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#11 長期滞在するということ

 မင်္ဂလာပါ။(ミンガラーバー)カウンゾーです。しばらく日記を更新できず少し時間が空いてしまいました、、、あっという間に4月になり、私のメーソートでの滞在も残り20日を切りました。現地の人々と過ごす時間が積み重なるほどみんなが自分にとってかけがえのない存在となり、その分別れがより辛くなるばかりです、、、
 11月に来た時の自分と、今の自分。もちろん自分自身の変化もありましたが、自分と周りの人たちとの関係にも変化がありました。今回は、ここ最近感じる自分と周りの人たちのことについて、短期滞在では味わえない悩みなども含めて書きたいと思います。

「タンヨーズィン」が故に

 一人の学生ボランティアとして、LtoCのメンバーとしてメーソートに来た11月。しかし、もはや今は単なるボランティアではありません。息子であり、兄であり、弟であり、友達であり、、、当初自分のことをဆရာ(セヤー=先生)と呼んでいた学校の先生たちも今では「カウンゾーテッ(ミャンマー名)」と名前で呼ぶようになり、ホストファミリーの弟とは真剣な話もするし、特に仲の良い2人の先生は自分のことを弟のように可愛がってくれています。
 その分、距離が近くなって「日本から来た外国人だから」「あくまで6ヶ月間限りのボランティアだから」は通用しなくなります。「わからない」「知らなかった」は沢山あるしその都度みんな教えてくれますが、それを言い訳にはできません。
 以前はボランティア関係の話や業務連絡のような会話が多かったですが、今は自分の気持ちを伝えなきゃいけない場面相手に気を配らなきゃいけない場面も沢山あります。日本人とミャンマー人(もちろん一括りにはできませんが)の感覚の違いもあるし、それが故に相手に誤解させたり自分が誤解することもあります。時にセンシティブなことや言語化の難しい感情を伝えなければいけない時、自分の言語能力の低さにやるせなくなり悔しくて、その悔しいという感情すらも伝えることは難しく、、、
 親密でない関係であれば、いちいち気を遣ったり悩んだりすることも少ないでしょう。しかし今自分の周りにいる人は自分にとって大切な存在であり失いたくない存在だからこそ、彼らが怒っていたら不安になるし、怒らせたら申し訳なくなるし、落ち込んでいたら心配になります。

 仲の良い一人の先生がこういう関係を表すビルマ語を教えてくれました。

 "သံယောဇဥ်"(タンヨーズィン)

 သံယောဇဥ်とは「人と人との間の離れない、固いつながり」というような意味なのですが、他の言語に翻訳するのは難しいし翻訳してしまうと本来の単語の美しさが失われてしまう気がするので、ここでは翻訳はしません。一つの単語で説明することはできませんが、သံယောဇဥ်というのはなんでも話し合えて相手の気持ちが自分の気持ちのように感じられて、会えない期間は相手のことを想う、そういった関係のことを表すそうです。
 まさに自分はここメーソートに来て様々な人と出会い、親密になってသံယောဇဥ်တွယ်တယ်(タンヨーズィントゥエデー=タンヨーズィンな関係で結ばれた)と言えるでしょう。もちろん自分がボランティアとして来たことに変わりはなく、そういった人間関係も大切でありながらボランティアの仕事もきっちりと果たさなければいけません。その線引きをするのが難しいところです。

よく行く近くのリゾート。プールのチケットを買うとアイスクリーム引換券をもらえます。
プールで泳いで、ビリヤードで遊んで帰ります。本当の兄弟のよう。

感覚の違いって具体的に?

 先に言っておきますが、「日本人」「ミャンマー人」と一括りにすることはできませんがあくまで長期間現地で過ごして自分の中で「ミャンマーの人たちはこういう傾向があるかも」と思ったことを紹介したいと思います。もちろん何が良い悪いという話ではないことを承知の上で読んでいただきたいです。

ジョークなの?本音なの?

 親しい仲だと、軽いジョークを言い合ったりいじりあったりすることは良くあります。私自身もジョークを言ったりからかうのは好きです。ただ、冗談を言う時はなんとなく相手が冗談だと分かるように言うことが多いのではないのでしょうか。
 私もよく友人に冗談を言ったり揶揄うことはありますが誤解を招かない程度に抑えているつもりです。ただ、現地では結構ガチのトーンでシリアスな雰囲気で冗談を言われることがあります。「あなたに怒っている」とか、どこかに行った写真をSNSにあげると「なんで自分を誘わないの」とか、そう言うのが多いです。
 最近は少し慣れて来ましたが、冗談を自分が真に受けてしまい「怒らせてしまった」と焦ったり無駄に腹を立ててしまったりと言うことが時々ありました。好きだからこそ冗談を言うんだ、と教えてくれたので今では理解しているつもりですが、それでも冗談なのか本音なのかわからずどう言うふうに受け答えしたらいいか戸惑う時がたまにあります。
 自分も真似してシリアスなジョークを飛ばしてみたいですが、「相手が間に受けて誤解されたらどうしよう」と。。どうしても心の中でブレーキがかかってしまいますね(笑)

遠慮しすぎは良くない?

