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ロースクール浪人が不安な貴方へ【経験者からのメッセージ】

大学受験で浪人をした人は身近にいても、ロースクールで浪人(ロー浪人)をした人は周囲に少ないのではないのでしょうか。しかし、いざ自分がロースクールを受験する立場になると、自分がロー浪人してしまうのではと不安に感じる人も多いのではないでしょうか。実際に、浪人中の人もいると思います。

そこで、今回は実際にロー浪人をした筆者の経験を基に、なぜ浪人してしまったのかの分析や、当時の心境、浪人時の勉強法について一例としてご紹介したいと思います。勇気を出して書いているので、温かい目でご覧ください!(ライター:鬼丸/The Law School Times ライター)


ロー浪人した筆者のプロフィール

大学学部:
都内にある法律で有名な私立大学の法学部に私立専願で現役入学

司法試験に向けた学習の開始時期:
学部1年次から、基本書を読んだり、答案を書いたりをしていました。ただ、毎日答案を書くことやインプットすることはできておらず、勉強を全くしない日もありました。この意味で、密度のある勉強はできていなかったと思います。

予備校の有無:
予備校には通わずに、主に基本書や大学内で先輩から貰えるレジュメを使って勉強していました。浪人期も特に変更はなく、いわゆる「宅浪」でした。

浪人の理由:
現役時に全落ちしてしまったからです(涙)
現役時は、中央、慶應、早稲田ロー、都内国立ローを受験しました。

浪人後の進学先:上記私立ローの一つに進学しました。


なぜ不合格になってしまったのか

主な原因は、ロースクール入試を甘くみていたことにあると思います。

私の学部時代の大学では、学生達が予備試験に向けて必死に勉強しており、ロースクールはあまり焦らなくても入れるという風潮が少なからずありました。

私は、この「必死」の程度を大きく見誤り、自分ではそれなりに勉強をしてきたと感じていたので、「ロー入試だし、なんとかなるだろう」といった感覚で入試を迎えてしまいました。

当時の私の実力は、真面目にロースクール入試に取り組んだ人と比べるとひどいものだったと思います。三段論法に従った答案の書き方や、条文の趣旨から考える姿勢は持っていたものの、覚えるべき判例の規範や定義が曖昧なまま、暗記から最後まで逃げ続けていました

それだけでなく、謎に「ロー入試では、Aランク論点を数個押さえていれば問題ない」という認識を持っていたため、書き負けないレベルまで仕上げた論点のストックが、他の人よりもかなり少ない状態でした。また、学習したことの一元化もしていませんでした

今となっては、よくこんな状態で入試に臨んだなと思います。
そりゃ落ちるわといわれても仕方ないです......。


ロー浪人が決まった当時の心境

落ちた当時は、親になんて説明をするか、周りの友達に冷ややかな目で見られるのではないか、就職活動も「おわった」のではないかなど、ネガティブなことで頭が一杯でした。

特に、私大入試が一段落した後の学校が本当に嫌でした。学校に向かう足取りも重く、友人や教授に全落ちした事実を伝えるときには、息が詰まりそうになっていました。おそらく顔も死んでいたと思います。

「もうどこにも雇ってもらえないのではないか」という不安に駆られていました。

ロー進学を諦めることは考えられなかった

高校生の頃から法曹に憧れを持っていたため、ロースクール進学を諦めることは選択肢にほぼありませんでした。もちろん、浪人が決まったときには、諦めることも一瞬頭に浮かびました。しかし、「諦めるくらい戦ったのか」・「ロー入試に落ちたからというマイナスな理由で一般企業への就活に臨んで満足するのか」という考えが明確にあったため、即座に浪人を決意するに至りました。

そもそも浪人するかどうかについて、私が個人的に思うのは、法曹に対する自分の熱意がどれだけあるかだと思います。もしかしたら、法曹よりも自分に向いているルートがあるかもしれません。私はどのルートに行けば、その後の自分の人生が最良になるかは、明確には分かりませんでした。ただ、これまで法曹に進み続けてきたこと、法曹になって叶えたいことがあったため、法曹への熱意は自分の中で明確に意識していました。

だからこそ、不安に駆られながらも、浪人をしようと決めることができたのだと思います。

ロー浪人をした筆者への、周囲の反応

いざ私の報告を聞いた友人や教授は、驚きつつも「何でも相談してほしい」、「一人で抱え込まないで」といった温かい言葉をくれました。その後も答案を見てくれたり、分からないことについて相談に乗ってくれたりと最後まで力になってくれました。

