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ASD罹患者が教える、アスペちゃんとの会話か噛み合わない理由

 発達障害、特にADHDは最近よく語られるようになったね。でもなーぜーか、同じ発達障害でもASDはあまり知られていない。

 知っていたとしても、古い名であるアスペルガー症候群って呼んで天才病だと間違った認識をしていたり、果ては病名が罵倒語として使われていることすらある。

 ASDの特性上、正しい情報がネットに出回りにくく、そもそも精神科医ですらアドバイスを出しにくいんだけど、それは周囲にいる対策がしたい人間からしたらたまったもんじゃないよね。

だから、診断済みのASD罹患者であるぼくが、この病気のリアルを伝えるよ。

 その中でも特に社会に入り込んで来やすい、昔昔アスペルガー症候群と呼ばれていた人たち(つまり、全検査IQにおいては遅れが見られない人たち)との接し方を教える。ぼくがこのタイプだから他を解説できないんだよね。

※知識がない方へ分かり易く説明する為、不快になる表現が含まれている可能性があります。


アスペちゃんとの会話が噛み合わない

 ASD罹患者と接していて最初にぶち当たる壁がコレなんじゃない? 「何を言ってるのかが分からない」や「話が噛み合わない」だったり、明確な原因が分からず曖昧な悩みを抱えたままカサンドラ状態(※)になってしまう人は多いと思う。

※カサンドラ症候群: 発達障害者の周囲にいる人間が、その支援の過酷さからうつ病のような状態になってしまうことの俗語。正式な医学用語では無い点に留意せし。最近はASDよりもこっちの方が問題視されてる。

 結婚後に配偶者がASDだと分かったパターンなんかは、ほんっと悲惨なんじゃないかな。

 この会話が噛み合わないという特徴は、低いコミュニケーション能力として説明が簡易的になりがちなんだ。それじゃあ対策もクソもないから、ここでは、より深い部分にある原因に触れていこうと思う。

 ……んだけど、解説するのは主に要因であって、なんでそうなるのかって部分はスルーしちゃうから、そのつもりでね。

アスペちゃんは会話にテーマが欲しい

 さて、ASD罹患者との会話が噛み合わない大きな理由、それは、ASD罹患者はテーマが前提の会話をするって点なんだ。意味が分からない? 例を示すよ。

健常者ちゃん「昨日、家族で回転寿司に行ったんだ!」

アスペちゃん「へぇ、それで?」

健常者ちゃん「すっごい楽しかったんだ!」

アスペちゃん「……? 何かあったの?」

健常者ちゃん「……え???」

アスペちゃん「……ん???」

 ASD罹患者に対して「家族での回転寿司が楽しかった」っていう話を振ると、こういう反応が帰ってくるはずだよ。ここで、彼女達の心の中を覗いてみよう。

健常者ちゃん「昨日、家族で回転寿司に行ったんだ!(家族で行くのは久しぶり!凄く楽しかったな!)」

アスペちゃん「へぇ、それで?(健常者ちゃんは回転寿司に行ったんだね。私に話すってことは、何か嫌なことだったり面白いことがあったのかな?)」

健常者ちゃん「すっごい楽しかったんだ!(アスペちゃんとも一緒に行きたいな!)」

アスペちゃん「……うん? 何かあったの?(え? 終わり? なにか言いたいことがあるんじゃないの?)」

健常者ちゃん「……え???(アスペちゃん、お寿司嫌いなのかな?)」

アスペちゃん「……ん???(どういうこと……? 話が見えてこないよ……)」

 分かる? 健常者ちゃん同士の会話であれば、話を振った初期段階で「いぃーなぁー!私も行きたい!」「じゃあ、バイト代が入ったら一緒に行こうよ!」みたいな会話になると思う。なぜなら、雑談ってのは基本的に決められた統一テーマなんてものはなくって、文や表情からお互いの心中を察しながら、会話を途切れさせないことがメインのコミュニケーションのジャンルだからだよ。

 対して、ASD罹患者にとってのコミュニケーションは、問題解決のためのツールという面がひじょーーーに大きい。アスペちゃんに雑談なんていう概念は無いんだ。ディスカッションのような会話しかできないんだよ。

