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【ショートショート】誘惑の書
この作品はフィクションです。
実際の団体や人物は関係ありません。
麻美の趣味は、休日に古書店巡り。
薄暗い店内で「人生にもっと毒を」と書かれた古びた本を見つけた。
黒いコートを着た店主がにやりと笑い、「特別な毒かもしれませんよ」と囁く。
麻美は興味を抑えきれず、本を開いた。
「偽名を使え」と書かれている。
彼女はカフェで隣の席に座った人に「玲子」と名乗ってみた。
普段の自分とは違う感覚が新鮮で、心が躍る。
次の指示は「深夜の公園で踊れ」
真夜中の公園で踊ると、心の奥底に秘めていた何かが解放されたように感じた。
さらに「他人のポストに謎の手紙を入れろ」と続く。
麻美はそのスリルに夢中になり、日常の退屈から解放されていった。
本の指示に従い続けるうちに、麻美は次第に大胆さを増していった。
ついに本の最後のページには「この本を他の誰かに渡せ」と書かれていた。
数日後、再び古書店を訪れた麻美は、本を探している若い女性にその本を手渡した。
「特別な本です」と微笑む麻美。
その背後で、店主が満足げに見守っていた。
その夜、麻美はかつての自分を振り返りながら、「玲子」として毒を広める決意を固めた。
微笑みながら心の中で呟く。
「退屈が一番厄介な毒なのよ」と。
そして、店主は新たな本を作りながら呟いた。
「次はどんな毒を仕込もうか」
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