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エッセイ#46『影の薄い中学校』

 自身が住む街の公立中学校ならば、その名前を一度くらいは目にしたことがあるはずだ。学生服販売店や成人式の葉書などでも目にするが、最も見聞きする機会が多いのは部活動の地区大会だろう。
 そんな中、聞いたことはあるものの存在しないと噂されている中学校を紹介する。

 市内の中学校を調べてみたところ、想像以上の数があった。と言うのも、筆者は文化部に所属していたため、知っている学校はごく一部に過ぎなかったのだ。
 その中でも多くは学校名に地名が付いているため、何となくの場所は推測できるが、第◯中学校という形式を取っている学校に関しては、完全にお手上げである。
 地元の理髪店の主人から聞いた話では、第二中学校という学校は存在しないらしい。最初は「まさかぁ〜。」と軽く受け流していたが、よくよく考えてみれば聞いたことがあるようで聞き覚えがない。数ある「第◯中学校」の中でも、二中だけはピンポイントで聞いたことがない。
 しかしながら、何度調べても二中は存在している。インターネットで調べてみてもヒットするし、成人式の葉書にもしっかりと記載されていた。どうやら廃校になったというわけでもないらしい。
 二中が存在しないと噂されている所以は、そこ出身の人物がいないことにあるそうだ。床屋の主人の話では、部活動の大会で二中の出場が確認されていないことや、友人やそのまた友人に二中出身者がいないことからも、「二中非存在説」は確信に近いものとなっているらしい。

 もう1つはA中学校である。ここに関しては自宅からも割と近く、名前を聞いたことがあるのはもちろん、校舎もばっちりとこの目で確認した。
 しかし、生徒がいないのだ。その近隣にある小学校や高校の児童・生徒は、かろうじて目撃したことがるが、中学校だけは謎のままである。
 小学校・中学校・高校が集まっていることから大きめの街であるとお考えかもしれないが、それは全くの間違いである。一軒家はあるもののマンションなどの集合住宅は見られず、とてもその一帯で小中学校の児童・生徒を賄えているとは思えない。しかし、統合も廃合もされていないため、それなりの人数が通っているのだろう。一方で高校はそれなりに人気である。中学の同級生も何人か進学していた。ただ、そこの生徒を外で見掛けたことはない。謎多き地域である。
 それに、A中はすぐに消えてしまう。何とも説明し難いが、とにかく見えなくなるのだ。遠くから見る分にはその校舎の存在は明らかで、窓の1つ1つまでがばっちりと見える。しかし、近寄ると見えなくなるのだ。

A中学校は目と鼻の先。

 川を挟んだ地点Aから見ると、どう考えてもA中学校はすぐそこある。しかし、川を越えて小学校の前(地点B)からA中学校を望んだ場合、そこには広大な畑が広がっており、とても地点Aから見た時と同じ場所にあるとは思えない。

広大な畑の奥に、A中学校の校舎は聳えている。

 母親の実家はこの近くにあったので、私がA中に通う可能性もあったことになる。もしそうだった場合、私の実際の母校のことは認知していたのだろうか。
 私の出身中学の周辺にも、A中学校同様に小学校と高校が建っている。しかし、どこを見回しても児童や生徒で溢れている。これが普通なのだろう。
 やはり、A中学校には生徒が存在していないのかもしれない。

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