マガジンのカバー画像

そして英雄になる

33
英雄を目指したラムとウィルの剣と魔法があるライトなファンタジー物語。
運営しているクリエイター

2023年8月の記事一覧

11話 坑道に蠢く

 薄暗い坑道の中に足音が響く。
壁についたランプの魔力灯が坑道に少しばかりの明るさを与えている。
どこか不穏な空気を漂わせる坑道の調査に、ウィルとオルカは来ていた。

「薄暗いな、ここで作業してた人間は皆んなこの暗さの中で仕事してんのかよ。」

ウィルが先頭を歩きながら喋り出す。

「ふむ、もっと明るいものだと思っていたのですが、もしかすると魔力灯の明かりが弱くなっているのかもしれませんね。
大気

もっとみる

10話 セレーネ

 私の世界は無味無臭で灰色の世界だ。
ただ毎日を無為に生きている。

 私の名前はセレーネ・ライル・マーズ。
辺境伯家の長女で今年15になる。
私は辺境伯家の当主である父の傀儡であり、権力闘争の為の道具だ。
実の母親は私が5歳の時に亡くなった。
誰にも愛される事なく、母を亡くした私に父が告げた言葉は、「お前の婚約者が決まった。」だった。
婚約者は王都の中央貴族、大公家の人間で歳は当時で42、だから

もっとみる

9話 師匠と親友と銀騎士

 オルカ師匠から剣術を習い始めて数ヶ月が経ち、僕は14歳になった。
秘密基地の前で今朝採った山菜と猪肉のスープを煮込みながら、僕は今までの事を思い返していた。

 あの日に僕と師匠で倒した魔種は、師匠が回収して内密にキャラバンに運んでもらった。
それと師匠は、幻獣種『沼男』を倒したのがウィルだってこと。
魔種が現れてそれを討伐したこと。
類い稀な剣術の才能を持つ少年がいるのでその師として村に長期滞

もっとみる

8話 魔種との遭遇

 僕はついに!木剣を卒業したよ!
キャラバンで買った片刃のロングソードがこれから僕の相棒だ!よろしくね!

 剣の特訓は村の中でしても良いんだけど、何かあったら危ないからいつも秘密基地でするようにしてるんだ。
真剣は、木剣と違って少し重たいから早く慣れなきゃね。
それで少しでも早くウィルの隣に立つんだ!

 特訓に夢中になっていると気づけば山に夕陽が顔を出してきていた、今日はこの辺にして何匹か狩り

もっとみる

7話オルカ・レイディアン

 私の名前はオルカ・レイディアン。
レイディアン子爵家の次女として生まれ、幼い頃から勉学と剣術を叩き込まれ、公爵家や王族の護衛役になれるようにと躾けられた。
だが結果として、私が護衛役に選ばれることはなかった。
子爵家の当主である父は護衛役になれなかった私に大いに失望し、母は私を出来損ないと侮蔑した。
18歳の時に子爵家の名前だけは取らないでいてやるから出ていけと家を追い出され、行き場の無かった私

もっとみる

6話キャラバン

 辺境伯領の領都マーズは豊かな草原や森からくる資源に恵まれ、木材や植物の実が特産品である。
また、異国の物が公国に入る際に必ず通る公国の搬入口とも言われるほどの国境付近では最大の都市であり、隣国から流れてくる物や人を陰ながら調べ監視する国軍が少なからず派遣されている街でもある。
そんな大都市、領都マーズにはキャラバンが到着しており、更なる賑わいを見せていた。

これはその裏で起こっていた話である。

もっとみる