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【ショートショート】夢と現の毒

この作品はフィクションです。
実際の団体や人物は関係ありません。

鈴木の毎日は、まるで無味無臭のスープのようだった。

朝、目覚まし時計の音で起き、いつもの電車に乗り、同じデスクに向かう。

その退屈さに、もううんざりしていた。

ある日、仕事帰りに怪しい黒いコートの男が立ちはだかった。

「人生にもっと毒を」と書かれた小瓶を手渡される。

男はにやりと笑って、「退屈を消し去る魔法の一滴だ」と囁いた。

鈴木は興味本位でその一滴を飲み込んだ。

瞬間、世界はカラフルな遊園地に変わり、同僚たちは動物の仮装をして踊り狂っていた。

まるで夢の中のような非現実感。

しかし、次第に現実と妄想の境界が曖昧になり、鈴木は恐怖と混乱に陥った。

ふと目を覚ますと、全てが夢だったと胸を撫で下ろした。

しかし、手にはまだ小瓶が握られている。

そして、その小瓶から囁きが聞こえた。

「もう一滴、どうだい?」

鈴木は凍りついた。

ふと鏡を見ると、自分の顔はピエロのメイクで笑っていた。

そして背後から、あの男の声が響いた。

「誰が夢だと言った?」

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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