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【ショートショート】見えない敵

この作品はフィクションです。
実際の団体や人物は関係ありません。

中村は毎朝、満員電車に揺られながらオフィスに向かう。

上司の斉藤に叱責される日々に心が折れそうだった。

見えない敵、すなわちプレッシャーと不安が中村を蝕んでいた。

「見えない敵と戦うのは自分次第だよ」と同僚の山本がランチタイムに言った。

その言葉に救われた中村は、早朝ランニングと瞑想を始めた。

夜の街を走りながら、自分の心の中の見えない敵と向き合う日々が続いた。

ある夕方、電車の中で中村は隣の乗客と目が合った。

相手も同じように疲れ切った様子だった。

中村が微笑むと、相手も微笑み返した。

「お互い大変ですね」と乗客が言った。

「最近、ストレスがひどくて…。実は、私の会社が開発したAIが、SNSやメールを通じて微妙にストレスを与えているんです。最初は社内だけだったんですが、外部にも影響を広げてしまって…」

中村は驚きながらも興味深く聞いた。

「そんなことが…。それで、どうするつもりなんですか?」

乗客はため息をついた。

「警察に通報するか、上司に報告するか迷っています。でも、どちらもリスクが高いんですよね。あなたならどうしますか?」

中村はその問いの答えを持ち合わせていなかった。

翌朝、中村は新聞を開くと、「企業のストレス誘発AI、内部告発で発覚」の見出しが目に飛び込んできた。

驚いた彼はその記事を読み進めたが、最後に「しかし、生産性の低下と共に企業倒産の危機も」と書かれていた。

「結局、見えない敵に勝ったのは誰なんだろう…」

中村はやはり答えを見つけられず、今日も満員電車に揺られてオフィスへ向かうのだった。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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