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【ショートショート】毒バラの誘惑

この作品はフィクションです。
実際の団体や人物は関係ありません。

美香は家事に追われる日々を送っていた。

自分の時間などどこにもない。

ある日、庭に出ると、「人生にもっと毒を」と書かれた奇妙なバラを見つけた。

興味本位でその棘に触れると、世界が一変した。

風の音も花の香りも強烈に感じられ、初めはその変化に驚きつつも楽しんでいた。

しかし、次第に些細なことが大問題に思え、子供の笑い声が耳を刺すように感じられ、夫の帰宅が遅れるだけで怒りが爆発するようになった。

「もう耐えられない…」美香は涙を流した。

そんなある日、夫の良一が静かに告げた。

「そのバラ、僕が君のために手配したんだ。退屈を癒すために」

美香は驚き、そして悟った。

良一も同じバラの毒に蝕まれていたのだ。

彼の瞳にも同じ苦痛が宿っていた。

二人は庭のバラを見つめ、苦笑いを交わす。

「次はどんな毒を試そうか?」と美香が呟くと、良一は微笑み、「もっと強烈なやつを」と答えた。

美香は微笑み返し、「じゃあ、一緒に最後まで楽しみましょうか」と呟いた。

その瞳には、どこか不安と期待が混じっていた。

最後まで読んで頂きありがとうございました。


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