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ドラマ「東京タワー」1話感想 年を重ねること

衝撃、だった。
悪い意味ではない、勿論。
ただ、私の初恋の透くんは、こういう人なのだ、と俯瞰して見られた感じがあった。
私の初恋の透くんは、映画「東京タワー」の岡田准一演じる透くんであって、ドラマ「東京タワー」の永瀬廉演じる透くんではない。
けれど、同じ「透くん」だ。小島透。

映画を何度も観ていた頃から何年も経っている。ということは、私もその間に年を重ねている。
だからなのか、今回のドラマ版がそうであるのかは、映画をもう一度観てみないとわからないのだけれども、小島透という人がとても若く、感化されやすく、ある程度の図太さを持ち合わせた人間だと、思った。

毎日の生活に単調さを見出して、そこに目を向けて、このまま、たんたんと歩んでいくのか、と悲観(とまではいかないのかなあ……)している透。
非日常、を少し求めている。

透は、詩史さんの、詩史の、自ら決定し行動する、という点に感動して、同年代の女性の姿に呆れている。母にも少し呆れている。友人である耕二にも呆れている。

詩史さんの口調は、たまにほんの僅か芝居がかったように響いていた。
透からは、詩史さんはこんな風に映っているんだよ、と言うように。

年上の、今まで出会ったことのない言動をする(そして東京タワーに関しての意見が自分と合致する)、美しい人。どこかで聞いたことのある(多分その関係はこれから明かされるであろう)名前の人。
幻想を抱くには十分で、というか既に透は幻想的に詩史さんのことを見ていて、だから詩史さんは芝居がかった話し方をするのだ。

私が好きになった、初恋の「透くん」も、御伽噺の世界に生きているみたいだった。美しくて、儚かった。私より年上で、綺麗で、繊細だった。

私は透くんの年齢を飛び越えて、彼の若さがありありと見えるようになった。
詩史さんの年齢からすればそれはきっと、魅力的で美しく、可愛らしく映るのかもしれない(わからない)。
私の年齢からすれば、ただ若く、未熟で、愛おしむには指先数センチ足りない。ちょっと憎らしい。

年齢って、年を重ねるって、凄いことだなあと思った。見えなかったものが見えるようになって、見えていたものが見えなくなる。

永瀬廉が演じる小島透は、私にそんなことを気づかせてくれた。
年を重ねるって、これだから素敵です。

それから。
梨の匂いの石鹸(新しく出してくれる)、ワレモコウ、食事、ワイン、いきもの(ねこ)。
江國香織のにおいのする描写に、好き!と思った。原作を読んで暫く経っているので、『東京タワー』自体の記憶は曖昧だけれど、江國香織のにおい、と思う。

令和版「東京タワー」、本当に令和版の、この時代の小島透たちの物語だと思った。原作の時代から、現代へと時代を変えることは、多分そんなに容易ではない。原作を読んだ者にとっては疑問だって渦巻く。
けれども、今を生きている小島透の在り方と、詩史さんの在り方を、しっかりと見せてくれた。物語の、時代での(監督さんや脚本も勿論)変化を見られて幸せな気分だ。

今のところ、ランジェリーブランド(詩史さんのものだよな?)だけが解釈違いだ。私の中の詩史さんの身につけるランジェリーブランドと違うというだけなので、気にしないことにする。気にしないことに……する。ストラップの色は素敵だった。

2話を楽しみに、1話を繰り返し観る。

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