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エッセイ#42『宇都宮市』

 少し前に、栃木県は宇都宮へ小旅行をしてきた。私はおよそ1ヶ月前に同県の小山市へ足を運んだが、今回も目的は同じである。映画『四畳半タイムマシン・ブルース』を鑑賞するべく、重い腰を上げたのだ。
 わざわざ2ヶ月続けて栃木の映画館まで行くのには理由がある。『四畳半タイムマシン・ブルース』の来場者特典は、作者の森見登美彦氏が書き下ろした短編小説である。これが1週目と2週目でそれぞれ別の作品が配られるのだが、両方を手に入れるために映画館を回っていたのだ。もちろん東京近郊の映画館でも配られていたが、実習なり何なりで忙しく、やっと行けるという時には既に配布が終了していた。そこで公開が東京よりも遅い、小山と宇都宮の映画館へと赴いたのだ。

 千葉から電車に揺らること2時間以上。近々ライトレールが開通することでもお馴染みの、宇都宮駅へと辿り着いた。予定で余裕を持って1時間前に到着する予定だったが、電車が遅延していた影響で上映開始の30分前に到着してしまった。
 それでも全然余裕があるじゃないか、と思われるかもしれないが、映画館が位置しているのはJRの宇都宮駅ではなく東武宇都宮駅側であったため、徒歩で20分以上掛かってしまう。見知らぬ土地での徒歩20分は、地元の20分とは訳が違う。
 私は初めてやって来た宇都宮の街を眺めることなく、一目散に映画館へ競歩で向かった。幸いにも映画館まではほぼ一直線で、ほとんど迷うことはなかった。
 今回の目的地である「宇都宮ヒカリ座」に到着したのは、上映開始時刻の5分前である。発券手続きもよくわからないままエレベーター乗り込んだ。中で息を整えつつ座席選びなどのシミュレーションをして、手には財布を握った。
 扉が開くと、右手にカウンターが設けられていた。どうやら、そこに立つスタッフの方がチケットを用意してくれるらしい。とは言っても、目の前に見える券売機にお金を入れればすぐに手に入るので、従業員を介した理由は謎である。
 来場者特典はその場で配られたが、1週目の分も残ったままだったので、両方とも入手することに成功した。小山の時のと合わせて1週目の方が2冊になってしまったが、これは後日友人に渡すことで解決した。そんなことよりも驚いたのは、チケットのサイズである。普通、映画のチケットといったら、一辺がだいたい7〜8cmくらいの紙であることが多いが、宇都宮は一味違う。なんと、3cm四方の小さな小さな正方形だったのだ。私の経験では大宮のプラネタリウムのチケットが最小であったが、余裕で更新してしまった。
 発券の過程で、新しい500円玉が使えないハプニングが発生したが、これもスタッフの方がコインケースから古い500円玉を取り出すことで解決した。

 スクリーンに入ると衝撃の光景が広がっていた。見渡す限り空席だらけの貸切状態だったのだ。
 初めて行った宇都宮で、初めて入った映画館で、初めての貸切状態を味わった。
 宇都宮ではこれが普通なのだろうか。しかし、よくよく考えてみるとこの日は平日だったので、こんなものなのかもしれない。

 宇都宮市へは初めて足を運んだが、JR宇都宮駅から東武宇都宮駅にかけて常に大きめの街が広がっている、という印象だった。千葉で言うと、松戸と柏と習志野を足した感じだ。そして本当に餃子屋は多かった。

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