新卒で入社した会社の話17

私の退職日は7月末に決まった。

5月の終わりに退職を告げに行って、1ヶ月なかったことにされ、ようやく6月終わりに辞めることを許された。

4月からパートの村田が来ているのだが、この人はこれまでのパートの中では一番の当たりだった。

地元の百貨店が倒産し、そこからやってきた方で、しっかりしていて、テキパキしていて、そして気が強い笑

私の方が業務歴長いから良かったものの、後から入った身だったらしんどかったかもしれない。

でも自分が辞めることで、村田に一番皺寄せがくるのだろうなと思うと申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


ちょうどその頃、胃腸炎になり、高熱が続いた。
1日経っても治らず、次の日、仕事を休んだ。

そして次の日も治らず、かかりつけの病院に行った。

久々に行った病院だが、先生は、
「3日も休んだらいけんだろうが!」

と言ってきた。

心が弱りきっていたのかわからないが、それに対して何も言い返せなかった。

「あ?どうしたん?なんかあったんか?」

「仕事がしんどくて。」

この一言を言うのが精一杯だった。

「仕事がしんどくて言うても、社会人なんだから当たり前だろ」

子供の頃からお世話になっている先生。
どうしてそんなにイジメ倒してくるの?
今ぐらい優しい言葉かけてほしい。

「しんどかった」

「みんなしんどい」

自分の中から理性が消えていた。

気付いたら涙が止まらなくなっていた。
どうして自分の気持ちを察してくれないの。

親以外の前で、過呼吸のように泣いたのは初めてのことだろう。

でも、恥ずかしいと言う感情も何もなかった。
そうか、感情まで消えてしまっているのか、私。

「もういいです、なんでもない」

「なんでもないことはないだろ、こんなに痩せてから」

もう自分の口から文章を紡ぎ出すことはできない。
それくらい泣いて過呼吸になっていた。

「どうしてこがーになるまで、誰にも相談しなかった?」

やっとの思いで口を出た言葉は、

「誰も信用できなかった。誰かに言うと、それがまた違う人に伝わるから」


このやり取りから10年経った今思うのは、お調子者の弟と違って、割としっかり者に見えた私が、こんな状態になっていたことに異変を感じたのかもしれない。

きっと先生なりの荒療治だったのだと今では思っている。

先生とはあれから一度も会っていないが、お礼を言いたい一人だ。


薬をもらって家に戻ってからも、家に誰もいないことをいいことに泣き続けた。

昔から「粘り強い・我慢強い」を売りにしてきた、いや、それしかいいところがなかった自分が、いつからこんなに弱くなったのだろう。

涙ってこんなに出るんだ。

間違いなく人生で一番泣いた日だろう。

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