 だから、アスペちゃんと回転寿司に行きたいなら最初に「一緒に回転寿司に行きたい」っていう、明確なテーマを示してあげてね。

アスペちゃんは直接的言及に対してしか考察できない

 ASD罹患者は議論チックな会話を好むってのはよくわかったと思う。ぼくも「大学の教授と話してるみたい」って理由で接客業の面接を落とされたことがあるよ。でも、上記の会話でのアスペちゃんはさーらーに大きな問題を抱えているんだ。

それは、ASD罹患者は相手が直接言ったことからしか考えたりできないってこと。

健常者ちゃん「昨日、家族で回転寿司に行ったんだ!(家族で行くのは久しぶり!凄く楽しかったな!)」

アスペちゃん「へぇ、それで?(健常者ちゃんは回転寿司に行ったんだね。私に話すってことは、何か嫌なことだったり面白いことがあったのかな?)」

健常者ちゃん「すっごい楽しかったんだ!(アスペちゃんとも一緒に行きたいな!)」

アスペちゃん「……うん? 何かあったの?(え? 終わり? なにか言いたいことがあるんじゃないの?)」

健常者ちゃん「……え???(アスペちゃん、お寿司嫌いなのかな?)」

アスペちゃん「……ん???(どういうこと……? 話が見えてこないよ……)」

 先入観を捨てて読んで欲しい。健常者ちゃんからアスペちゃんに開示されている明確な情報は「家族で回転寿司に行った」「楽しかった」ってことだけだよね? 恐ろしく察しの悪いASD罹患者にとってこの会話は辛い。その限られた情報からしか相手の心や会話の先が読めないから。

 このとおり、アスペちゃんは『相手が直接言ってないことをアレコレ考えたりするのは良くない』って思ってる節がある。そして、更に言うと「"家族で"回転寿司に行った」のが楽しかったのか「家族で"回転寿司に行った"」のが楽しかったのか……って部分も悩みどころ。(たぶんアスペちゃんは健常者ちゃんの人間性や家族関係に対してクソほどの興味もないので、そこから推測することも不可能)

 結論、ASD罹患者が上の会話から読み取れる情報って「回転寿司に行った」っていう、そのたったひとつだけなんだよ。アスペちゃん的には会話を続けようがなかったんだね。

アスペちゃんは会話の内容にしか興味がない

 もう一つ、ASD罹患者は興味を抱くレベルが極端ってのは少し聞いたことがあると思う。例に漏れず、会話においてもそれは発揮される。航空事故について話している時はそれしか語りたがらないし、上の話で言うと、回転寿司で何があったのかにしか興味が無い。

 普通の人でも理解しやすいように例えると、学校でディスカッションをすることがあると思う。議論が白熱すると(○○ちゃんが会話に参加できてないな)とか、他のことを考えたり気遣ったりする余裕が無くなるんじゃない? アスペちゃんは会話を始めると、それに似た状態になってしまうんだ。

 だから、本来アスペちゃんはお手本のような業務連絡は寧ろ得意であるはずなんだ。言葉に余計な情報を入にくいからね。それでもお仕事中の業務連絡ができてない人がいるなら、それは健常者サイドの伝え方が雑談のようになっている可能性がある。

 「言わなくても分かるでしょ」ではダメなことは、これまでの話で分かったよね。ASDは「1から10まで言われなくちゃ分からないし、理解できない」脳の病気なんだ。機械に話しかけるように、今で言うならチャットAIのプロンプトを書くように話してみると上手くいくかも。

アスペちゃんは社会不適合者

 ASD罹患者と接せざるを得なくなった場合にすべき最初のステップは「甘えだ」っていう認識を捨てることだよ。もちろん、患者当人の努力は大前提だけど、この脳の病気はみんなが思ってるより遥かに重い。

 普通の人生を求めて、瞬間的な症状を押さえつけるために自傷行為を自ら癖にしたり、その果てに悲しい勇気を出してしまう人も多い。正直、これは当人だけの努力でどうにかなる病気じゃない。

 社会においては、基本的に健常者の方が偉くて権威がある。誰に何を言われようがこれは揺るぎない事実。だから、発達障害者を抹消するのも簡単だと思う。だけどもし、関わらざるを得なくなった状況では、ここに書いてあることを参考にして、少し歩み寄ってみてほしい。

 きみは業務中のイライラが減るし、アスペちゃんは自分の居場所を一つ増やせる。ウィン・ウィン、だよ。

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