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【ショートショート】好奇心のカタチ

この作品はフィクションです
実際の団体や人物は関係ありません

「お前、最近何をそんなに忙しくしてるんだ?」

高野翔太は、隣人の三浦真一に問いかけた。

真一は科学者で、常に新しい発明に取り組んでいる。

「今度の発明は何だ?」と翔太は興味津々で尋ねた。

「新しいバッテリー技術だよ。今までにないほど効率的なんだ」と真一が誇らしげに言った。

その情熱に触発される一方で、翔太は内心で嫉妬心を感じていた。

翔太もまた創造的な仕事に就いていた。

彼はフリーランスのデザイナーで、常に新しいアイデアを求めていたが、最近は停滞感を感じていたからだ。

翔太は家に帰ると、真一の成功が頭から離れず、心の中で沸き上がる嫉妬心を抑えきれなかった。

「自分も負けていられない」と決意し、翔太は真一への対抗心に駆られて自分のデザインに没頭した。

数日後、翔太は新しいデザインに挑戦したが、初めての試みは失敗に終わった。

失敗の痛みが彼の心を押しつぶし、ますます真一への嫉妬心が募るばかりだった。

その夜、翔太は深い夢を見た。

暗い部屋の中、彼の前に謎めいた影が現れた。

「お前の好奇心を満たしてやろう」と影が囁いた。

「だが、代償を払わねばならぬ」

翔太は戸惑いながらも、その囁きに引き込まれていった。

影の言葉に従い、新たなインスピレーションが頭の中に浮かび上がると、彼はその力を借りてデザインを完成させた。

その瞬間、心臓が高鳴り、達成感が彼を包んだ。

その作品は大きな反響を呼び、翔太はさらなる成功を追い求めるようになった。

しかし、成功の影には常に囁きがつきまとった。

「もっと欲しくないか?」と悪魔の声が問いかける。

翔太はその誘惑に逆らえず、次々と新しいプロジェクトに手を出した。

やがて翔太の生活は成功と引き換えに荒廃していった。

友人や家族との関係は次第に疎遠になり、彼の心には常に空虚感が残った。

新たな創造の度に悪魔の囁きが強まり、彼はその声に完全に支配されるよう
になった。

ある日、翔太はふと、自分が追い求めていたものが、ただの数字やグラフに変わっていることに気づいた。

オフィスの窓から見える街並みも、どこか冷たく、遠い。

彼の生活は完全に悪魔の囁きに支配され、彼自身もまたその一部となっていた。

成功を手にした代わりに失ったものを思い出し、翔太は皮肉な笑みを浮かべた。

その目に映る世界は、以前よりも一層輝いて見えるはずだったが、今やそれはただの幻想に過ぎなかった。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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