 こっちに住んでいると、一緒に市場に行った時とか「何食べる?何飲む?」とかよく聞かれます。自分の周りの人たちは決して金銭的に余裕があるというわけではなく、頻繁に奢ってもらうのは申し訳なくて最初は遠慮気味でした。ただ、遠慮しすぎるよりも奢ってくれると言っているなら素直に奢ってもらったほうが彼らも喜んでくれるし、そうやって良い関係を築いていけることを知りました。
 少し文化人類学的な視点からの話ですが、日本では基本自分で食べる(飲む)ものは自分で買うことがほとんどでしょう。そして誰かに奢ると言うのは「先輩後輩の付き合い」とか、「何かおめでたいことがあったから」とか、「誰かを励ますために」とか様々な意味を持っています。
 しかし、現地では「誰かに奢ること」(小さい額ですが)に何か特別な意味はあまりなく、強いて言うなら「食べさせたいから奢る」くらいでしょうか。何も言わなくても奢ってくれるし、逆に自分がお金を出した時にすごく感謝されることもなく、「その時お金を持っている人がお金を出す」と言う感じに近いです。ミャンマーに行かれた経験がある方なら分かるかもしれません。
 なので、奢ってくれると言われた時はその人が自分に何かご馳走したいからそう言ってくれていることが多いので、もちろん感謝することは大事ですが過度に遠慮する必要はないのかなと個人的に思います。自分の場合は素直に奢ってもらって、申し訳ないなと思ったら次の機会に自分がお金を出して帳尻を合わせています。
 自分の周りではお金のトラブルが起きたことはありませんが、奢ることに関する感覚の違いは日本と比べると少なくともあると思います。なので、もしトラブルになるのが心配なら予め周りの人に話して理解してもらう必要がありますね。

急に決まることばかり

 これは日本にいた頃はあまりなかったことですが、こちらに来ると急に「今日〇〇に行くよ」とか「この後暇?」とか突然言われることが多いです。あらかじめ予定空けといてと言われることももちろんありますが、日程調整無しでいきなり予定が入ることの方が多いです。ミャンマーでの滞在経験のある方からはよく聞く話で、「あるある」なのかもしれません。
 いきなり聞かれてすぐYesかNoではっきり答えるのはリスクがあって怖いので、「多分いけると思う」と保険をかけて返事したり、少し悩んでしまうこともあります。ただ、はっきりしない返事を何度もすると「誘われたくないのかな」と思われたり、返事に悩んでいると「言葉が理解できてないのかな」と思われることもあります。「少し考えさせて!あとで連絡する!」と言う時間もありません。
 一般的には先に約束が入っていればそちらを優先するのが筋ですが、そうとわかっていてもどうしようもない時があったり、そのせいで自分に対して気を悪くされないか気を揉むことがあります。「判断は即決、そして臨機応変に」と言う自分が最も苦手なことを日々やらなくてはならないので、とても良い経験です。

みんなでお出かけして撮った謎の写真。
この日も当日に出かけることが決まりました(汗)

最後に:「困ること」の大切さ

 どんどん周りとの距離が近くなって一緒に過ごす時間も増え、お互いのことをわかってきて、今ではかけがえのない存在になっています。そのフェーズに入ると、たまに揉めたり人間関係でうまくいかないこともあり、そこで必ず言葉の壁に当たります。上記のように感覚の違いもあり、本来気にする必要のないことで不安になったり、イラついたり、、
 でも、こうした経験は長期滞在だからできること。みんなと共に過ごす時間が少なければ、喧嘩したりするほど仲良くなるのは難しいと思います。そして何より、うまくいかない悔しさもどかしさ不安そういうマイナスな経験こそが一番重要なのです。もちろん嬉しい瞬間、楽しい瞬間も必要だし大切です。しかし、人は悔しい思いや辛い経験があってこそ成長できると私は信じています。だから、考え方を変えればそもそもそれらの経験は「マイナス」ではないのです。
 もちろん困っている時は不安になったりイライラしたり余裕がなくなりますが、あとで振り返ると良い経験だったな、と思います。そうした経験をくれるみんなに、自分をよく理解してくれている周りの家族や友人たちに本当に感謝しています。"သံယောဇဥ်"な仲間達と共に、残りの少ない期間を悔いなく楽しく過ごせたらと思います。それでは次回のメーソート滞在日記をお楽しみに!

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このブログについて

 このブログは、任意団体Listening to Communities(LtoC)の紹介を通じて、現地ボランティアの機会を得た日本人の学生が書いています。LtoCは、タイ国境で暮らすミャンマーの土地を追われた人々や、弱い立場にある移民の人々を支援する団体です。日本の学生と現地をつなぐ教育・交流活動も行なっています。団体の詳細についてはこちらをご覧ください。

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