若い女の表紙は耽美で挑戦的で、印象的である。

 有名な角川の表紙

 しかし、この表紙は内容とリンクしそうで微妙にリンクしていない。耽美で危ないカンジがあるというコトぐらいだ。かすっているぐらいである。「チ。」を書いた漫画家さんが書いた限定特別版の表紙の絵の方が内容にあっている。 

 特別版の表紙。


 表紙の話は置いといて、中身の話を始めたい。その一であらすじを載せたがもう一度、「ドグラ・マグラ」のあらすじを乗せる。その一より詳しくネタバレしているあらすじである。

主人公が目覚めると九州帝国大学病院精神科にいた。
 記憶喪失で自分の名前すら分からない主人公だが、医師たちは名前を思い出すのも治療の一部だからと言い、教えてくれない。
 隣室には絶世の美少女がおり、主人公を兄さんと呼ぶが主人公は覚えていない。主人公は医者とともに自分自身の正体を捜してゆく。同じ病院では呉一朗という自分の許嫁と母親を殺した男が入院しているらしい。医者は主人公が呉一郎ではないかというが、どうも主人公には自分がそんな恐ろしいことをする人物とは思えない。一郎が自分の母を殺したのは呉家に伝わる、呉家の男がその巻物を見ると狂ってしまうという云われのある巻物を見たせいである。その巻物を一郎に見せたのは誰なのか、主人公は本当に一郎なのか。

 この話の一番の肝は、主人公が自分自身の正体を探すミステリーだと思わせていたのに、途中からファンタジーの要素をぶち込んで来ることだと思う。スリラーの要素も入っている。
 たぶん、奇書と呼ばれる由縁はこのあたりのジャンルにとらわれない自由さにあると考えてTwitterではここを伏せ字にしていた。最期に主人公の正体がわかり、巻物を一郎に見せた人も判明すると思って読んでいたのに、主人公が呉一郎であると匂わせるだけ、一郎に巻物を見せた人物ついても、はっきりと書かず曖昧にしている。フワッとした曖昧な書き方のせいで、誰が狂人で誰が正常なのかわからない、真実がわからない。
 この本を理解したら狂うと言われるが、理解できるように描かれていないのだ。

 読み終わったあと解説を読んでびっくりした。作家で精神科医のなだいなだがあとがきを書いている。
 人が狂っていく話をあとがきを精神科医に書かせるなんて人を食っているし、引き受ける方もどうかしている。

 




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