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オオアラセイトウ

「所有物」


今朝、喧嘩を見た。

激しい喧嘩と言うよりも、

冷戦状態のような冷ややかな喧嘩だ。

朝ごはんはとうに冷め切っている。

ことの発端は、

「アイディアは誰のものか。」 

についてだった。

Aは、言った。

「俺が最初に出したアイディアだったのに。」と。

涙ぐみ、心中にあった

黒い全てを吐き捨てるように言った。

Zは言った。

「それは、私のアイディアで、ずっと前から考えていたことだったの。Aのものじゃないわ。」と。

こちらも、少々イラついた様子で、

貧乏ゆすりをしながら言った。

私は思った。

この世の全ては

誰のものでもないのに

人は、誰かの所有物したがる。

これは俺のもの。

これは私のもの。

これは僕のもの。

じゃあ、それは何のためのものか。

俺のものでも、

私のものでも、

僕のものでも、

それは、何のためにあるのか。

両者ともとうに、

そんなことはわかっているはずだ。

2人の動きに揺らぎが見える。

それでも、どんなに頭では分かっていても

自分のものにしたがるのは

「自分が存在している」という

"確たる証拠"が欲しいのだと私は思った。

AとZに私はこう言った。

「アイディアは、誰のものでもないけれど、

それでも、自分のものにしたいのであれば、

AとZの両者のものにしてみればいいんじゃない?

自分のものにしたいと思うもの全ては、

積み重ねなんだよ。

きっと。

積み重ねていけばいくほど

より深いものにより洗練されたものになる。

だから、 

AとZで、アイディアを深めあったらどうかな。

あと、なにも1つにこだわらなくていいんだよ。

Aは、始まりから、Zは終わりから。

それぞれのアイディアで作るんだよ。

そして、それを繋げてゆく。

すると、両者のものになるでしょう?」と。

私は、晴れやかに言った。

そう、冷ややかな暗黙の雲が晴れるように。

AとZは、不服そうではあったが、

それとなく了承した。

この先の未来が、

AとZが少しでも互いを支え合い、

互いに信頼関係を築けるように。

私は、

「ほーら。いってらっしゃい。」

と軽くAとZの肩を叩きながら、見送った。

2人の後ろ姿は、いつにもなく晴れやかな気がした。

私は上を見上げた。

今日の雲も穏やかに流れている。


AIで作曲しました。
よろしくお願いします。

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