法律事務所への就職活動については、浪人時のロー入試後に行われたThe Law School Timesのイベントで、複数の弁護士先生の方々に尋ねたところ、「浪人したことだけで、チャンスを与えないなんてことはしない。その後のロースクールの成績などでも十分挽回できる」という回答をもらえました。

この体験から伝えたいのは、落ちた時に不安に思っていることでも、自分で考えているほど深刻ではないということです。同期に1年間遅れをとってしまったと、十字架を一生背負う気分になるのも無理はありません。しかし、いつまでも自分を必要以上に縛り付けることは精神的にも良くありません。
反省はしつつも、臆せず次の行動を取る意識を持つことで、十分だと私は思います。


浪人中の入試対策スケジュール

現役時の私は、都内の国立のロースクール入試が終わるまでは、目先の勉強に集中しようと思っていたので、ロー浪人の計画を建てたのはなんだかんだ現役時の入試が終わる12月に入ってからでした。

親から予備試験も受けるよう促されていたため、予備試験の短答式試験の勉強も重なって正直やばいと思っていました。そのため、予備試験の勉強にかける時間をある程度制限して計画を建てました。


ロー浪人期の理想の1~5月までの1日のスケジュールは、午前は短答、午後は論文で分けていました。そして、6、7月はすべて定義・規範の暗記に努めるように計画を建てました。

浪人期の1~5月までの理想の1日のスケジュール(勉強中の休憩は15分目安)

私が浪人を開始した当初の1カ月間は、上記のスケジュールで進めていました。

しかし、私は浪人してはじめて、学習したことを一元化する作業に取り組むようになったため、その時間を優先するようになりました。それによって、短答は断念し、論文用演習・暗記の時間も減るようになりました。そして、6、7月に一元化したものを総復習していました。

浪人期の勉強を振り返ると、現役時に一元化に着手していなかったことが一番の痛手だったと思います。勉強したものが増えるたびに必要になる作業だったので、どうしてもその作業に割く時間が多くなってしまいました。また、私大ロースクール入試が終わってすぐに浪人に向けて切り替えるべきだったとも思います。私の場合、一元化の作業に加えて、短答の勉強、論文演習を約6カ月で行うことになってしまったので、時間の余裕は全くありませんでした。


使用していたテキスト

浪人中の息抜き

最初は勉強に集中するために、LINE以外では人との交流を絶とう思っていました。それまでは、地元の友人とも交流があったのですが、事情を伝えて勉強に集中することにしました。

実際に浪人を始めてみると、一日の行動パターンが固定され、平日休日関係なしの状況になりました。当初は焦りもあったため、何も感じなかったのですが、段々と毎日の彩りがなくなり、虚無感が生じるようになりました。そのため、勉強はしつつも、どこかつまらなく感じ、集中力を欠いてしまうことが多々生じました。

その時に行っていた休憩は、お笑い系をテレビやYouTubeで週に1、2回ほど見ることでした。しかし、これも徐々に面白さを感じることがなくなっていきました。

そんな状態になっている中で、なんだかんだ久しぶりに地元の友達と会うことになりました。会話をしてみると、自然と今までにあった彩りが戻ってきたように感じられ、それまでの虚無感が不思議と薄くなるのを感じました。
そこで、私は仲の良い友人と顔を合わせて会話することの重要性に気づき、2週間に1度のペースで友人との時間を休憩として取り入れることにしました。

こうすることで、適度に息抜きをしつつ、勉強に取り組むことができたと思います。


おわりに

浪人を経験するのはロースクール入試が初めてだったため、既に大学受験で浪人を経験している人には甘く感じられたかもしれません。また、「ロー浪人するなんてやばい」なと思った方もいるかもしれません。お考えの通り、私もやばいと思います。浪人なんてするものじゃありません。

ただ、この記事で伝えたかったのは、同じ悩みを抱えている方に不安になりすぎてほしくないということです。司法試験を目指す人の中には、大変優秀な人が何人もいるため、その人たちと比較するとロー浪人は褒められることではありません。けれども、視野を広くしてみれば、ロースクールで留年をした人や司法試験に落ちてしまった人、あるいは司法修習の二回試験に落ちてしまった人など色々な方がいます。私は浪人後に、こういった経験がある方々とお会いすることがありましたが、全員立派な法曹としてご活躍されていました。

ですので、法曹になるために浪人を決めたのであれば、臆さず行動することを忘れないでください。応援しています!


The Law School Timesは司法試験受験生・合格者が運営するメディアです。「法律家を目指す、すべての人のためのメディア」を目指して、2023年10月にβ版サイトを公開しました。サイトでは、司法試験・予備試験やロースクール、法律家のキャリアに関する記事を掲載しています!noteでは、編集部員が思ったこと、経験したことを発信していく予定です。

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